Mission13.初任務を仲間と共に
と、云うことで酔っ払い隊長を置いて任務に出かけた第十部隊。
訓練以外での初めての実戦と云うことと任務先で2つに別れなければいけないため、国彦と灯茉は螢と弥厳と一緒に、千聖は管狐と一緒のチームになった。
任務内容はある神社に現れた『忌鬼』討伐と神社の神様の保護である。戦闘力が高い国彦達のチームが『忌鬼』を、千聖達が神様の保護という役割分担にした。
「国彦はなんで戦闘支部に入ろうと思ったの?」
「え」
神社の長い長い階段の前で螢が国彦に聞いた。国彦は驚いたようで動きを止めた後、頬をかきながら恥ずかしそうに言った。
「……灯茉に誘われて…」
〈灯茉に?〉
弥厳が空中に浮かぶ灯茉を見上げると彼は袖口で口元を隠しながらプイとそっぽを向いた。
普通は政府に呼ばれて来るが、自主退部もあり、それに必ず来いというわけでもないので行くか行かないかは個人の自由だ。
〈………国彦が成長出来ると思ってのぉ〉
〈やっさしー〉
弥厳がそう答えた灯茉をからかうと灯茉は顔色一つ変えずに国彦の隣で漂う。
「意外だなー」
「そう?」
〈国彦ー灯茉って今機嫌悪りぃか?〉
「普通だよ」
〈悪いが子供は苦手じゃ〉
〈子供じゃねぇ!〉
灯茉が笑って言うと弥厳が噛み付く。それを螢が抑えながら可笑しそうに笑う。国彦は「ごめん」と弥厳に頭を下げ、灯茉に「余計な事言わない」と文句を言おうとしたところギロッと明らかに機嫌が悪いようで睨まれたので黙った。
「螢は?どうして入ったの?」
話の流れを変えようとそう問う。
「ボクはお父さんに進められて」
笑顔で言った螢。国彦が続けて質問しようと口を開きかけたその時
〈国彦!〉
〈螢!〉
「「?!」」
国彦と螢は自らの臣下に抱えられて後退していた。バシュッとさっきまで自分達がいた場所に何かが斬りつけたような傷が走る。
「え、なに?ナニ?!」
〈暴れるな国彦……ほぉれ、やって来たぞ〉
灯茉の右肩に米俵のように担がれた国彦がジタバタと暴れたが機嫌が戻った灯茉の、警戒する声に止まり、彼が見る方向を見やる。螢は抱きかかえられた弥厳から降り、警戒態勢で弥厳と共に2人と同じ方向を見ていた。
4人が見やった方向は神社の長い長い階段の中間辺りだ。まだ昼間だが近くに生える木々によってできた影から出て来たのは右腕が剣と同化し、6つの金色の瞳、そして一見、人間にも見えるような黒い胴体を持った醜い化け物だった。
「『忌鬼』!」
「!?あれが…」
螢がそう言い放ち、武器である槍を構える。国彦は訓練での実戦で一度は見たとは言え、その姿に驚いた。あれが『禁忌』を解放するためにお社から逃げ出した『忌鬼』……
弥厳のオッドアイが美しい金と銀の光を一瞬放った。灯茉は弥厳の行動は神の力で『忌鬼』の何かを確認したのだろうと予想がついた。『忌鬼』は弱点が多いためかこちらの様子を伺っている。
〈主、あの『忌鬼』はまだ此処の神を狩ってはいない〉
「ギリギリね、先にボク達を見つけてくれた事に感謝すべきかな…国彦!」
「はいっ!」
弥厳が調べた事を螢に告げると彼女は少々安堵しつつも緊張を解かずに今だ灯茉に担がれている国彦を振り返った。螢は真剣な表情で彼らに命を下す。
「ボクとやっくんで気を逸らすから国彦と灯茉で倒して!行くよやっくん!」
〈承知〉
「う、え…」
国彦の返事も聞かずに螢と弥厳が『忌鬼』に向かって跳躍した。国彦は慌てながらも灯茉から降りようとするが灯茉は離す気がないらしい。ジタバタしているうちにガキンッ!と闘いが始まってしまった。
「灯茉!降ろして!あと、大太刀持ってるの灯茉なんだからさ!」
〈…………〉
「灯茉!!」
何度も灯茉に呼びかけるが彼は何を思ったかだんまりだ。と灯茉が国彦の耳元で何かを喋った。国彦にとってはあまりにも灯茉らしい言葉でクスリと笑ってしまったがコクリと頷いた。灯茉は納得し、国彦を降ろすと持っていた大太刀を差し出した。その大太刀の柄を握り締め、スラッと抜き放ちながら使命に燃えた真剣な眼差しで国彦が叫んだ。
「行くよ灯茉」
〈任されよう〉
そして『忌鬼』に向かって跳躍した。
螢が突き刺した槍を『忌鬼』は右腕の剣で防ぐ。そこに6つの瞳を狙って弥厳が回し蹴りを放つ。瞳が一つ、グジャリと不気味な音を立てて潰れ、『忌鬼』が悲鳴を上げながら後退した。ニィッと笑ったのは誰だったか。目の前で笑う弱点に『忌鬼』は化け物であるが首を傾げた。こいつらは何を見ている?
〈妾達に決まっておろう?〉
『忌鬼』の右に3つ並んだ金色の瞳が恐怖に歪んだ。狩る対象外の神は『忌鬼』にとって弱点でしかないのに。『忌鬼』はそう、赤い口元を歪ませて“嗤った”。
グジャリ…と灯茉は血がついた右手をピッと払う。『忌鬼』の右に3つ並んだ瞳が潰され、6つあった瞳は左の2つしか残っていなかった。『忌鬼』は悲鳴を上げながら剣と同化した右腕を灯茉に向かって振り返りざまに振った。がそれを灯茉は空中で一回転して避ける。その向こうには大太刀を構えた国彦。痛みと負けそうな屈辱、そして弱点に倒される怒りに叫びながら『忌鬼』は剣を国彦に向けて振った。
ーズサー
『忌鬼』の体は真っ二つに分断され、『忌鬼』は黒い靄となって消えてしまった。国彦は自身の手を見つめ、ギュッと握る。
成功した。初めての、任務。
それが嬉しくて顔が思わずにやけてしまう。と灯茉が国彦の頭を撫でた。
〈さすが国彦じゃ〉
「へへ…灯茉もね」
褒められて嬉しい国彦は灯茉を褒め称えた。灯茉も嬉しそうに笑った。が、
「おかしい」
「?何がおかしいの?」
訝しげな顔で『忌鬼』が消えた跡を見ていた螢が呟いた。国彦が問うと弥厳が答えた。
〈普通『忌鬼』は一体だけで行動しないんだよ。大体が団体行動か身代わり行動…おかs…!螢!〉
説明の途中で弥厳が何かに気づき、叫んだ。螢が『忌鬼』がいた辺りの階段の段をひとなでし、確信したように弥厳に頷き返す。国彦と灯茉はこの2人が何を言っているのかさっぱりだ。
〈なんじゃ?こちらにも説明せい〉
「ごめん!説明あとでいい?!緊急事態発生かもしんないからっ!」
螢は耳に入れたイヤホンからマイクを伸ばし、何処かに向かって連絡をとった。
「こちら戦闘支部第十部隊副隊長の螢。別行動中の方に『忌鬼』が行ってない?」
【おー!螢ちゃん!ナイスタイミング〜!】
国彦と灯茉、弥厳の耳にも螢と同じイヤホンが入っており、戦闘支部や他の支部の後方支援を主とする後方支援支部オペレーター部隊に繋がっている。オペレーター部隊は一日の半分以上を『『禁忌』対抗専門組織』の建物内にあるオペレーター室(またの名をコンピュータ室)で過ごし、戦闘支部や医療支部に情報を送ったり本部からの指示を与えたりしている。欠かせない後方支援だ。
そんなオペレーター部隊。螢が繋いだのは戦闘支部の任務状況担当の者だ。通信機は部隊共通なので担当の声は螢以外の3人にも聞こえている。
【今さっき、討伐が早く終わったから変だなーともう片方覗いたんだな。そしたら!別行動中の方にも『忌鬼』が出現してる!しかも数は多いし…早く行ってくれ!】
衝撃的な事実に国彦と灯茉は驚愕しながらも納得した。2人が言っていたのはこの事か、と。
「場所は?!」
【螢ちゃん達がいる所から数m先の神社の裏手!急げ!】
「了解!行くよみんな!」
「はい!」
〈承知〉
〈嗚呼〉
彼らは2人だけの千聖と管狐の安否を心配しながら数m先の神社の裏手目指して階段を駆け上がった。




