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禁忌×戦闘ディストーション  作者: Riviy
第三章 蠢く気配
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Mission28.眠る友と医療支部



『『禁忌』対抗専門組織』の建物内には医療支部の本部と兼任している病院がある。主に戦闘支部の任務で傷ついた者達の治療しつつ、民間人の治療も行う。


その病院のある一室。国彦はベッドに眠る千聖を心配そうに見守っていた。眠る彼の頭には何重にも包帯が巻かれている。


あの後、駆けつけた医療支部によって動けないほどの大怪我を負っていた西珠、管狐、螢は建物内に入る移動中に治療を施された。が千聖は負った怪我はどちらかと云うと軽かったのだが、『神譜かみうた』の代償の方が大きかった。

『神譜』は人間と神が波長を合わせる。が神の波長と人間の波長は全くもって違う。神が誰かに波長を合わせるのは簡単なのだが人間は簡単ではない。それに波長は感情や状況によって変化するため波長を合わせるのが簡単ではない人間には代償が付きまとう。代償も人それぞれだが千聖の場合は“睡眠”だった。ただただ、眠り続ける。自らが払った代償を埋めるまでずっと。


「………………」

〈国彦や、千聖はどうじゃ?〉


病室に入って来た灯茉は買ってきた飲み物を国彦に渡しながら問った。国彦は力なく首を横に振った。そんな国彦の右手首などには白い包帯が巻きつけられている。西珠や管狐、螢は傷が治りつつあるが安静が必要でここ何日かは本部と医療支部から任務禁止令が出ている。他の部隊と後方支援支部からは「大変だったろうけどありがとう!早く治せよ!」と労わりの言葉をもらった。

千聖は任務後からずっと眠っている。もう3日になる。大斧の姿に戻った亜矢都の話ではもう少しで目覚めるはずらしいのだが。亜矢都は千聖が眠るベッドの隣の壁に立て掛けられており、夜眠れなかったのか仮眠中だ。


「……灯茉」

〈なんじゃ?〉


国彦が手元で飲み物を弄びながら隣に椅子を持って来て座る灯茉に問う。


「千聖、大丈夫だよね?」

〈大丈夫に決まっておろう。お主が友とした者じゃ。そんなやわじゃない事くらい、お主がよくわかっておろう?〉


優しい手付きで灯茉が国彦の頭を撫でると彼は「…そうだね」と少し歪な笑みを浮かべた。それに灯茉が彼を安心させるように笑う。と、コンコン、と病室の扉が控えめに叩かれ、扉を開けた隙間から螢と弥厳が顔をのぞかせた。


「国彦ー灯茉ー、入っていい?」

「うん。まだ千聖は起きてないけど…」

「そっか…」


国彦がまた心配そうな顔で言うと螢も心配そうな顔をして中に入って来た。その後ろに弥厳と彼と同じくらいの身長の白衣を着た少年が続く。国彦と灯茉が見知らぬ少年に首を傾げる。螢が持ってきた見舞い品を壁際の小さなテーブルに置く。


〈?亜矢都は?〉

〈寝ておる。昨夜眠れなかったようでな…ところで弥厳〉

〈ん?なに?〉


千聖が眠るベッドの足元ら辺に立ちながら弥厳が灯茉を見る。


〈西珠や狐はどうしたのじゃ?〉


先にこちらを聞いておこうと灯茉は気になっていたことを放置し、問った。それに螢が弥厳の元へと歩きながら言った。


「2人共、本部に呼ばれてちゃって…国彦は怪我、大丈夫?」

「うん、僕の怪我は治って来てるから大丈夫。それよりさぁ」

「うん?なーに?」


国彦が灯茉と同じ疑問を投げかけた。


「その子誰?」


手で示された少年は一瞬、驚いたようだったがクスリと笑った。それに弥厳が答えた。


〈そいつはオレの知り合いで医療支部所属のやつだよ。千聖の担当医なんだって〉

朝陽あさひってんだ。宜しく〉


少年がにっこり笑ってヒラリと手を振った。もう片方の手にはファイルが握られている。国彦は軽く頭を下げた。


少年、朝陽あさひは青朽葉色のショートで両方のこめかみが長い。瞳は明るい緑色。白衣の下には深緑色の七分丈のシャツを着ている。下は茶色のショートパンツに紺色ソックスと黒のローファー。

見た限り、白衣を着た少年と云う印象しか持たないし、医者だとは想像もつかない格好だ。白衣以外。


〈医者と云う感じはせぬのぉ〉

「あ、灯茉!」

〈ハハッ、大丈夫。自分自身でもそう思ってるしな〉


灯茉の言葉に国彦が怒ると朝陽は可笑しそうに笑った。それに同意するように弥厳も笑い、螢が口元を抑えて笑う。


〈てか、朝陽達兄弟って医者とか薬剤師って感じするの一番上だけじゃないか?〉

〈おー弥厳、合ってるなそれ〉

「兄弟で、医療支部所属なの?」


笑い合う弥厳と朝陽に国彦が疑問に思った事を素直に口にする。がいつもならここで千聖の野次ならぬ「ちゃんと知っとけよ」と言う台詞が来るはずなのに来ない事に国彦は少し淋しいなと思った。それが顔に出ていたのかもしれない。朝陽が彼を元気付けるように明るく言った。


〈そうだぜー俺たちは兄弟全員で医療支部を動かしてるんだ。一番上の姉貴と兄貴が契約を結んでいる人間ひとが隊長で支部長なんだ〉

「へ、へぇーなんか壮大。何人兄弟なの?」


朝陽が自慢げに言うと国彦がそう問った。朝陽はくうを仰いでしばらく数えた。


〈20人兄弟〉

〈「多っ」〉


国彦と灯茉が驚愕のあまり呟く。それに螢も弥厳も朝陽もクスクス笑った。


〈俺はその五番目〉

〈下が多いのぉ〉

〈灯茉もそう思うよなー」


灯茉の言葉に弥厳が同意する。と思い出したかのように朝陽が持っていたファイルを漁り出した。


「そうだった。確か、後方支援支部からの資料も一緒に持って来てくれたんだよね?」

〈おー、兄貴が後方支援支部研究部隊の奴と仲良くてな。俺があの任務請け負った部隊の担当医だって知ってついでで渡された〉

「ついでだったのね」


朝陽がファイルを漁りながら溜息混じりに愚痴を零すと螢が可笑しそうに笑った。国彦も先程の表情とはうって変わって可笑しそうに笑っている。〈あった〉と朝陽がファイルから紙を引っ張り出し、螢に渡す。弥厳が内容が気になるらしく覗き込む。国彦も気になるようでここから見えないかなーとゆらゆら揺れている。


「えぇーと、“回収した脇差には神が宿っている事が判明。微かしか残っていなかった事からあの辺りに住み着いた『忌鬼』に狩られたものと思われる。大部分が狩られ、『忌鬼』と同化していたが微かに残った部分は生きているため、早急に契約、もしくは縁を結べる者を探すとしている。ご協力、感謝する”…だって」

「残ってたんだ、脇差に」

「なんか思いがあったのかもね」

「そうだね」


螢が読み上げた事に国彦がそう言う。と、千聖が微かに呻いた、気がした。国彦は驚いたように千聖を見る。他の者には聞こえていなかったらしく国彦の行動に首を傾げるばかり。


「……千聖?」

「……………………………………んー……国彦?」


反応した。目を開けた。全員が驚き、歓声を上げる。


「起きた…起きた!!」

〈亜矢都叩き起こせぇえ!!〉

〈おやおや…〉


螢が嬉しそうに小さく飛び跳ね、弥厳が亜矢都を起こしにかかり、灯茉が心底驚いた声を上げる。朝陽は驚いていたが意識を取り戻した千聖に近づく。千聖が頭を抑え、ゆっくりと起き上がる。それを国彦が支える。


「んあ"……よぉ国彦」

「千聖…!良かった、良かった!」

「おいなんだよ。俺、何日寝てた?」

「3日。3日だよ?心配したんだから!」


国彦が涙目で安心したように叫ぶ。その顔に千聖は笑いながら彼の頭を撫でた。そしてもう片側で何かをやっている朝陽に気づき、訝しげに問った。


「悪い悪い……何やってんのこいつ」

〈嗚呼、俺、きみの担当医な。体調の確認するから〉


国彦が涙目を拭いながら千聖が眠ってしまった後の事を話し出す。それを聞きながら千聖は朝陽から体調の確認をされていく。灯茉は嬉しそうに笑い、仮眠から目覚めた亜矢都は大声をあげたために千聖と朝陽に怒られた。

国彦は嬉しかった。千聖が目を覚まし、こうして笑いあえる事が。朝陽によると健康状態は良いが第十部隊に任務禁止令が出ている間は休めと言い渡され、千聖は面倒くさそうに顔を歪めた。それに国彦は「よくなったら稽古しよう」と約束したのだ。


灯茉と共に帰路に尽きながら、国彦は明日は何を話そうかとご機嫌だった。それを横目で見て灯茉もご機嫌になる。


しかし、第十部隊かれらは知らなかった。いや、知る由もない。彼らの背後で“誰か”を憎悪の瞳で睨み付ける者がいることなど


医者と言ったら白衣、白衣と言ったら医者。そんな神様兄弟集団を作ろうと思ったらこうなった。白衣着てようやっとお医者さんに見える朝陽……白衣なかったらただの子供にしか見えないでしょうね………ごめん朝陽謝るからその顔やめて?!

この頃、白衣と白紙を言い間違えます…歳かな……

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