78.コードの詠唱
シャオは通信に使われているので、久しぶりに自分で料理をして、リー博士と一緒に食事を摂る。
何気ない当たり前の生活を、ここ数か月していなかった。
不思議と新鮮な気持ちだった。
リビングの窓ガラスが再びモニターに変わって、解析映像が映し出された。
犬の体内には、小さい四角いものがあった。
「私がこちらに来たころに、使われていたタイプのメモリガジェットみたいね」リー博士は画像を見ながら言った。
モニターの向こう側のゴトウが、リー博士に同意した。
「はい、そのようです。筐体を破壊して内容物を取り出しますか?」
ゴトウは指示を仰いだ。
「私は、それでいいと思いますが、リー博士はどう思われますか?」
「うん、やっちゃってー!」リー博士は相変わらず、明るい。
ゴトウ技師は、最小限の小さな穴を作り、中のメモリガジェットを取り出した。
「では、中のデータを解析します」
モニターに映し出されたのは、例にもれず私には理解できない文字列だった。
「アイリス、解説してくれる?」私はアイリスの方を向いた。
アイリスは、無表情のまま
「ウトゥ ファーマ ノストラ フロレアト イン アエテルヌム
ヒク ムンドゥス カンディドゥス エト プールス ノステル エス
ウトゥ デフォルミス セネスカス エト モリアリス
ムンドゥス カンディドゥス インディグノス レクーサト」
というセリフを繰り返し始めた。
シャオが投影する映像が乱れた。
「あれ?やられたー!」
リー博士の声が途切れ、その途中で映像はぷつりと途切れた。
次の瞬間――
今までリー博士を映していたシャオが、アイリスと同じように、
無機質な声で謎の呪文を唱え始めた。
「ウトゥ ファーマ ノストラ フロレアト イン アエテルヌム
ヒク ムンドゥス カンディドゥス エト プールス ノステル エスト
ウトゥ デフォルミス セネスカス エト モリアリス
ムンドゥス カンディドゥス インディグノス レクーサト」




