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ラストダンジョン最寄りの村の定食屋ですが、魔王様が常連客になりました  作者: 松本雀


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19/88

魔王様、湯呑みを見せびらかす

食事の仕方ひとつ取っても、魔王様方の個性は見事にバラバラでした。


バルゼオン様は静かに、そして満足げにフライを噛み締めています。


「……ミックスフライというのは、異なる国が静かに共存しているかのようだ。それぞれが主役を張れる素材でありながら、この一皿の上では互いに争わず、役割を全うしている。海老は甘く、魚はしっとり、コロッケは温かい安心感をもたらす。……なるほどこれが調和というものか」


さも当然のように美味い、という顔をしているのがなんともバルゼオン様らしいですね。


一方、エヴァンス様は――


「高級な素材でなくとも、敬意を払えばここまで昇華するのか。海老も魚も芋も、ただ揚げただけではない。一度手をかけ、性質を見極めた上で、最適な調理をしている。そして、盛り付けにも、料理人の思想が見える。秩序ある美しさ――それこそ、料理の品格だ。実に好ましい」


何やら高尚な感想を呟きつつ、フォークとナイフで優雅に召し上がっていらっしゃいます。まるで高級レストランのコース料理でも食べているかのような雰囲気ですね。


そして最後のアモルテ様は――


「う~~ん!最高だね!!」


エビフライを尻尾まででバリバリ食べながら、ニカッと満面の笑みを浮かべました。


「いやぁ~~!いいねえ、このミックスフライ!!海老も魚もコロッケも、全部味も食感も違うのに、なんで一緒に食べると、こんなに幸せなんだろう?違いを楽しむ、それが愛ってやつなんだよ!!同じじゃなくていい、むしろ違うからこそ楽しいんだ。フライの世界は、実に愛に満ちてるねえ!!!」


いやはや。ミックスフライに愛の哲学を見出す人、初めて見ました。フライは愛じゃなくて揚げ物です、アモルテ様……。


さて――ここからは、食後の時間です。


私は湯呑みにお茶を注ぎ、魔王様方の前に静かに置きました。


バルゼオン様は当然のように、懐からマイ湯呑みを差し出します。そういえば、私がプレゼントしましたね。お茶を注ぎながら、すっかりこの店に馴染んでいるなあと、思わず微笑んでしまいました。


……いや、常連過ぎませんか、バルゼオン様。


「フッ……」


「…………」


「…………」


エヴァンス様とアモルテ様が、無言でバルゼオン様のマイ湯呑みを見つめました。


いや、その間は何ですか……?


「ほう……」


最初に反応したのはエヴァンス様でした。


「その湯呑み……なかなか品のある造りではないか」


「ふむ、そうだろう」


バルゼオン様はやたら得意気に湯呑みを持ち上げました。


「この店の主人が、我のために用意したものだ」


「……それはどの程度の価値なのだ?」


「…………」


はい、やっぱりそう来ましたね!?

エヴァンス様、ものの価値は金額で測るタイプ!!!!


私は内心ため息をつきつつ、「普通の雑貨屋で注文したものなので、そこまで高価なものでは……」と答えかけた、その瞬間。


「さぁ、どうだろうな」


バルゼオン様が 「あえて答えない」 という選択をしました。


「曖昧にしておくのも、王の嗜みか。――だが、ますます興味が湧いたぞ」


いや、ただ勿体ぶってるだけですよね!!!!

なんでこんな高尚な駆け引きみたいになってるんですか!?


と、そこへ――


「僕も質問があるよ!!」


アモルテ様が、身を乗り出しながら割り込んで来ました。


「ねぇねぇ、その湯呑み……一体どんな愛が込められてるんだい!?」


「愛!?!?」


まだその話、引っ張りますか!?


「フッ……」


またもや勿体ぶるバルゼオン様。

そして、それをじっと見つめるエヴァンス様とアモルテ様。


いやいやいやいや、何この謎の緊張感……!?


「まぁ……知る必要があるかどうかは、お前たち次第だな」


「……ほう」


「……気になるねぇ~~!!!」


……なぜか 「語られざる逸話」 みたいな雰囲気になりかけています。


雑貨屋で買った湯呑みに、王家の秘宝みたいな雰囲気を纏わせないでくださいませんか!?


――それはただの湯呑みですから!と、私は全力で叫びたくなりました。

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