第6話 一夜越え
「風呂はどうだ?
今日は僕のシャンプーで我慢してくれよな。
明日は、土曜だから、いろいろ生活用品買いに行こうな」
「足も伸ばせて、いつもより快適ですっ」
「よーく、温まれよ。
タオルここに置いておくからなー」
ダメだ。
ドアの向こうには、入浴中の冴香がいるんだぞ。
さっきはよかったが、冷静に考えると、高校生の男が女の子と同棲なんて、超危険ではないか。
入浴、就寝……、落とし穴は多いぞ。
理性を失うな、自分よ!!
寝室は1部屋。
ベッドは1つ。
冴香にベッドは譲り、僕は、ベッドの横の絨毯の上で雑魚寝だ。
上から適当にブランケットでもかけておけば、もう冬でもあるまいし、風邪をひくことはないだろう。
なかなか寝付けなかったのは、久しぶりの雑魚寝のせいではないことは確かだ。
冴香は早々に寝てしまい、寝息が静かな空間に広がっている。
いちいち、寝返りをうったり、寝言を言ったり、動く度にドキドキする。
いつか慣れるものなのだろうか。
ってか、いつまで一緒に生活するつもりなんだ、僕……。
***
遠くには緑の山々。
このゴチャゴチャした、人の世には背を向ける。
自然の香りはなくなってしまった。
僕はやっと歩き出した。
***
朝……。
『12:21』
昼だ。
昨日、中々寝付けなかったせいだ。
リビングへ行くとダンボールの山が。
なんだこれ??
「おーい、こんなたいそうな荷物、どうやって。
ってかこんなに収納ないぞ!」
「家から持ってきたんだよぉ」
「お前、いつまで居候するつもりなんだよ」
「いいじゃん、いいじゃん」
女子は服が多いから大変だよな。
待て、コイツお菓子まで大量に持って来やがったな。
このダンボールにはお菓子がみっしりと詰まっている。
「おーい、なんでお菓子なんか持ってきたんだ?
場所がないって言ったろ」
「それはキャットフードだよぉ。
お金がないって言ったろ」
真似しやがった。
「それは、すまんかったな。
当分、チョコチョコたちのご飯は問題ないな」
「っぷ!!
チョコチョコじゃないもん」
「ははは、お前ってやつは」
ここは、駅の北側の百貨店だ。
徒歩10分といったところか。
「見てみて!!
変なサングラスがいっぱい売ってるよ!
なんだろう?」
1階の入口から入ってすぐの雑貨店の前には、大量の遮光板が陳列されている。
というか山積みになっている。
なんでだろう。
「あれは、遮光板だよ。
んでもなんであんなに大量に売られているんだろうな」
「きっと、あれをつけると女の子の体が透けて見えるんだよ。
なんだってー? ミツミツの変態さーん」
何言ってんだコイツは。
「一人で謎の劇やってんじゃねーよ!
しかも、ミツミツってなんだ?
僕のことか??」
「っぷ!
ミツヤんが考えてそうなことを言ったんだよぉ」
「そのっぷってのはなんだよ。
んで、毎日呼び方変えるのやめてくれないか??」
コイツは、日によって僕の呼び方を変える。
ある日は、急に下の名前で呼んできたり、また別の日は、都鳥さんとか急に改まったり、ほんとに謎なヤツだ。
「おーい、都鳥くーん」
誰かが、呼んでいる。
声のする方を見ると、三串さんと1人の男がいた。
彼氏さんかな??
「あれは?」
冴香はもちろん、三串さんのことを知らない。
「女の子の方は、同じクラスの三串さんっていうんだ。
でも、男のほうはわかんないや」
「お買い物??
その女の子は……、もしかして彼女さん??」
2人が近づいてきた。
「んなわけ。
ほら!自己紹介しろ」
「に、二反田冴香ですっ!
ミツヤんのエフリエンディーです」
「礼儀正しい子ね。
でも、エフリエンディーってなにかな?」
「コイツは、よく変なこと言うから無視していいぞ」
ってか、いちいち説明するのめんどくせぇ。
冴香語は、僕にもまだ未解明だ。
「何歳かな??
都鳥くんの妹さん??
あ、でも名前が違うか」
僕も把握していなかった。
だが、おそらく言動や身長から推測するに、中学1年か2年くらいだろう。
もしかしたら、小6ってのもあり得るかもしれない。
「16歳……」
そう、冴香が言ったのだが、まず自分の耳を疑った。
しかし、それが聞き違えではないということは、2人の反応ですぐにわかってしまった。
「ってことは……高2!!??」




