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禁忌×戦闘ディストーション  作者: Riviy
第六章 Level『禁忌』
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Mission70.不穏な『禁忌』と不穏な事実




『禁忌』である梅丸と烏丸は他の幹部達と共に前方の人物に向かって跪き、こうべを垂れた。

此処は、暗い闇の中。大昔、『禁忌』が力を奪われ、封じられた忌まわしきお社。


前方の人物は幹部達を振り返り、口を開いた。


〈〈『大戦』前戦については、ご苦労だったな、烏、梅〉〉

〈〈有り難き御言葉〉〉

〈〈…………でもなぁ〉〉


人物はこうべを垂れている烏丸に近づくと、彼の顎に人差し指を当てそのまま軽く顔を上げさせた。烏丸は抵抗する事なく従う。隣の梅丸が心配そうに兄を横目で見る。


〈〈でもなぁ烏、誰が勝手にあんなに分身を使って良いと言った。『大戦』まで温存しておけと、言ったはずだぞ〉〉


烏丸を、虚空の瞳が闇の中で射ぬく。烏丸は視線を逸らす事なく、淡々と言った。


〈〈……我が妹の魔笛の能力ちからでなにぶん力は回復しておりましたので、腕慣らしにと〉〉


人物は今度は梅丸に目を向けた。梅丸はこうべを垂れたまま、兄が言った事は事実だと言葉を並べる。


〈〈御言葉を挟むようですが、兄の言った事は事実です。私の能力ちからで『忌鬼』の全ての能力値が上昇、『禁忌』の奪われた力の大半が『神狩り』の効果あって復活しております。ですので〈〈嗚呼、もう良い良い。分かった〉〉…は〉〉


梅丸の説明を遮って人物はそう言うと烏丸の顎から指を離す。どっ、と烏丸の体から緊張が抜け、汗が噴き出す。人物は烏丸と梅丸の兄妹を一瞥した後、幹部達全員を観察するように見た。そして告げた。


〈〈知っての通り、緋暮は我らを裏切った。そして忌まわしき人間側についた。貴様等は裏切らないと信じているが念には念をな。さて、『大戦』では技術スキルを上げた『忌鬼』を前線に置き、人間側の足止めをさせる。貴様等幹部はそれがしと共に後ろで零れ出た人間と神を狩ろう。異論は………ないな?〉〉


人物、ボスの命令に幹部達は何も言わない。異論なしと捉えたボスはクスリと笑い、手に持っていた禍々しい妖気を放つ武器を軋む、忌まわしきお社の床に突き刺した。


〈〈それでこそ、『禁忌』〉〉


妖気は四方八方に飛び散り、妖気が当たったところからは不気味な、足なんだが腕なんだが分からないものが現れ、こちらも四方八方に伸びて行く。月明かりの中、大昔、人間が封じ込めたお社は異様な姿に変わった。その姿はまるで翼を広げた美しき龍のようだったと云う。


**


ホールに集められた全支部。その空間には以前よりも凄まじい恐怖と緊張感が支配していた。ホールに集った彼らの面持ちは暗い。お社の変化を見た者も見ていない者も、じっと、前方を見ていた。前方には本部長や幹部達、そして各支部長と今回はその補佐数名が長テーブルについていた。彼らの脇には本部直轄部隊が待機している。今まで存在を隠されていた本部直轄部隊が会議の間に現れると云うことに誰もが不安を隠せない。


国彦は一番上の席で朝陽に直してもらった2振りの大脇差をぎゅっと握りしめ、第十部隊の仲間達と行方を見守っていた。

と、前方に座っていた一人がスッと立ち上がった。


「あ、妃翠ちゃんだ」

「?誰それ」


螢が呟いた名に国彦が即座に反応すると彼女は小さく今立った一人、女性を示しながら教えてくれた。


「ボク達に何かあった時に色々指示してくれる担当さんだよ。ボクの友達なの、改竄事件の時に一度会ったあの人」

「んで、そいつの後輩は管狐の知り合いだもんなー」


国彦が螢の説明を聞きながら「あの時かー」と思い出していると横から西珠がちゃちゃをいれるように付け足した。それに千聖と一緒に「「へぇー」」と声を上げれば、管狐が西珠の酒瓶を奪い取る。要らない事をいうな、ということらしい。酒瓶を取られた西珠は頭をかいて苦笑い。いつもの光景に国彦はなんだか嬉しくて小さく笑った。灯茉も安心したのか袖口で口元を隠して微笑した。

立ち上がった担当もとい妃翠がファイルを持つと全員に視線を向けた。青緑色の瞳が全員を見定めるように射ぬき、空間はシーン…と静まりかえった。


「此処に集まってもらった事については全員、知っている事でしょう。本日の『禁忌』、『忌鬼』襲撃の約数時間後、『禁忌』を封じ込めていたお社が異様な姿に変貌しました。後方支援支部が撮影したものがこちらになります」


パチンッと妃翠が指を鳴らすとホールが微かに暗くなり、本部長達の後ろの天井からスクリーンが降りてきた。本部長達がテーブルや椅子などを持ちながらスクリーン前から撤退する。ガラララと古風な音がし、スクリーンにある写真が映し出される。


ザワリッ!その写真に実態を見た者もそうでない者も驚愕した。そこに映し出されたのは夜の闇に羽ばたくように広がった幾数もの腕のようなものを持つ、尾を巻いた龍によく似た以前はお社だったものだった。


「後方支援支部の偵察部隊が調査に向かったところ、戦闘支部全部隊…全部隊員と同じかそれ以上の『忌鬼』が変貌したお社前に集まっていたのを確認。中には『アラーヴァ』がいると見て間違いなく、武器の強化、技の強化と、最終戦に備えているようです。また『禁忌ひぐれ』の情報により、『禁忌』は奪われた力をとある能力ちからと『神狩り』で回復しつつある模様です。以上です」


暗い空間で妃翠はペコリと礼をして下がった。スクリーンはまだ下がっていて、報告がまだあることを物語っていた。

闘いに備えているのはこちらも同じだ。相手がどんなに強くなっていようと負ける気はない。

と、次に暗闇の中で立ち上がり、スクリーン近くに歩いてきた者がいた。


「あ」

〈え〉


暗闇の中、その人物を見た西珠と灯茉が声を上げた。国彦が暗闇の中、目を凝らせば、管狐と狐幸がこめかみを抑え、白鉄が小さく笑うのを堪えている。なんでそうなっているのか分からない他の第十部隊メンバーは首を傾げていた。


「灯茉、どうしたの?」


国彦が隣の灯茉に小声で問うと彼は前方を指差した。国彦が顔を向けるとスクリーンに映し出される光の中に政と近の双子も立っていた。そしてもう一人、先ほど立ったと思わしき人物が双子の反対側に立っていた。その人物を見た途端、ホールの各場所(正確には隊長、副隊長辺り)から声が漏れる。だいたいが「あいつに任せて大丈夫か」と云う心配事だが。それをどうやら聞いたらしいその人物は不機嫌そうに頬を膨らませた。「子供か」と云うツッコミが幹部辺りから聞こえた。それに我に返ったのかその人物は声を張り上げた。


「さっき後方支援支部から報告があったように、敵は最大勢力を出して来るよー!多分『禁忌』はあの中。本部で作成した作戦を言う前にこれを見て!」


その人物が左腕をあげ、合図すると今度はスクリーンに別の写真が映し出された。黄ばんだ、古い紙のようだ。国彦はその紙に書かれた文字を読み、目を見開いた。他の者達も同様に驚きを隠せない。


「これは政府の地下書庫から見つかった、古い文献。大昔、『禁忌』を犯した事について書かれてある。緋暮くんにも話を聞いたところ、事実と言う事が判明したから、『大戦』に行く前にどうして世界が『禁忌』を犯したかを知ってから向かって欲しいんだ」


その説明にざわざわしていた空間が静まる。全員、真実を知りたいのだ。

神様でさえも世界が『禁忌』を犯した経緯などは知らない。聞いたところによるとある神以外は全員、『禁忌』が犯され、封じられた後に生まれ落ちたらしい。神様は生まれた直後の記憶が全員共通で曖昧なので詳しい事は分かっていない。

真剣な表情をする全員を見回し、人物は満足そうに笑った。そして手に持つ紙の内容を読み上げた。


「"世界は、『禁忌』を犯した。その『禁忌』は全部で6つ。何故、『禁忌』を犯したか。それは世界が、我々が血で血を洗う戦争をしていたからだ。戦争により生まれた生死を表す『禁忌』、『黒』と『白』。我々の感情が引き起こした欲を表す『禁忌』、『大罪』。戦争により失った『禁忌』、『希望』と『絶望』。そして、世界が犯した『禁忌』、『罰』。

我々はこの6つの力を封じ込めなくてはならない。意志を持ち、動き出した彼らが世界に滅亡をもたらす前に。滅亡、つまりは『やり直し』。我々にもう一度、やり直すチャンスではない。『禁忌』は、世界が犯した『禁忌』を理由に世界を滅亡させ、自分達の世界へと『やり直す』つもりなのだ。我々のチャンスは一度だけ。後世に『やり直し』がもたらされぬよう彼らの力を奪い、封じ込めるだけ。我々が、世界が犯した『禁忌』をどうか許しておくれ。"……大昔の人々が出来なかった事が、今、『『禁忌』対抗専門組織』に託されたと言ってもいい。さぁ、みんな、どうする?やりたくないのなら、今ここで席を立って、出ていっちゃってもいいよ?」


人物がそう言う。誰も動かない。つまりはそう言う事。

世界が、我々、人間が犯した事ならば、それを償うのも我々。尻拭いだって思う人もいるかもしれない。自業自得だと思う人もいるかもしれない。だけど、自分達の目的は『忌鬼』を、『禁忌』を全滅させる事。その目的が達成できるのならいい。それら全て、我らが成し遂げてみせましょう!


クスリ、本部長が口元を嬉しそうに歪めた。人物は満足そうに笑った。


「じゃあ、それでいいね?運命を受け入れた…いや、決めた。後悔は聞かないからね。さて、作戦についてだけど、後方支援支部遊撃部隊と偵察部隊に後方支援を頼むよー戦闘支部全部隊と本部直轄部隊及び本部からも戦闘員を出すからね。あのお社の中には第五部隊と第八部隊を投入するから他の部隊は彼らの援護をしつつ、『忌鬼』や『アラーヴァ』に対抗してね」

「ちょっと待ってください!」


人物の作戦説明が終わるや否やそう誰かが叫んだ。その方向を見るとそこには真剣な眼差しでその人物を見る少女(国彦達数名は知らない)、ソラがいた。



久しぶりのプロフィール投下いたしますっ!

終わりって云うか結末が近づいて来ました……


・『禁忌』

梅丸うめまる

『禁忌』の一人で緋暮が執拗に憎んでいる少女。魔笛と呼ばれる横笛で様々な『忌鬼』を召喚し戦う。『禁忌』の力を取り戻す手段を持つ。『白』

烏丸の妹。

推定14歳、149cm

第一人称:私


烏丸からすまる

『禁忌』の一人で長さの違う武器、太刀と脇差を使う。『黒』

梅丸の兄。

推定19歳、185cm

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