39 番外編 インタビュー記事~騎士カフェ二号店編~
星灯騎士団情報誌――『星灯だより/最新号』より抜粋
特別企画 騎士カフェ二号店で働く騎士をご紹介!
教えて! ネロくんQ&A
――自己紹介をお願いします。
あ、はい。星灯騎士団第七期入団のネロ・スピリオと言います。
兵種は射手で主に弓矢で戦う後衛です。騎士団に入る前は故郷の村で狩人をしていました。まだ駆け出しでしたけど……。
騎士カフェでは厨房で調理補助や皿洗いをしています。あ、でも、ドリンクや簡単なスイーツは作らせてもらっています。もちろんプロの方から指導を受けて、レシピ通りに作っていますので安心して下さい。
……こういう感じで大丈夫ですか? インタビューは入団の時以来なので、変なことを言ってしまったらすみません……。
よ、よろしくお願いします。
――ご趣味はなんですか?
これと言ったものは特になくて……。
時間がある時は、狩りの道具の手入れを念入りにしています。いざという時に武器を信じられないと攻撃を躊躇ってしまうので。
それ以外は……あ、カフェの盛り付けの関係で果物の飾り切りを習得したんですけど、最近は習った切り方以外も考えて練習するようになりました。楽しいです。女性のお客様が多いので、花やハートの形などの可愛らしいものを中心に、少しでも喜んでもらえるように頑張っています。
――家族について教えてください。
両親と俺の三人家族……だったんですけど、少し前に父が他界して、今は母と二人です。息子の俺が言うのもなんだけど、父は凄腕の狩人でした。父が狩りで失敗したところは見たことなくて、近隣の村々にも知れわたるほどでした。どれだけ頑張れば父に追いつけるのか……まだまだ先は長そうです。
母は……これも俺が言うのは恥ずかしいんですけど、村一番の美人だと言われていました。父と母が結婚した時は村中の若い男が泣いたらしいです。だから父が亡くなった時に揉めて大変でした。これから父の代わりにしっかり母を守っていきたいと思います。
――尊敬する騎士はどなたですか?
やっぱり、アステル団長のことはとても尊敬しています。強くて格好良くて前向きで、俺みたいな平民にも優しくて……姿をお見かけするだけで勇気が出ます。団長の下で働けるのは本当に光栄なことだと思っています。
あと、最近騎士団本部でミューマさんとお話しする機会が増えて、物知りで圧倒されました。同い年なのにすごい。
身近な存在では、ジェイ先輩です。入団試験の時からずっと面倒を見てくれていて、訓練でもカフェでもよく一緒にいます。気取ったところがなくて、いつもにこやかで、話が面白くて、フォローも上手くて……コミュ力というんですか、ジェイ先輩は誰とでも仲良くなれるし、相手の気持ちを察知するのが上手です。見習いたいです。
――恋人ができたらどのようなデートをしたいですか?
え! この質問は………………すみません、驚いて気が遠くなってしまって。
そ、そうですね、俺はまだ王都に詳しくないし、こういうことに慣れてなくて自信がないんですけど、それこそカフェ巡りをしたら楽しそうです。おしゃれな店や甘いものが大好きだと思うし……あ、その、一般的な女の子のイメージの話ですっ!
美味しいものを食べて幸せそうにしている姿を見られたら、俺も幸せです。えっと、いつかそんな日が来ることを祈って、いろいろ勉強しておきます!
教えて! リリンちゃんQ&A
――自己紹介をお願いします。
はーい! 星灯騎士団第七期入団のリリン・セロニカだよ!
兵種は斧使いの戦士で前衛。たまにハンマーも使うねぇ。基本的に重たい武器を振り回して硬いものを破壊する役かな。ボクって見かけによらず怪力だから!
騎士カフェではホールで働いてます。看板騎士って呼ばれる、カフェの顔的な存在なんだよ。ほら、宣伝用チラシのセンターに抜擢されてるでしょ?
ジュリアン副団長の独断で決まったんだけど、ボクが看板騎士になってから来店してくれるお姫様が少し増えたみたい。えっへん。
よろしくお願いしまーす!
――ご趣味はなんですか?
買い物!
ボクって可愛い服が似合うでしょー? それはそれで着てて楽しんだけど、格好良い服も着たいから両方買っちゃうんだ。
あとはおしゃれな雑貨!
普通に生活しているだけで物を壊しちゃうことが多かったんだよねぇ。だから丁寧に扱うように身の周りの品をお気に入りのものばかりにしてみたら、失敗が減ったの。
それでもたまにボキッてやっちゃうから、可愛くても動物モチーフのは使わないようにしてる……心が痛むから。
――家族について教えてください。
両親と弟の四人家族! 旅芸人で各地を転々としていたんだ。ボクもいろいろな町を旅して、曲芸とかしてたんだよねぇ。弟が生まれてから、大きくなるまでしばらく王都で暮らすことにしたんだ。
お父さんは今、歓楽街の小さな劇場で働いてる。たまに女装もしてるよ! ボクにそっくりって言えば、大体想像つくかな? お母さんは超オシャレ! メイクが得意ですごいんだよ! 弟はめちゃくちゃ可愛い。ボクより可愛い唯一の男の子かも!
そういえば、この怪力はどこから遺伝したんだろうねぇ。お父さんもお母さんも弟も別に普通なんだけど……突然変異ってやつ? すごくない?
――尊敬する騎士はどなたですか?
トップ騎士のバルタさんはすごい! ボクと力比べして引き分けたんだもん。向こうの方が驚いてたけど。素質があるからって盾持ちの立ち回り方も教えてくれたよ。武器振り回して敵をぶっ飛ばす方が好きだけど、いざという時に仲間を守るのも大切なことだもんね。
身近な存在だと、同期のネロのことは普通に尊敬してるよ。手先が器用だし、全然怒らないし、謙虚で真面目で努力家で優しくて……ボクにないものいっぱい持ってる。
ネロを推してるお姫様はお目が高いと思うよ! えへ!
――恋人ができたらどのようなデートをしたいですか?
好きな人と一緒だったらなんでもどこでも楽しいと思うけど、綺麗なお花畑でピクニックするのに憧れてるー!
一緒に作ったサンドイッチとかハンバーガーを食べてー、お花で冠を作ってー、かくれんぼしてー、はしゃぎ疲れたらちょっとお昼寝してー……めっちゃ平和!
あ、あとちょっと趣旨が違うかもしれないけど、少し離れた隙に悪い奴にナンパされた恋人を、颯爽と助けるのをやりたい! ボクが出て行ったら絶対侮られるでしょ。そこをコテンパンに……え? ボクがナンパされる側?
まぁ、実際何度かあるよね。可愛いから仕方ないね。
教えて! ジェイさんQ&A
――自己紹介をお願いします。
星灯騎士団の第三期入団のジェイ・リッツっす。あ、無理に敬語じゃなくてもいい? 助かるわ。
兵種は剣士。前衛だな。つっても使い魔討伐だと前線じゃなくて、魔術系の騎士の警護や伝令になることが多い。結構な古株なのに主戦力になれてないのは申し訳ねぇけど、これも誰かがやらないといけない役目だし、俺みたいのにはちょうどいいよな。
カフェではホール担当。時給は良いし、まかない飯は美味いし、シフトの融通は利くし、何よりお客様は可愛くて優しい姫君ばかり。めっちゃ良い職場。
――ご趣味はなんですか?
なんだろ。あ、食べ歩きか。
旅の屋台とか期間限定フードとかの噂を聞いたらとりあえず食べに行ってる。流行をチェックしてるとかじゃねぇけど、未知の食べ物が好きなんだよ。たまにとんでもなく美味いものに出会えるし。
他にはDIYかな。自分の家のはもちろんとして、近所の人にもよく棚のガタつきを直してとか頼まれるんだ。簡単なものならイケる。
――家族について教えてください。
家族構成は、親父と弟と妹。母さんは親父に愛想つかして出て行っちまったんだよな。弟妹とは年が離れてて、基本的に俺が面倒見てたわ。家の手伝いができるくらい成長したと思ったら、ずいぶん生意気も言うようになった。あんなに素直で可愛かったのになぁ。
星灯の騎士にスカウトされたって報告した時は『似合わなーい』って笑われちまったよ。ひどいよな。でも二人とも利発だし、やっぱり可愛いからさ。できれば王都の学校に入学させてやりてぇんだ。騎士になれば二人分の学費も稼げるし、騎士の身内なら平民でも馬鹿にされにくいって聞いたから、似合わなくてもやることにした。はは、自分のことは後でいいんだよ。二人が大人になったらたくさん兄孝行してもらうからさ。
――尊敬する騎士はどなたですか?
俺以外の騎士はみんなすごいからなぁ。
強いて誰かを挙げるなら、トーラさん。同い年なのにすげぇメンタル。生まれや育ちや成り行きだけじゃなくて、自分で選択してあんなに強くなったんじゃん? よくあそこまで自分を追い込めるなっていつも感心する。
身近な存在だと、そうだな、同じような理由で後輩のクヌートのこともなにげに尊敬してるかな。あいつ、自己肯定感が高いんだけど、驕ってるわけじゃなくて、今まで積み重ねた自分の努力を信じてる感じ。格好良いと思うぜ。
――恋人ができたらどのようなデートをしたいですか?
あ、そういう質問もしちゃう感じ?
んー、一緒に美味い飯食いに行くってありきたりな答えじゃダメ? 実際、そういうデートが一番楽しいと思う。行きたい場所なんて、恋人のタイプにもよるし。
俺の好みで言えば、二人で並んでぼうっと釣りしたいな。大漁狙いのガチじゃない感じで。でも生きた魚とか餌の虫とか大丈夫じゃないと楽しめないよな? 女の子には厳しいかなぁ?
ま、無理なら別なことしてくれててもいいや。何か作業しながら喋るのが好きなだけだからさ。
教えて! クヌート様Q&A
――自己紹介をお願いします。
私は、星灯騎士団第七期入団のクヌート・ゼーマンだ。
兵種は槍使いの戦士。前衛だ。一応攻撃魔術もいくつか覚えているが、まだ実戦で使えるレベルではないので日々精進していきたい。
今日は非番で、騎士カフェに客として来ていたのだが、記者殿に見つかって取材に巻き込まれた。この店の珈琲は香り高く美味い。居心地は……姫君ばかりなので寛げはしないが、悪くはない。ぜひ男性にも来店してほしい。
そう! 私は騎士の一人として男性が気軽にカフェに入れる雰囲気作りを手伝っているのであって、断じて同期たちの様子が気になっているわけでは――。
――ご趣味はなんですか?
ふん、いろいろあるが……端的に言ってしまえば自分磨きだろうか。
体を鍛え、槍の腕を上げ、魔術の研鑽を積む。体を休めたい日は、国の歴史書を読んだり、外国語を学んでいる。一応、騎士になってからは身だしなみにも気を遣っている方だと思う。
どんなに小さなことでも、一日に必ず一つは新しい何かを身に付けたい。後になって「やっておけば良かった」と悔しい思いをするのは嫌だからな。
ああ、もちろん休息はしている。今日のようにカフェに来て、ぼんやり明日の目標を考えたりな。
――家族について教えてください。
我が家の家族構成は両親・兄・私の四人家族だ。祖父母は領地で暮らしていらっしゃる。名門であるゼーモン家に生まれたからには、この命は王国のために使わねば。
父と兄は城で執務官として働いている。派手な職ではないが、誰にでもできるものではない重要な業務を担っている。誇らしく思う。
私が星灯の騎士になりたいと言ったときも、父と兄はすぐに応援して下さった。母は少し泣いてしまわれたが、最後には「立派に務めを果たせ」と背中を押してくれて……家族のことは心の底から敬愛している。家の名に恥じぬ活躍をして、国と民、そして家族を守る。それが私の使命だ!
――尊敬する騎士はどなたですか?
命を懸けて使い魔と戦ってきた騎士の先輩方は全て尊敬している。アステル団長を筆頭に、トップ騎士の皆様には最上級の敬意を表する!
その中でもさらに際立って尊敬している騎士? 難しいことを……だが、しかしそうだな、ジュリアン副団長が振るわれる辣腕にはいつも感服させられる。斬新かつ合理的。どう考えても騎士団になくてはならない人物だろう。
あと、リナルド殿の、槍の腕だけは、本当に素晴らしいと、思っている……歯切れが悪いのは察してほしい。あの方はモテを意識しすぎだ。何もせずとも魅力的なのに。
身近な騎士では……あまり言いたくないが、リリンのことは型破りですごい奴だと感じる。私にできないことを易々とやってのけるからな。
――恋人ができたらどのようなデートをしたいですか?
な、なんだこの質問は……星灯の騎士は恋愛禁止だというのに!
姫君が夢を見るため? よく分からんが、考えてはみよう。
……基本的に恋人の望むことをしたい。なんにでも付き合おう。ボードゲームでも乗馬でも舞台観劇でも、一通り嗜みはあるつもりだ。もちろん未知の分野でもいい。むしろ歓迎する。
私の希望? それは……美術鑑賞など良いかもしれん。一つの絵画を観ても、感じ方は人それぞれだ。感想を語り合って相互理解を深められたら素晴らしいと思う。
こちらが今年最後の更新となります。
読んでいただいてありがとうございます。
感想や評価など本当に嬉しくて、執筆の励みになりました!
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
メリィクリスマス&よいお年を!
 




