Mission5.模擬試合、開幕
投稿ペースはゆっくりで行きますよ〜
時間は過ぎて訓練12日目。
模擬試合の日。闘技場に武器を持った候補生が集まる。闘技場のある壁の一面に今日の模擬試合の対戦相手が書かれた表が貼ってある。その前には大勢の候補生が集まっている。国彦達はそことは反対側の壁にいた。
「今日の初戦って何処ー?」
「分かんない。灯茉、此処から見える?」
光希の問いに国彦が自分の頭上を浮いている灯茉に聞く。灯茉は見えると頷くと国彦達のチームである4番を探した。昨日のうちに小乃刃教官がチーム数を確認したところ7あるらしい。(戦闘支部第十五期候補生は全員で28人いる)
〈初戦は6番じゃ。第4試合に対戦じゃ〉
「ありがとう、灯茉。だってよー」
国彦が隣の千聖を見上げる。千聖は灯茉から聞いた6番を探しながら壱華に言った。
「壱華、しょっぱな誰であろうと俺と頼む」
〈分かりました〉
コクンと壱華が頷き、シルクが言う。と、それを聞いていた光希が言った。
「じゃあその次はちー兄とあたし?」
「頑張ってねみっちゃん」
「くー兄もだよー?」
「そうだね」
ナデナデと光希の頭を優しく撫でると光希は「えへへ」と嬉しそうに笑った。
「おっ」
千聖が突然、声を上げた。国彦が「どうしたの?」と首を傾げると千聖がにッと笑い、ある一点を指差した。
「見つけたぜ、対戦相手」
「えぇー何処何処ー?」
「あそこあそこ」
「見つけた。んー勝てるかな?」
〈微妙じゃなぁ〉
〈頑張りましょう皆様〉
**
ガツッと千聖は立てかけてあった大斧を軽く蹴った。
「亜矢都、起きろ」
〈ん〜ナニよ〜…〉
「試合だよ試合」
〈ふあーい……まだ、眠いわぁ〜…ふぁあ…〉
まだ眠そうな声をあげる亜矢都を無視して千聖は大斧を持つと肩に担ぎ、集まっているチームメイトの元へと向かった。
「千聖!壱華さんが君にお願いしたい事があるんだって」
「?俺に?」
来て早々、国彦にそう言われ千聖は自分を指差して首を傾げた。そして壱華を見ると彼は少し戸惑うような表情で千聖を見ていた。シルクが大丈夫とでも言うように尻尾で壱華の頭を撫でる。
〈我が主は千聖様に自分がうろちょろと動き回り、相手を翻弄させるのでその間に決着を付けて欲しいそうです。千聖様の身のこなしは昨日、拝見致しましたが相手の裏を取るには最適だと思います〉
「おーさっすが壱華。分かった、そうするな」
シルクの説明に千聖はほーっと納得した。壱華には自分の案で良いのかと云う疑問があるらしくオロオロとする。それに千聖が悪戯っ子のように笑い、鼓舞した。
「頼りにしてるぜ、壱華」
「…………………………」
その言葉に壱華は驚愕したようで一瞬止まったが、次の瞬間には真剣な表情で任せてと力強く頷いた。
「ちー兄、いち兄!頑張って勝ってね!」
「2人共、無理せずに勝って」
「まーかせとけって」
〈お任せください〉
国彦と光希が2人に向かって手を出す。2人はパチンッとその手を合わせた。
シルクがトンッと壱華の肩から華麗な身のこなしで降りると壱華の手元で2本の純白の短剣に変わった。それをぎゅっと握り締め、壱華は千聖に頷いて見せた。それに千聖も頷く。
〈やるわよぉー!〉
亜矢都もさっきまで眠そうだったのが嘘のようにやる気だ。
相手の2人が出てくる。審判役の小乃刃教官が「第一回戦に出る者は整列!」と叫んでいる。
整列し、挨拶を済ませ、さあ、始めよう。
ナイフを持った相手が飛び出すのと同時に壱華も飛び出した。ガキンッと刃同士が交差し、音を奏でる。壱華は相手のナイフを弾くと回し蹴りを放って相手を後退させる。そこに上段から千聖の大斧の一撃が落ちてくる。それを相手がかわすと剣を持ったもう一人が千聖に切りかかった。クルッと回って回避し、壱華と入れ違いになる。壱華が剣を持った相手の懐に素早く滑り込むと右の短剣を振った。それを防がれた。そして隙有り!とナイフを持った相手が壱華の背後にナイフを振りかざした。
〈ちょっとぉ〜ちーちゃんの事、忘れてない?〉
「?!」
ブンッと何かが振られる音と共に壱華の背後にナイフを振りかざしていた相手が横に飛んで行った。ズササッッッと音を出してスピードを緩め、停止し前方を見ると足を下ろすところの千聖がいた。クッと悔しそうに顔を歪め、走りだそうとして小乃刃教官の視線に気づいた。足元を見ると…出たら失格の白線を越えていた。
「6番、一名失格!」
「クッソー!」
失格した相手がそう叫びながら足を投げ出して大の字になった。不貞寝らしい。チームメイトにどつかれている。
千聖はそれを尻目に壱華と今だ攻防を繰り広げている相手に向かって駆け出した。
**
〈勝ったの〉
国彦の頭上に浮かぶ灯茉が試合を見てそう呟いた。国彦にしてみれば相手が一人失格になっただけで勝負はまだ決まっていない。なのになんで灯茉は勝った、と?
「どうして?」
国彦の疑問を代弁するように光希が灯茉に問った。灯茉は光希に答えるのが面倒くさそうにしながらも答えた。
〈一人失格したじゃろ?それによって残った一人には精神的苦痛が加わったと考えて良いじゃろう。2人を同時に相手するのにどれだけ苦痛か分かるか?それにまだ一回戦じゃがどちらかと言うと相手は勝ちたいはず。降参、なんて云う事は絶対にしたくないはずじゃ〉
「なるほどー…おー?」
〈理解出来ん脳じゃのぉ〉
灯茉の説明に分かったような分からないような声を上げる光希に灯茉が馬鹿にして鼻で笑う。光希は「むー!」と怒ったようで頬を膨らませるが国彦がなだめた事によって怒りは収まった。
「ごめんねみっちゃん。灯茉はこれでもみっちゃんに分かりやすく教えたんだよ」
そう国彦が光希に言うと光希は納得したようで灯茉に向かって「ありがとう!」と声をかけた。礼を言われ、灯茉は満更でもなさそうだ。
「止めっ!!」
とて小乃刃教官の高い声が響き渡った。勝負は決したようだ。
「一回戦は4番、千聖と壱華の勝利!!」
〈ほれ、勝っただろう?〉
当たった、と自慢げに灯茉が笑った。




