十話 カイルとカイジ
「オルデウスさん…ありがとうございます」
「まさか私が王族から礼を言われる日が来るとはな。カイジくん、礼はいらんよ。王家を守るのも国民の務めだ」
「父も母もかつての王族もそう言うと思います。しかし俺は違う。俺も国民を守りたい。国は王がいるから成り立っているのではありません。国民がいて、その国民の信頼を得たものが王になっているのです。時代を経て王族という人間の中の種族となり王族は素晴らしい血統であると言われ、王族に生まれたから国民から“偉い人”と言われていますがそれは違う。ただの平民が努力を重ね皆と語り素晴らしい国を目指したからこの国がある…俺は…」
「はぁ、カイジくんは本当に4歳に見えないよ。そこまで考える者は大人にすらいない。さらにそれを口にして表現する者も長い時間を生きるエルフにもいないだろう」
「(そうか、この世界はそうなのか。こういう考え方がこの国ではこの世界普通なのか…俺はすでに成人直前…いやここでは成人済みか)…いえ…別に…」
部屋の中は沈黙が続く。結界を張ってるためか外の音も聞こえない。俺の顔色を伺い何を思ったのかオルデウスさんが突拍子もないことをいう。
「ふむ、まだ私が口外するか不安か?」
「っ…!?ち、違いますよ!?」
「そうかそうか…そうだよな。うむ、契約魔法を」
「ちょ、オルデウスさん!!!」
オルデウスさんは俺の言っていることに耳も向けず魔力を込め始める。
「オルデウスさん!やめてよ!知ってるでしょ!!?契約魔法をして契約に逆らったら死んじゃうかもしれないんだよ!?」
それでもオルデウスさんはやめない。魔法円はオルデウスさんの心臓の位置に展開される。
「契約魔法展開〈コントラクト〉私、オルデウスはカイル・バリオード・エト・ジャックがカイジとして冒険者をしていること、彼が秘密にしたいことを口外しないことを約束する。口外した場合代償としてこの身で償うことを誓う」
「オルデウスさん…」