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魔王を倒した英雄達

登場人物

シュウノ:ハーレム主人公なテンプレなろう系ヒーロー

メイリア:テンプレ剣士ヒロイン

イグナ:テンプレ魔法使いヒロイン

ティアニス:テンプレ聖女ヒロイン

パリウス:難聴系なろう系ヒーローな騎士団長

ロジャノ:ドラゴンヒロイン系のじゃろり口調の巫女


ノフィス:魔王で魔族代表であり、この世界最高の魔法使い

プロローグ


「今日は英雄の絵本をよむからおいで」


おばさんの穏やかな声に応えるように、ソファに座った孫の少年が、目を輝かせて隣から絵本を覗き込んだ。


その傍らでペットのミニヤギの「リーフ」も聞き耳を立てるかのようにピンと尖らせている。


おばさんは、絵本を広げて読み聞かせ始めた。


むかしむかし、 三百年ほど前に世界を救った英雄がおりました。


世界を手に入れようとした魔王を倒し、 たくさんの美女に囲まれて、街の人からも頼られて英雄は毎日をとても楽しく過ごしておりました。


そんなある日、英雄が街の噴水広場で仲間とおしゃべりしていたら、なんとも奇妙な姿をした山羊男と出会ったのでした。


神とは人々の『祈り』から力を得て生まれます。しかし、それとは別の届かない思い、やり場のない憤り、救われない孤独や諦めなどの『不満』からは山羊男が生まれるのです。


救われない思いが長い年月をかけて集まった不満が形となったのが山羊男なのです。

これは英雄と山羊男との終わらぬ戦いの物語。さあ、お話の始まりです。



第1話 魔王を倒した英雄達


魔王城の玉座の間には、緊張に満ちた空気が漂っていた。


魔王ノフィスは玉座から立ち上がり、目の前に立つ6人の勇者たちを見渡すと、魔王らしくない困惑したような表情を浮かべた。


「…え? お前ら6人でくるの? それは……ずるいんじゃないか?」

「えーと、英雄と女剣士と騎士団長と魔法使いとヒーラーと龍の巫女だっけ?」


呆れとも冗談ともつかないその言葉に、主役のシュウノは鼻で笑い、彼の異能であるアイテムコンプ(正方形のシャボン玉のような膜)を周囲に展開する。


「お前が勝手に始めた戦いだ。こっちも行儀よく一対一なんて付き合ってやる義理はない」


「やれやれ、フェアプレー精神に欠けるものだ。人間は」


ノフィスが指先を鳴らすと、周囲の空気が煮えたぎり、高熱の火球が雨あられのように降り注いだ。しかし、シュウノは即座にアイテムコンプに触れて入った瞬間に静止して包み込まれ、間髪入れずに指でなぞるしぐさで向きを変えてシャボン玉の膜が破れたように静止が解除されて打ち返す。


しかし、魔王の周囲には半透明な黒色のカーテンのような揺らぎ挑む者の行く手を阻む、結界魔法『魔障』が展開されていた。火球は防壁にぶつかり炸裂して魔王は無傷である。


「我が鉄壁の『魔障』がある限り、かすり傷を付けることすら叶わんよ。」


「守りを切り崩す!」


剣士メイリアが魔障に切りつけた。彼女の切り傷を広げる異能である『裂傷線』が発動し、切りつけた魔障の防壁が切り裂き続け大きな穴ができ、さらに押し広げる。ノフィスは眉をひそめ、追撃の雷魔法を全体に放った。メイリアは雷撃を受けて膝をつくが『裂傷線』の持続に集中を乱さない。


「させねぇよ!」


騎士団長パリウスが即座に長方形の薄い結界を弧を描くように並べて張り、背後の聖女ティアニスと魔法使いイグナを庇う。イグナは攻撃に集中し爆炎の魔法を休むことなく叩き込み続け、魔王の意識を前方に釘付けにした。


その隙を見逃さず、ティアニスが回復魔法で雷魔法を受けたメイリアとシュウノの傷を癒やし、さらに呪文を唱える。シュウノが握った『飛翔の槍』に、魔王の魔力を一時的に乱す呪いを付与したのだ。


「―チャンスを待つのです。」


ドラゴンに変身したロジャノが高威力の光魔法が魔王の防御の意識を削ぐ。


「ワシの神聖な龍の力を特別にみせてやろうぞ!」


メイリアが広げた裂傷線の隙間を縫って、呪いを纏ったシュウノの槍が魔王の横腹を突き抜けた。


「うぐっ……!?」

「あの距離から投げて速度が落ちずに?」


「魔王様でも効いてるようだな。『飛翔の槍』は羽のように軽く、投げればスピードはそのままなのさ!」


『魔障』が霧のように消え始める。ノフィスが氷結魔法で応戦しようとした瞬間、イグナが炎の加護の魔法を展開し、シュウノを氷結から守り抜いた。


「シュウノ、今が仕上げよ!」


「これで終わりだ、ノフィス!」


シュウノは一気に間合いを詰め、魔力を付与して効果を持続する『護符の剣』に魔法の封印効果を与えたうえで魔王の胸に突き立てる。


「これで回復の魔法は使えないだろ!」


「おのれ……絶滅石器が……完成さえしていれば……!」

「……やっぱり6対1は無理だね…」


ノフィスは悔しげに最期の言葉を漏らした。力なく膝をつく魔王の姿を、城の影から魔王の娘が寂しげな目で見守っている。彼女は小さく「ここまでだな」と呟く。


シュウノは遠くにいる彼女に気づいた。

「おい、ちょっと君、待ってくれ! ずっと見ていたのか?」


魔王の娘は、振り返ることなく闇の中へと消えていったのだった。


魔王の城での激闘は、こうしてシュウノたちの勝利で幕を閉じた。



***その後、城下町に帰り城の中で宴が開かれた。


城の主広間は、魔王討伐の祝勝に酔いしれる貴族や高位冒険者たちで賑わっていた。

天井からは豪奢なシャンデリアが輝き、合奏団が奏でる祝祭の協奏曲が心地よく響いている。


「諸君の魔王討伐の任、まことに天晴れで偉業である」


玉座に座る国王の言葉に、広間全体が厳かな空気に包まれる。主役のシュウノはその正面で、隣に姉妹とともに並ぶフィーロの視線を感じていた。


「シュウノ、この国を魔王から救ってくれて本当に……ありがとう」


フィーロの瞳は心なしか潤んでいるように見えた。異国への政略結婚という逃れられぬ運命を控え、彼女は名残惜しそうな表情を浮かべている。


「今年を過ぎれば、もう今日みたいに会うことも叶わないかもしれないわ」


シュウノが「生きていれば、またどこかで会えるさ」と気休めを口にした、その時だった。

その感傷を遮るように、シュウノの背後から軽い足音が聞こえた。


「いやあ、先輩達が奇麗に大手柄でクリアしちゃいましたね!」

後輩のロジが、グラスを片手に不満げに愚痴を言う。


「僕たち三等だって、城下町に迫る魔王軍、相手に命がけで戦ってたんすよ。……まあ、魔王がいなくなっちゃった今、僕たちの出番や役目なんてもうないかもしれませんね」


「まあそう言うな。そんな風にふてくされてたらずっと三等だぞ」


「先輩は、強い異能を持ってるから一等冒険者でそんな風に言えるんですよ。僕の『ジャックポッドスキル』で望めば一月ごとにガチャで能力を変えれますけど、いいのがあんまりでなくてその間に先越されちゃいましたよ」

「……まあ、先輩たちがこれで歴史に名前が残るんでしょうね。僕たちはモブで忘れられて終りっすよ」


シュウノは苦笑しながら、手元のワインを煽る。魔王討伐という目的が消え、平和が訪れたことで、彼らの冒険者としての役割も終わりを迎えようとしていた。


ふと視線を変えてみると騎士団長のパリウスがイグナに詰め寄っていた。

「いや、イグナ。俺もロジャみたいにいつまでも若くはない。そろそろ身を固める相手を……」

「……またその話? 騎士団長ってば、本当に懲りないわね」


ロジャノが年の話を耳にして噛みつくように怒る。


「よいか?わしの歳の話はするなと言っておるじゃろ!」

「あまりからかうでない!わしだってつらいんじゃよ!仕えていた龍の生き血を継ぐっていうのは、並大抵の重圧じゃないんじゃ……!」


パリウスが難聴癖のフリでごまかすように受け流す。


「うん? 何か言ったか? 酒のせいと周りの音でよく聞こえんのだが」


イグナが(聞こえてるだろ)と思いながら呆れながらため息をつく傍らで、聖女ティアニスは空気を読まず、テーブルの料理を猛然と頬張っていた。

ティアニスはパリウスの難聴癖に糞野郎と思い、ロジャノの口調にわざとらしいキャラ付け女だと内心、苛立ちながら声を漏らす。


「騒がしいのは魔王だけで充分ですよ。戦いの後であまり騒がないでほしいです。」


武人らしい態度を崩さず、落ち着いて座り酒をたしなむメイリアも相槌を打つ。


「まったくだ……せっかくの祝杯だというのに、気が休まらん。もう少し静かにできんか。」

「宴が終わったら今度はどこに行くシュウノ?」


「そうだな。…城下町は賑やかでいいが忙しそうだから、もう少しほどほどに落ち着いた街に行こうかな」


ティアニスは旅の支援をしていた貴族のセイルに今までありがとうと言葉を送っていた。


「わたくしは、魔王討伐はできないからあなた達にできることをしただけですわ」


そんな騒がしい面々を横目に、セイルは酔って千鳥足のシュウノを廊下に呼び出して腕にぴたりと寄り添った。


「シュウノ、魔王討伐の旅、本当に大変でしたね。移動の手続きも活動費用も、すべて私が尽くしておりましたもの。」


「それは助かったよ、セイルも欠かせない仲間だ」


「私が言いたいのは……宴の後で、少しだけ二人でゆっくり過ごせますわよね?」

いつもとは違う、どこか射るような瞳。


シュウノは酔いのせいか、あるいは彼女の迫力に押されたか、「……ああ、何か大事な話か」と、言われるがままに彼女の後をついていくのだった


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