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ぼくのいない世界  作者: 松永晋也
わかる世界(2011年8月)
9/33

 他人の心が分かるというのは、いい面もあれば、悪い面もある。

 ぼくはあまり悪いことだとは思わないけど、それをすごく嫌がる人間もいるだろう。そしてxxはどちらかというと、心を読まれるのが嫌いだった。

 だからこそ、学校でも心を閉ざしていることが多かった。


 けれど、心を閉ざすというのはあんまり長続きすることじゃない。心を閉ざしたままにすると、やがて反動で心のドアが壊れて、開きっぱなしになってしまう。多分、xxの心のドアは、今完全に壊れてしまっているんだと思う。だから、彼の心の声は丸聞こえだったんだ。


(xxは今日も休みだ)


 そして、今日もまたxxは学校に来なかった。


(え~、今日も?)


(本当に大丈夫なのかな?)


(病気なんじゃない?)


(みんな、静かに)先生が会話を遮るように、大きな心の声を出した。(飛鳥は昨日xxの家に行ったんだろう? どうだった?)


(えっと……体調はそんなに悪くなさそうでした。でも、心のドアが開けっ放しになってて、考えが漏れ出していたんです。彼はそれが嫌で学校に来られないんだと思います)


(なるほど。それじゃあ大したことは無いのか?)


 先生に言われて、ぼくはぽつりと不安になった。


(……わかりません)

 と、思う。だって、そんなこと分かるわけない。

 彼の心の中をしっかり覗いたら答えは分かるけれど。そうじゃないんだから。


(わかりません? それだけか?)


 先生の怯えたような気持ちが、心の声で伝わってくる。

 きっと、先生もどうしたら良いかわからないんだろう。この世界の先生は本当に臆病だ。それはきっと、心が読めてしまうからなのかな。


(ぼくは彼の保護者じゃありません)


(それはそうだが……友達だろう?)


(……そうです。ぼくと彼は親友です)と、思う。昨日、ぼくは彼に殺すと脅されたけど、やっぱり親友なんだ。


 それなら彼を助けてあげないと。


 そうだよ。


 そうだそうだ。


 今日も会いに行ってあげた方が良いよ。


 自殺するかも。xx君は暗いし。


 自殺したら大変だぞ。


 それって誰の責任?


 先生の責任になる。マスコミで取り上げられることになったら終わりだ。私だけじゃなくて、学校自体が大変なことになる。だから飛鳥、頼むよ。彼のことを助けてあげてくれ。


 うるさいな、xxなんてどうでも良いのに。


 私、xx君とは少し仲が良いから、会いに行ってみようかなぁ。


 やめときなって。xx君に何されるか分からないよ。目つき悪いし、いっつも自分の心を隠してるのは、きっとすごく性格が悪いからよ。


 確かに、心を隠してる奴ってたいてい悪人だよな。


 いや、そんな事無いよ。大人達はみんな小部屋に鍵を掛けているしね。他人に話せない秘密ごとだけを小さな秘密部屋に上手く隠してるんだ。先生だってそうでしょ?


 それは……


 えー、そうなの? 先生ずるーい!


 ああ、自分の声と、他人の声の区別がつかなくなってきた。何が自分の考えなのか、全然わからなくなってきた。


 xxが心を閉ざしていたのは、きっとこうなるのが嫌だったんだろうな。彼は、自分の考えが一番大切なんだ。それが正しいか間違ってるかどうかはわからないけど、今は僕も彼の真似をしてみることにした。


 ぼくは心を閉ざしてみた。









 教室の中は一気に静になる。みんなはきっと、心の声で喋っているんだろうけれど、ぼくには聴こえない。


 彼らはぼくのことをどう思っているんだろう? と、不安になると同時に、少し安心したような気持ちになる。ともかく、静かだった。


「先生、ぼくは今日もxxの家に行ってみます」


 ぼくは席を立って、先生に向かって声を出した。


「……」


 先生は驚いた顔をして、コクコクとうなずくだけだった。多分、長い間声を出さなかったせいで、先生は声が出なくなってしまったんだろう。ぼくはxxのおかげで言葉を話す機会が多いから平気だけど、多分クラスの半分以上はもう言葉を上手く喋る事ができないと思う。

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