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11話・少しは優しく接するか?

 長い間話した後、一緒にテントへ戻るギルスとリーン。青白い月の光はまっすぐ2人を照らしていて、真っ暗闇な夜を明るく照らしていた。


「そう言えば、クレイスってリーンを好いてる感じはあるな。」

「ええ、確かに勇者様は私を好いているようです。でも………………クスッ!」

「?どうしたの。」

「いえ、ただ…タイプじゃない、ので。」

「ハハハ!それも確かにありそうだ。たまにうんざりした顔してたからね。」


 そう言いつつ、リーンの頭を撫でるギルス。

 それに対して口をとがらせるリーン。


「なんか子ども扱いされている気がしますー、抱きしめてキスしてくださいよ~!」

「…聖女は清楚で純潔なのが普通じゃないのか?」

「なら耳元でささやいてくださいよ~!『俺と一緒に居てくれ』とか、物語で有名じゃないですか!?」

「それを言うと必ず死ぬというお決まりもあるというあの定番の台詞も一緒に言うんだね。OK、それならすぐに言ってあげるよ。」

「ならいいですー、ギルス君には死んでほしくないので。」


 リーンが笑う。

 その笑顔を見て、少しくらいは優しく接してあげてもいいかな、と思うギルスなのであった。ついでに、ギルスってどこかの魔神みたいだなと自身の名前について僅かに嫌悪感を持った。


 その時、誰かの視線を感じた。問いかけながらも鑑定をする。


「誰かいるのか?………………はぁ、盗み聞きとは感心しないよ、剣盾使いLV58のレッズ。」


 そう言うと近くの木を見る。金色のプレートメイル、青い装飾が入ったマント、腰当てと足防具はプレートメイルに合わせて金色になっている。


「ギルス、リーンに何かしたのか?」


 明らかな憎悪の感情を持って行っていることが分かる。レッズが彼女に惚れていたという感覚はなかったが、何か違う雰囲気を持つ関係だった。


「いや、何も?で、君はどうなの?僕らを尾行してきたと考えると、今の僕とリーンの関係について悪い考えを持っていそうだけど。」


 そう言うと少しだけ顔をしかめて、これまた少し低めの声でこう言った。


「俺は別にどうってことはねぇよ。ただ、こいつは俺の妹みたいなもんなんだ。で、そんなやつが少し前にパーティーに加入したやつと付き合うなんて話、なかなか認められねぇだろ?だからお前等の会話を聞いて、それから判断しようと思ったんだ。俺は見た目通り、脳みそ筋肉のタンクだ。良い判断ってのができねぇ。ただ、こいつが幸せになるように生きていてほしいんだ。」

「お前はリーンの父親か?」

「いや、ただの知人且パーティーメンバーだ。」


 カラカラと笑い、持っていた武器を地面につけ音を鳴らす。レッズは剣盾と呼ばれる剣と盾がくっついたような武器を使っている。そのせいで、武器の見た目が大剣に見えてしまい大剣使いと言われたこともある。彼が気にしていた点だ。

 ギルスは今思っていることを正直に話した。


「僕はリーンと付き合うことにした。それはレッズが聞いていた通りだ。僕はリーンを大切な人だと思っている。でも、まだやっぱり不安もある。僕は元々、妹どころか、他の家族もみんな死んじゃってて誰もいなかったからな。妹は目の前で死んでるし。………………もう取り戻せない、まだ決して割り切れたわけじゃない。けど、僕は幸せってのを知りたい。今の恵まれた仲間と一緒にいるのが幸せなのか、恋人を作り、家庭を作ることが幸せなのか、幸せってのがどういうものなのか、僕は知りたい。………………リーンと、一緒に居たいんだ。」

「………………。」

「もう絶対に失いたくない。何があっても…。僕が壊れないためにも、リーンを、僕らを幸せにするためにも。幻滅したら去っていいよ、レッズ。僕はただ、………………。」

「もういい!」


 そう言ってレッズは話を強制的に切る。


「俺はさっきも言ったが別にお前らが付き合うってことに反対じゃねぇ、むしろ賛成だ。クレイスのあの露骨な視線ってのがリーンに注がれるってのが気に入らねぇからな。お前はリーンを絶対に守ってくれるだろうし、何より、お前はさりげなく優しくしてくれているからな。クレイスがやらかしたらさりげなくカバーしてるみたいだし。」

「僕は別にそう言うつもりじゃないけどな。勇者である彼に死なれると、パーティーメンバーにそれが飛び火しそうだからな。無駄な戦闘は避けたい。でも………………。」

「グレーターデーモンは殺す。だな?」

「…正解。」


 それを聞いたレッズが頭を押さえるジェスチャーをする。


「大体わかった。別に復讐をやめろとは言わねぇ。でもリーンの前では絶対にそれはやるな。本人目の前にいるが、これは忠告だ。これ破ったらパーティーに居れないからな?」

「あんたはパーティーのリーダーじゃないだろ。」

「クレイスは普通にその手段を取れると思うがな。独占したいという奴がいるとき、どんな手を使っても手に入れるやつだからな。まあ、いくらお前が憎くても、そんな手を取ることは完全に愚策だがな。それについては奴も知ってるだろう。」

「あいつ…。リーンに何かしたら許さない。恋愛感情も前に消えてしまってはいたけど、多分嫉妬はするんだよね、僕。クレイスが何かやらかしても尻拭いはしてやれるけど、リーンに何かしたら全能力を開放して徹底的に始末できるし。どうせなら死んだ瞬間なら生き返らせることもできるし。」


 ギルスの扱う魔法の中には天属性魔法の【蘇生】がある。発音は「リザレクション」だが、ギルスは魔法が覚えづらいといい「そせい」というようにしている。

 実際、天属性魔法で蘇生する手段はあるものの、それらは魔力が3000以上必要な上に一定ジョブ取得者でないと使えないため、使用者が限られるというものがある。ギルスにとってはただレベルを上げていれば勝手に使えるようになる魔法のためそこの知識には疎いのだが。


「まあ、ジョブについても盗み聞きしちまったから何となくわかってるけどな、蘇生は使わない方がいいぞ?痛い目見る。」

「まあ、腕に使ったらいきなり意識飛びかけたから、ある程度はわかる。」


 結局、ギルドで腕を落とした時、代わりに魔力で腕を作っていたがどうにもなじまないと、蘇生魔法を使って直したのだ。すると急に酷い倦怠感と睡魔に襲われた。何とか耐えたものの、それ以降、蘇生魔法は大切な人ができ、死んでしまった時か、仲間が死んだ直後に使うことに決めているのだ。


「分かってんならいい。まあとにかく、ジョブについては黙ってる。リーンと付き合う事も黙ってる。だが、1つだけ言わせてくれ。」

「?」

「もう少し皆に優しく接してやれよ。」


 ギルスはその言葉を聞いて首を傾げた。優しく接するという事は考えてはいたものの、優しさというのがいまいちピンと来ない。


「あー、分かった。今までと同じでいい。お前が急に変わったら困惑するわ。」

「了解だ。」

「リーン。」

「はい…。」

「いいやつ見つけられてよかったな。」


 レッズがニカッと笑う。ギルスはレッズのその顔を見たことが無かったからかその顔に困惑していた。それを隠しきれていなかったため、レッズに、


「お前はもう少し人付き合いを学べ。」


 と言われてしまった。



「…解せぬ。」

「いや、これは普通に誰でも思う事だと思うぞ?」



 翌日、いつも通りの起床。ギルスは川で顔を洗い、口を漱ぐ。そして日課である武器の手入れをする。鎌は研ぎにくい。いや、そもそもこの鎌はギルスが作ったもので絶対に壊れないのだが、ギルスはそんな武器にも絶対に手入れをすると決めている。いつか、物は壊れるものなのだから。

 朝早く、まだ誰も起きていないような時間帯だった。日本の時間に当てはめると、4時半ほどに当たるだろう。あれから大して寝ていない。ちなみに、この世界の人間は非常に寝るのが早く、日本で言う21時にはほぼ全員が寝ている。冒険者はその生活リズムが崩れていることが多いため、日本と同じ時間帯で生活しているものも少なくはない。しかし、ギルスは日本という国のことは御伽噺に出て来た勇者しか知らない。また、勇者もいい勇者と悪い勇者がいるという話を聞いた。それも逸話でしかないが。


 話は変わるが異世界人についてのこの世界の人々の認識を確認しておく。異世界人は多くのものを恵む。大抵は技術者、経済学に精通している人物のみが召喚されるのだが、極稀に、高校生と呼ばれる少年少女が召喚される。その高校生は皆、魔法という道の存在に目を輝かせ、多くも希望を持つと言われている。無能なぞいない。無能と呼ばれし勇者は必ずしも世界に影響を与える。分かりにくいスキルも、この世界では全ての言語翻訳が可能となっているためにその最終的な力を知らせ、進むべき方角へ導いてくれる。この世界の神が言ったことだ。無論、その言葉を聞いた人物はこの世界には存在しないのだが。ちなみに、この世界の人々は日本語への言語翻訳がもっとも行いやすいらしく、日本からしか召喚しないらしい。稀に翻訳を掛けられない人物がいて強制送還するケースもあるのだとか。



「あ、ギルス君。おはよう。」

「リーンか。今日は早いね。よく眠れた?」

「ええ。何をしてるの?」

「え?ああ、これのこと?鎌の手入れ。もう少しだけ手入れしてから軽く狩りに出かけるよ。朝食は作らないと。…よし、手入れは完了!てことで、先に僕は行くよ。クレイスたちが起きたら、ちょっと食料を取りに言ってるって言っておいて。」

「一緒に行ったら、ダメ?」


 リーンが上目遣いで行ってくるがギルスは折れない。


「確かにそれはいい考えだけど、ちょっと無理かな?一応テストでもあるんだ。大丈夫、6分以内に帰る。遅れたらすぐにクレイスに知らせて。いいね?」

「分かった…。」


 拗ねているリーンの頭を軽く撫でる。少しだけリーンは気を良くしたのか不満を浮かべていた顔に笑みを浮かべる。


「じゃあ、すぐ戻ってきてね。約束……………だから。」

「……了解だ。まあ、勇者が起きたらいつも通り接してやってくれ。あとでミラとも話さないといけないし。」

「うん。」


 ギルスは森の奥へ消える。リーンはそれを見つつ、あることを考えていた。


「ミラさんを蘇らせることはできるかもしれない。でも、それは彼のためにもならない。もうミラさんとは別れて、無理やり振り切っていたのに、それを無駄にすることはできないもの。」


 そう考えていたが、つい悪い感情が、リーンを包む。


「でも、ミラさんがいたら私はギルス君を独り占めできない。それはちょっとなぁ。」


 ギルスが帰るまでの時間、リーンは己の感情に苦悩するのだった。



 その頃、ギルスはというと………………。


「相変わらず多いなココ。肉取って帰ろうとしたらいきなりゴブの群れかよ。ツイてないと思うけど、報酬上乗せで勘弁してやるか。【フレアバレット】」


 土と火を混ぜた2属性魔法、目にもとまらぬ速さで飛ぶそれはゴブリンを一掃した。頭を、胴体を、足を、その体を貫くその魔法は最後、血を纏って地に落ち、空気中に霧散した。


「イノシシの肉は取れたし、鑑定したらもういないって出たし、帰るか。」


 ギルスは時間に間に合うように急いで走った。



「リーン!」

「ギルス君、おかえり。」

「ただいま。今日は朝から肉になっちゃうな、ハハハ。まあいいや。とりあえず、ある程度香り付けをして軽く食べられるようにしよう。」



 そうして、すぐに朝食…にしてはまだ早いが肉が焼けるいい匂いがした。勇者、レッズ、フィーラもその匂いで目を覚まし、仲良く朝食を食べていた。しかし、勇者だけはギルスの変化に気付いていた。

 それがリーンと関係することだと推測し、勝手な憶測をする勇者クレイスは嫉妬の炎を滾らせながらも、いつものような依頼中にしては上等すぎる朝食を平らげるのであった。


 一方ギルスはクレイスの嫉妬に気付かず、


(平和な世界を作るために選定しなくちゃ。魔王が本当に悪とか言うのは至極どうでもいいが、争いなんて醜いものはもう見たくない。)


 リーンと付き合うことになったからか、前の角のある言葉しか出なかった口から優しさ溢れる言葉が出るようになった。

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