↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラストダンジョン最寄りの村の定食屋ですが、魔王様が常連客になりました  作者: 松本雀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/88

魔王様たち、食後の雑談が物騒です!

魔王様たちが食事を終えて、ようやく一息つける――と思ったのですが、そう簡単に平穏が訪れる訳はありませんでした。


「メルヴィ。お前の料理はなかなかのものだが、さらに上質な食材を使えば、格が上がるのではないか?」


持参したナプキンで優雅に口元を拭いながら、東の魔王エヴァンス様がそんなことを言い出しました。


「たとえば、肉だ。お前の店では普通の家畜の肉を使っているようだが、どうせなら黒毛ミノタウロン牛にしてはどうか?」


「即却下です」


間髪入れずにお断りしました。


「何故すぐに私の意見を却下するのだ……」


不満げに眉を寄せるエヴァンス様。

だって、そんなの仕入れたら破産しますから!!!


黒毛ミノタウロン牛――元は迷宮に棲むミノタウロスが、家畜化の過程で牛化した幻獣系家畜獣。かつては迷宮主(ラビリンスロード)専用の食糧で、一頭買いできるのは大貴族や王族だけと言われている、大陸でも最高級と名高い幻の牛肉。


そんなもの、定食屋の仕入れに組み込めるわけがありません。


「私が出資してやろう」


「結構です!」


「金に糸目はつけぬぞ?」


「問題はそこじゃないんです!!」


エヴァンス様は、なぜか本気で店のグレードを爆上げしようとしているのですが、私は場末の定食屋をやっているのであって、高級レストランを開業するつもりは一ミリルもないんです!!!


「そもそも、庶民の味こそが、うちの店の良さなんですよ!」


「ほう……そういうものか?」


納得したような、していないような顔で、エヴァンス様は渋々引き下がりました。


私は心の底から、ほっと胸を撫で下ろします。


……が、食後のお茶の時間になり、今度は魔王トークが始まってしまいました。


バルゼオン様とエヴァンス様が湯呑みを傾けながら、至極のんびりとした様子で勇者について語っています。


「最近の勇者はつまらん」


「ふむ、確かにな」


「この間、私のダンジョン『燦輝の黄金城』に侵入してきた者は、最初の門で泣いていたな」


「それはひどい。そういえば、我が『悠久の万魔殿』に挑んだ者も、第一層の魔獣が咆哮した瞬間、剣を落として泣き崩れたな」


物騒すぎる……。

なんですかこの会話!?


「最近の勇者は、根性が足りないな」


「同感だ。昔はもっと死にもの狂いだったのにな」


根性の問題じゃないと思います!

勇者様視点で考えたら、地獄以外の何物でもない。


私はこっそり距離を取ることにしました。


さっきまで「美味いな、これはさっぱりしていて良い」と言っていた方々と同じとは思えません……。


「人間のお嬢さんはどう思います?」


「――え?」


突然、話を振られて私は固まりました。


笑顔でこちらを見つめるのは、エヴァンス様の側近、ディートリヒ。湯呑みをワイングラスのように優雅に揺らし、まるで貴族の社交パーティーにいるかのような、余裕の微笑みを浮かべています。


いや、今の会話に私の意見必要ですか???


「あの……その……」


口を開きかけましたが、言葉が出てきません。


「ふむ、メルヴィはどちらかと言えば、勇者側の立場だからな」


「ならば、我々と勇者の戦いについて、何か思うことはあるか?」


「ええと……その……」


やめてええええええ!!!

定食屋の店主に、魔王会議の意見を求めないでください!!!!


私は慌てて話題を変えようと、お茶を差し出しました。


「ど、どうぞ!! おかわり、いかがですか!!!?」


「ああ、ありがたい」


……セーフ!!!!


魔王様がお茶に意識を向けてくれたおかげで、私は何とかこの死の会話から逃れることができました。


だめだ、規模が違いすぎてついていけない。


例えるなら、スーパーの特売の話をしている一般人の横で、国家予算レベルの経済会議が行われているようなものです。


「ふむ、メルヴィも興味があるのか?」


「ないです!!!!」


私は全力で首を振りました。


……お願いですから、もう少し普通の話をしてください、魔王様たち!!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。