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禁忌×戦闘ディストーション  作者: Riviy
第一章 戦闘支部第十五期候補生
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Mission2.訓練初日

本日は連続投稿です!


「すいません!遅れましたっ!」


国彦は目的地の闘技場に入るなり頭を下げながら大声で叫んだ。闘技場と云っても大体育館に近い場所だが。

国彦の近くに灯茉が浮いている。


「大丈夫だ、神居。まだ時間じゃないが、良い心掛けだ」


最終試験の試験官を担当していた女性が国彦と灯茉を見て微笑ましそうに言った。国彦はそれに緊張がほぐれたようで頭を上げると灯茉と共に列を成している人々の後ろに並んだ。

戦闘支部第十五期候補生は国彦以外にも多くの人がいた。その候補生の半分には臣下であろう神の姿がない。神は全員が全員、人間と同じ姿をしているわけではない。武器であったり動物の姿であったり…臣下の神が見えない候補生はそうなのだろう。


〈楽しみなのか?〉


ウキウキと浮足立っている国彦に灯茉が彼の隣に降り立ちながら問う。


「うん!大勢で訓練なんて初めてだし!それに、それにね!灯茉と練習できるって事も嬉しい!」


キラキラとした眼差しで自分よりも背の高い灯茉を見上げて言う国彦。自分と練習できる事がそんなに嬉しいのか。

国彦の言葉に灯茉もつられて嬉しくなり、彼の頭を優しく撫でた。それにまた国彦が嬉しそうに笑う。


「はははっ!楽しそうだな」


と、国彦と灯茉が並ぶ隣の列に並んでいる大斧を持った青年が可笑しそうに笑いながら2人を見ていた。


「実は俺も訓練が楽しみなんだ。色んな実力者とも闘える絶好の機会だからな」

「そっか、それもあるね…」

〈関心してどうする〉


灯茉がそう国彦にツッコむ。感じ方は人それぞれだ。


「そういえば、まだ名乗ってなかったな。俺は斬原きりはら 千聖ちひろ。宜しくな」

「僕は神居 国彦です。こっちは僕の臣下の灯茉。宜しくお願いします、斬原さん!」

〈国彦、何を勝手に妾の名を言っておるのじゃ…まぁ良いが。宜しく頼む〉

「国彦と灯茉だな。俺のことは気軽に千聖でいいぜ?」

「分かった、千聖!」


ニカッと明るく笑った青年、斬原きりはら 千聖ちひろ。彼は黒のショートでハネっけがある髪質。瞳は黄土色。首の左側に龍の刺青があり、服は国彦と同じ軍服。だが上着のボタンを全て開けており、中のワイシャツが見える。


此処で初めて出来た友人に国彦が嬉しそうに微笑みながら千聖と会話する。と灯茉が千聖の持つ大斧が気になり、2人の会話に割り込んだ。


〈お主、その大斧は臣下か?〉

「え?!そうなの?」

「よく分かったなぁ灯茉。さすが神様」


驚く国彦と灯茉を褒める千聖。褒められた灯茉は嬉しくないとでも言いたげにスンとすましている。千聖は大斧を2人に見せるように出す。


「灯茉の言う通り、この大斧は俺の臣下。戦闘神で名前は亜矢都あやと……………………………………………………オネェだ」

〈「え?」〉


十分にためられた間の後、千聖が告げた言葉に2人は言葉を失った。


〈もぉ〜何ヨ〜ちーちゃんのおバカ!そんな単刀直入に言ったら2人共ビックリしちゃうでしょっ〉

「すまんな亜矢都。こいつらの反応がみたくてな」


大斧から聞こえて来たのは女性の高い声とはまた違う声。高い事には高いがどう聞いても男の声だ。


〈本当なのか…まぁ神の性格は契約や縁に影響されぬと云うし。宜しく頼むぞ亜矢都〉

〈さっきのちーちゃんとの話は聞いてたから知ってるわ。灯茉よね?宜しくね。国ちゃんも〉

「はい、宜しくお願いします!僕、神でオネェって初めて見たんだ。不思議ー」

〈ふふ、そうでしょう?嗚呼、でも、ワタシ、好きなのは女性よ。安心してね〉

「どういう安心だよ亜矢都」

〈えぇー?そのままの意味よ〜?〉


オネェだとカミングアウトされたとしても臣下である神は神。人それぞれだ。そのまま3人と大斧は楽しそうに喋っていた。灯茉と亜矢都は神であるからか気が合い、2人には理解し難い話で盛り上がった。


〈だからワタシはー〉

〈逆じゃろうて〉

「……なんの話してるんだろ…」

「さぁ。あ、国彦」


千聖が国彦に神妙な面持ちで言う。それに国彦も真剣な話なんだろうと気を引き締める。


「何?千聖」

「これ、噂なんだけどな」


千聖は声を潜めて言う。


「候補生の中にヤバイ奴がいるんだと」

「?ヤバイ奴って強さが?」

「いや…強さじゃないらしいが国彦、気を付けておけよ」

「うん」


国彦はどんなヤバイ奴なんだろうと疑問に思いながら千聖からの警告に頷いた。と、ちょうどその時、訓練の時間になったらしく試験官も担当した候補生の教官である女性が他のところより少し高い壇に登って声をあげた。


「注目!!!」


ビシッ!と音が聞こえるくらい、そこにいる全員が背筋を伸ばした。始まる、『忌鬼』を倒す訓練が。


「お前達は何百、何千人もの中から選ばれた戦闘支部第十五期候補生だ。みな、今の現状は知っている事だろう。『忌鬼』は私達が戦力を増やしている間も神を狩ろうと動き回り、人間と神に害を成している。お前達は選ばれし者達だ。訓練は厳しいがその分、世界に貢献出来る。候補生と云う事に誇りを持ち、訓練に励んで貰いたい。だが、問題を起こした候補生は即刻罰する。お前達も聞いた事が一度はあるだろう。罰せられた候補生の末路を。そうならないように気を付けるんだな。私はお前達をビシバシ鍛えるだけだからな!嗚呼、私はお前達の教官である小乃刃このは 朱鳥あすかだ。小乃刃教官と呼べ。ではこれより、訓練を開始する!」


教官のその一言に候補生からやる気に満ちた雄叫びが響き渡った。


**


〈本当、国彦は力も体力も無いのぉ〉

「………灯…茉には……はぁ…言われ、たく……ない…千聖、タイム」


ドタッと灯茉に悪態をついた後、国彦はしゃがみこんだ。額からは大量の汗が流れ出し、息が上がっている。今は2人1組で体力を付ける訓練をしていた。国彦が組んだのは千聖。自分は参加しなくても良いとにらんだ灯茉は国彦の近くで浮きながら訓練を観戦していた。

千聖はしゃがみこんだ国彦を心配して自分もしゃがみこみ、その背中を優しく撫でた。


「大丈夫か?」

「……う…ん……僕、体力、無い…から……」


自らを嘲笑うように言う国彦。

国彦がすぐ体力を失うのは当たり前だ。彼の武器は彼の身長を遥かに追い越す大太刀。自分の身長の倍ある武器を振り回すのだから力もいる。武器を持つ間、力は入れっぱなしなので体力はすぐに無くなってしまうのだ。

国彦の身長が168cmなので2倍すれば大太刀の長さは336cmほど。そこまで本当に大きいのかどうかは国彦と灯茉しか知らないだろうが大き過ぎる。

国彦は大太刀を杖代わりに立ち上がろうとするが足に力が入らない。


〈だらしないのぉ。ほれ、貸せ〉

「あ…」


灯茉が国彦の手から大太刀を引き抜くと軽々と肩に担いだ。それに疲れてしまっている国彦は呆然としている。


「一回休憩入れよう。このままじゃ、国彦が倒れる」

「ご…めん…」

「いいって。悪りぃが灯茉、亜矢都持ってくれ」

〈亜矢都は人間にならんのか?その方が楽じゃないのか?〉


灯茉が千聖から大斧(亜矢都)を片手で受け取りながら疑問を口にすると亜矢都が笑いながらその問いに答えた。


〈ワタシはちーちゃんの血がないと人間の姿になれないのよ〜〉

〈変な性質じゃなぁ〉


〈変よね〜〉と亜矢都の同意を聞きながら灯茉は大斧(亜矢都)を大太刀と反対の肩に担いだ。

その頃、千聖は国彦の腕を自らの首に巻きつけてゆっくりと立たせ、壁際に移動させた。他の候補生が何事だと視線を投げかけてくるが無視する。壁際に到着し、国彦を壁に寄りかからせると教官がやって来て心配そうに訪ねた。その後ろでは大太刀と大斧(亜矢都)を持った灯茉が浮いている。


「神居か?大丈夫なのか?」

「ええ、体力なくなっただけっす。休憩入れても問題ないっすよね?」

「嗚呼、休憩は各自と言ったからな。そろそろ、終了時刻か…」


教官、小乃刃このは 朱鳥あすかは紫の長髪を首根っこ辺りでお団子にしており、右目に一線、深い傷があり女性なのに少々怖い印象がある。瞳は同じ紫色。服は候補生を見分けがつくようにか紺色の軍服だ。だが上着を脱いで羽織っているので女性らしいラインが目立つ白いワイシャツが目を引く。靴はヒールが低い黒ブーツ。

小乃刃教官は灯茉の横を通り過ぎ、訓練中の候補生達に向かって叫んだ。


「本日の訓練は此処までとする!明日の訓練は午前9時より此処で行う。各自、明日に備えて休息するように。相手に挨拶をしたのち解散!」


よく響く高い声が疲れた国彦の耳には心地よかった。



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