Mission19.任務の時間は刻一刻と迫るのです
『忌鬼』が出現すると言われる場所。そこは廃墟と化した街。元々は取り壊すはずの街だったが『忌鬼』が出現し、作業員達を攻撃するため取り壊せずにいた。何度も『『禁忌』対抗専門組織』に討伐を依頼し、何度も『忌鬼』を討伐した。第十部隊はその最終確認として任務を受けたのだ。
もし、『忌鬼』がいたのならば『忌鬼』討伐をし、それを本部に報告する。いないのなら取り壊しが決行される。
廃墟と化した街は色々と危ないのでもし『忌鬼』がいて戦闘になった場合は壊しても良いと言われている。いいのだろうか…とそれを聞いた国彦は思っていた。
「まっ、『忌鬼』が居ないことを祈るばかりだ」
説明を終え、後頭部をかきながら西珠が暇そうに欠伸をかます。その隣で西珠の欠伸が感染したのか千聖も欠伸をかました。
ただいま戦闘支部第十部隊『神樂』は二手に分かれて廃墟の街を回っている。螢、弥厳、管狐の3人は廃墟の街の正面入り口から。西珠、国彦、千聖、灯茉はその逆ルートから。二重確認のためらしい。
「にしても…いる気配ねぇな」
〈油断しとると出て来るぞ?〉
「灯茉の言う通りだよ、千聖」
「へいへい」
「………………」
仲良く話す彼らを見て西珠が聞いた。
「お前ら、同期だったよな」
「?そうだが?」
「そん時から仲良いのか?」
西珠が聞くと灯茉が自分の事のように袖口で口元を隠して笑って言った。
〈国彦と千聖は候補生の時から気も合ってのぉ。まるで兄弟のように仲が良くてのぉ。なぁ亜矢都〉
〈ねぇー灯茉!主を取られたみたいでワタシ、たまに寂しいわ〜〉
「………亜矢都、キショい」
〈酷いわヨちーちゃん!!あとでケーキ奢ってよね!!強制よ!〉
「なんでだよ?!」
〈ちーちゃんが悪いのヨ!!〉
ギャーギャーと喧嘩を始めた千聖と亜矢都。国彦が足を止めてその喧嘩の仲裁に入る。
「はいはい、やめて2人とも。亜矢都には今度、僕がケーキ作ってあげるからそれで千聖の事許してあげて?」
〈ほんっと、国ちゃんは女子力高いわーいいわ、しょうがないから許してあげる!〉
「俺が悪りぃのかさっきの話は!」
〈お主じゃろうなぁ〉
「くっそ!」
千聖が納得がいかない!と頭をかくがこの3人を敵に回したらもう負けが決定しているので諦めた。その様子に国彦と灯茉がくすくすと笑う。蚊帳の外だった西珠は改めてこいつらの仲の良さを実感した。
「(螢ちゃんと弥厳が“めっちゃ仲が良い”って言ってたけど、その通りだなー)」
以前、「新人ってどんな奴ら?」と螢と弥厳に聞いた事があった西珠。その2人の答えと同じ事が目の前で起きている事に驚愕を通り越して何故か和んだ。なんでや。自分でも思った。
彼らが仲が良いと云うことが分かったので西珠は「分かった分かった」と声をかけた。
「お前らが仲が良いのはよぉーく分かった。分かったから、行くぞー」
「うす」
「はい」
西珠が先頭を切って歩き出すと2人が後をついて来る。灯茉が空中を飛びながらそのあとを追う。縦一列に並んで『忌鬼』がいないか目を光らせる。
「んー…いないようにしか見えんなー」
西珠がそんな事を言う。その通りで廃墟の街の何処にも『忌鬼』らしき影も形も見えないのだ。前の任務で全て討伐されたのでは?と思うほどにいない。
【隊長ーこっちはいません】
耳に入れたイヤホンから螢の声が流れ込んでくる。西珠はイヤホンを抑え、マイクを出す。
【やっぱ討伐されたんじゃないか?】
【これだけいないと、な】
弥厳と管狐の声も入って来る。西珠はマイクに向かって声を発した。
「よーし、お前らそのまま来い。合流すっぞー」
【りょうk…キャア?!】
「「「?!」」」
と、突然、螢の悲鳴が流れて来た。全員が驚く。千聖が一番に我に返り、叫んだ。
「おい!どうした?!」
【巨大『忌鬼』により、螢負傷!至急応援求む!】
管狐の焦った声が響く。そして少々遠い前方でドガンッ!と土煙と音が廃墟の街に響き渡った。
「今から行く。螢ちゃんは怪我の状況に応じて撤退らせろ。行くぞお前ら!全力疾走だ!!」
『はい!!』
西珠が走り出す。それに国彦と灯茉、千聖が続く。向かう先に真っ黒で大きな、何本もの腕を持った『忌鬼』がいた。
**
〈螢!しっかりしろよ!螢!!〉
頭から血を流し、倒れた螢を弥厳が抱きかかえ、悲痛な声をあげている。螢は気絶しているようで一向に目を覚まさない。その2人の前には刀を構えた管狐が2人を守るように立ちはだかっていた。
「西珠達がもう少しで来る」
管狐が弥厳を安心させるように言うと弥厳はかろうじて頷いた。管狐は目の前の敵を睨んだ。何本もの腕が管狐に迫る。管狐は刀でその腕を切り落とすがまだ腕は何本も残っている。
「くっ…」
螢を心配する弥厳と気絶した螢。2人を守りながらは少々キツい。早く来てくれないかと思った。再び腕が管狐を襲う、がそれらを容赦なく切り落とした。が別の方向から腕が螢と弥厳に向かって襲いかかった。管狐が慌てて切りかかったが、間に合わない!
〈?!〉
螢を抱きかかえているために次の行動に移れなかった弥厳は螢を覆いかぶさるようにして守った。
〈………あれ?〉
しかし、覚悟していた痛みはいつまで経っても来ない。弥厳は不思議に思い、顔を上げた。
「大丈夫かー弥厳?」
〈千聖!〉
目の前には腕を大斧で防ぐ千聖がいた。バシュッと腕を切り落とすと管狐と合流した。
「西珠と国彦は?」
「あの2人なら今にわかるさ、なぁ灯茉?」
「〈え〉」
なんで灯茉?と弥厳と管狐が千聖が向いた方向を見るとそこには妖艶に微笑んだ灯茉が漂っていた。
〈灯茉!〉
〈大丈夫か弥厳。お主は怪我はないようじゃが…〉
〈嗚呼、螢が…〉
弥厳が気絶している螢を心配そうに見る。灯茉は大丈夫と弥厳に笑いかけた。
〈お主の螢がこんなとこで死ぬものか〉
「そうよ、やっくん。ボクを誰だと心得るの?」
〈螢!〉
その声に螢を見れば、血が出ている頭を抑えながら意識を取り戻していた。ふらつきながらも弥厳の手を借り、螢は立ち上がる。弥厳が心配そうな顔で彼女を見る。管狐も千聖も心配そうであるが螢はそれを吹き飛ばすようににっこりと悪戯っ子のように笑った。
「ボクは大丈夫。これでも副隊長ですよ?」
それに心配が吹き飛んだ。嗚呼、そうだ。あの副隊長だ、こんなとこで死ぬような彼女じゃない。
弥厳はギュッと螢の手を握った。螢が握り返し、槍を持つ。全員が武器を構えた時だった。
ーズバッー
巨大な『忌鬼』の足であろう場所が切られ、『忌鬼』がバランスを崩した。バランスを崩す『忌鬼』から逃れるようにこちらに西珠と国彦が着地した。
「おー螢ちゃん。無事のようだなぁ」
「酒呑童子の隊長残して倒れるとやっくんが迷惑するんで」
「弥厳好きだなーホント。ま、いいか。お前ら」
西珠が巨大な『忌鬼』を見上げ、叫んだ。
「さっさと倒すぞ!」
戦闘支部第十部隊『神樂』、戦闘開始




