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神子の救済記  作者: 雪夢優希
第一章 二つ星仲裁編
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第四十三話

 俺は遺体を見てまわり終わると、ウリルと話した場所辺りに戻ってウリルを待った。

 そして、待ちながら俺は物思いに耽っていた。

 ほとんどの遺体の近くではその人の死を悲しむ者がおり、今回の戦争が実に不毛であったかを認識させられた。

 

 「まあそうだよな。星の人同士の意思じゃなくて、外野からの差し金なんだもんな。そりゃあ不毛にもなるか。」

 (だなっ。まあ、今回のやつはどうしても回避なんてできなかったろうからなぁ。言っても仕方ねぇさっ。まっ、二つの星がどっちも滅亡しなかっただけ、良しとすべきだろっ。)

 「それもそうだよな。()()()()()にならなかっただけでも良かったと思うか。」

 

 俺の呟きに反応を返してきたギール・アルガーの言葉に納得していると、俺は()()()()()という俺が言ったセリフになぜか違和感を覚えた。

 

 (最悪の結果?前にもどこかで言ってたような……どこだ?)

 

 どこかで何かあったのは確実だが、その部分には膜のようなものが張られているようでどれだけ考えても思い出せる気配はなく、モヤモヤとした感覚に捕らわれた。

 

 「確かに最悪の結果ではないわね。でも、もっと良い結果にも出来たはずと考えると、どうしてもやるせない気持ちにはなってしまうけれどね。」

 

 そう声が聞こえて振り返ると、ウリルとアリシアがいた。

 どうやら、アリシアもこちらに連れてきたようだ。

 

 「おう、おかえり。アリシアもこっちに連れてきたんだな。」

 「ええ、アリシアもその蘇生を見てみたいと言ったからね。それに他にも要件はあるみたいだけどね。」

 

 そう言って、ウリルは少し後ろにいるアリシアへ振りかえる。

 俺もアリシアに目を向けると、どうにも気落ちしているようだった。

 

 「アリシア?何かあったのか?元気ないみたいだけど。」

 「…ええ、そうですね。…でもこちらの件よりも先にあの方たちの蘇生をしてあげてくださいませ。…早く生き返らせてあげた方があの方たちも喜びますから!」

 「……ああ、わかった。じゃあ先にそうするよ。」

 

 アリシアは無理矢理笑顔を作ってこちらを心配させまいとしているが、それがかえって痛ましく見えた。

 だが、アリシアの言うように早く生き返らせた方が良いのも事実であるため、先にこの要件を済ませることにした。

 

 ――――――――――

 

 「それで…結局この後どうすればいいんだ?」

 

 俺はギール・アルガーに言われて、遺体の全てが見渡せる小高い丘の上に来ていた。

 ウリルやアリシアも俺の後ろにいて、様子を見守っている。


 (まずは、オレを具現化してくれっ。形は何でもいいぞっ。)

 

 俺は蘇生と聞いて魔法のようだと思っていたことから、ギール・アルガーを杖として呼び出した。その杖は持ち手の棒の部分が白銀になっており、上端には拳大ほどの大きさの金色に輝くクリスタルのようなものが付いていた。また、クリスタルと棒の接合部には天使の羽のような形の装飾もできていた。

 

 「……ここまでイメージしてなかったんだけど…なんかすごいのになってるような。」

 (細かいことは気にすんじゃねぇよっ。それじゃあ、その杖からオレの中へ意識を集中させてそこにある魂…生命力の塊みてぇなもんを探してくれっ。)

 「ああ、わかった。」

 

 俺は集中するために目を閉じた。

 

 「………これか?なんか暖かいような感じのエネルギーの集合体みたいなのが見つかったんだけど。」

 

 ギール・アルガーの中の魂を見つけろと言われて難しそうな印象だったが、実際はそうでもなくほとんど何もない空間の中で暖かな光を放つエネルギーの集合が見つかった。

 

 (そいつらだ。それをオレの中からこの杖を通じて外に放つんだっ。そうすれば、オレの中にあるうちにエネルギーがほぼ回復してるから、勝手に元の身体に戻ろうとするさっ。まっ、たまに戻ろうとしない奴もいるが、そいつは外からオレのエネルギーをぶつけることで元の身体へ戻るように操作できるから心配ないぜっ。)

 

 「なんか、難しそうだな。…とにかくやってみるか。」

 

 俺は、ギール・アルガーの中にあるそれらを杖から外に押し出すように意識した。

 初めはイメージしづらいと思っていたのだが、自身の手で外まで押し出すようにイメージしてみると案外すんなりとやることができた。

 まるで『ここにはないが実在する』第3、第4の手を使っているようで気持ち悪かったが、慣れると特になんともなく最後まで出し切ることができた。

 

 「わぁ……」

 「なに…あれ……」

 

 後ろからアリシアとウリルの声が聞こえてきたため、先程まで閉じていた目を開いた。

 

 「……え?」

 

 すると、その光景は圧巻というべきものであった。

 杖から出てきたと思しき光の集まりが、上空を漂っていた。

 光の色は多少の違いはあったが、白や黄色、橙色といった色で占められており、とても綺麗だった。

 その光はしばらく上空に漂うと、それぞれが自身の帰る場所を見つけたかのように地上に下降すると遺体の中に入っていった。

 

 「ん~?」

 「ここは?」

 「あれ?…確か俺って死んだはずじゃ。」

 

 光がまだ降りきっていない中で、ちらほらとそんな声が聞こえ始めていた。

 

 「おお!!!兄弟!!!兄弟が生き返ったぞ!!奇跡じゃあぁぁあ!!!」

 「兄貴、うっさいなぁって…え?おいら生き返ったって…さっきまで死んでたの!?」

 

 「うっ、うぅ~。お父さん……え?今、動いて!?」

 「なんだぁ?ここは?……って、お前なんでこんなとこに?いや、戦争はどうなったんだ!?」

 「戦争はもう終わったんだよぉ。……ぐすっ。お父さんがいぎがえっでくれたよぉ!うっ、うわあああぁん!!」

 「なんだなんだ?おぉ、よしよし。泣くな泣くな!心配かけて悪かったな。」

 

 そんな声が聞こえてくる中、ようやく最後の光が降りていった。

 その行方を見てみると、先程会話をしていた男性の恋人である女兵士の元だった。

 俺はその女性が生き返る姿を見て、ホッと安堵した。

 流石にあんな会話をしたのに生き返らないとかだと、申し訳なくなるからな。

 そんなことを思いながら、生き返って喜び合っている人たちを眺めるのだった。

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