1.美少女転生
※これは別作品『異世界に転生したら不老不死スキル持ちだったので、スキルを消す為に旅に出る』に登場するリファが、レオルドに出会うまでのお話です。
俺はジョージ・ハワード、アメリカに住む18歳だ。
俺は生まれつき半身が動かない。いつもベッドの上での生活だ。
いつものように部屋で読書をし、そしてウトウトと眠りに就いた。
そのはずなのに……部屋で寝ていたはずなのに、これは一体どういうことなんだ……?
◇◇◇
(痛てっ、痛てぇって!)
誰かが俺の尻を執拗に叩いている。かなり強烈に。
くそっ、いい加減に……っ!
「うぁぁうああ!あああうあああ!!」
(いつまで叩いてるんだこの野郎!痛えじゃねえか!)
上手く言葉が出てこない。
というか体全体が動かない!?
嘘だろっ……足だけじゃなく全身動かなくなったってのかよ……。
「――――――――っ!!」
「――――!」
訳の分からない言葉で誰かが叫んでいるのが聞こえた。
異国の医者だろうか?
少しずつ目が開くようになってきた。光が眩しい。
ぼんやりとだが、数人いるのが分かる。だが皆、逆さまだ。
あれ?何やってるんだコイツら?
いや違うッ!俺が逆さまになっているんだ!
どんな治療法だよっ!
「――――……」
「~~~~ッ!!!」
この連中、皆してボロボロ涙を流している。
俺、そんなにヤバイ状態だったのか?そもそも見ず知らずの人間が俺の為に泣くか?普通。
一人の若い青年が俺を腕の中に抱きしめだした。
「うああ!うあうああああっっ!!」
(や、やめろっ!気色の悪い!離せっ!)
………いや、ちょっと待て、コイツ!でかすぎる!?
コイツだけじゃない、此処にいる連中全員が異常にでかい!
男が一頻り俺を抱きしめると、ベッドに横になっている女性へと俺を渡した。
とてつもなく綺麗な女性だ。歳は、俺と殆ど変わらないくらいだろうか、10代後半といったところだ。
この女性も涙をボロボロと流し、俺を愛おしそうに見つめ、キスをしてきた。
う、うへへ……照れるじゃないかぁ、やめろよぉ。
俺は次第に動くようになってきた手を、彼女の顔へと押し付けた。
そして気付いた。自分の手が赤子のように小さいことを。
「あうっ!?」
(なっ!?)
なんだこれ……これが俺の手!?
手だけじゃない!体全体が赤ん坊になってる!!
ようやく俺は理解した。
この連中がでかいのではなく、俺が赤ん坊だという事を。
しかし、そんな事がありえるだろうか……?
前世の記憶を維持してる、なんてオカルト話しを聞いた事があるが、俺はあんなもの信じていない。 でも、これはまさにそれではないのか?そんなオカルトが現実に起きるなんて……。
ということは、俺はあの時眠りに就いて死んだ……?
俺は生まれつき足が動かず、中学校から不登校だった。虐められたからだ。足が動かないなんて俺のせいじゃないのに。
家でも同じだ。10歳位までは両親ともに俺を大事にしてくれた。
でも、妹と弟が生まれてからは俺はまるで邪魔者扱いだった。直接何かを言われたという事は無かったが、そういう雰囲気は伝わってきた。
神なんていない、例え居たとしてもソイツは最低のクソッタレだ。俺はそう思い神を恨み呪った。
別にあんな人生に未練なんて無い……。
生まれ変わったというのなら、これは俺にとって転機だ。
しかも、どうやらこの身体は健常のようだ。
新しく人生をやり直せる。
俺の心の中は躍った。
だがちょっと待て……。
この身体………女じゃね?
◇◇◇
一年が経った。
俺はリファールと名付けられた。リファール・セルゲイツだ。
まだ一歳だが、黒い髪に青い瞳、とても可愛らしい容姿だと分かる。
俺はハイハイするくらいまで動けるようになり、言葉も大体聞き取れるようになった。
そして一つ分かったことがある。
それは、ここは地球ではないということだ。
何故って、今、俺の服を着替えさせているこの人……人と言っていいのか分からないけど、どうみても人間じゃない、猫だ。
猫が人間のように二足歩行をしてメイド服を着ている。
どう考えても地球じゃあない。
「……CAT」
「ん?何か言いましたか?リファールお嬢様」
最初は滅茶苦茶ビビったけど、よく見ると凄く可愛らしい。
耳をピョコピョコ、尻尾をフリフリ、それに俺に触れる肉球と毛並みが何とも気持ちが良い。
「あのしゃ、しっおしゃわってもいい?」
「!?」
猫のメイドがとても驚いた。
そういえば、まともに言葉を喋ったのって初めてだっけ。
今までは『あ~』とか『う~』だったからな。
実は結構前から喋れたんだけど。
「旦那様!奥様ぁ!!」
猫が慌てるように両親を呼び出した。
ちなみに、父親はガルード、母親をリルファという。
廊下からドタバタと走る音がし、ドアから息を荒くした父親が現れた。
「ゼハッゼハッ……ど、どうしたんだあっ!?」
「お、お嬢様がお言葉を……!」
「なんだとぉ!」
親父がグイッと俺に顔を近づけると、涙をボロボロ流した。
「おぉ……リファが遂に……リファよ、父にも何か言っておくれ」
「えつにいいけよ………お、おとーしゃま」
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
うるさい。
あと抱きつくな。
「あなた、どうしたの?リファに何かあったの?」
母親のリルファが部屋に入ってきた。
「リファが……リファが私の事をおとーしゃまと……」
「なぁんですってぇ!?リファ!私にも何か言ってちょうだい!」
「……おかーしゃま」
「あああああああああああああ!!!」
あんたは抱きついてもいい。でもちょっとうるさい。
俺が喋っただけで、この日は大騒ぎ。
その日の晩、『リファちゃん初お喋り記念パーティー』が開かれ、盛大に祝われた。
一体何なんだ、この夫婦は。
◇◇◇
三歳になった。
どうやら私はかなりの美幼女のようだ。
自分で見てもウットリするくらいだ。
この家の事が大分分かってきた。
どうやらこの家は、かなり大きな商家のようだ。
リズの…この国、リズ王国指折りの商家らしい。セルゲイツ商会を知らないものは居ないほどだ。
ちなみに、自分の事は私と言うことにした。お嬢様だしね。
裕福な家庭に生まれた事はラッキーだ。
女の体も今のところ特に不自由はない。
私は喧しくも優しい両親と、綺麗なメイド達に囲まれて楽しく暮らしている。
「それじゃあリファ、静かにおねんねするのよ」
「はい、お母様」
「良い子ね……それじゃあレン、後はお願いね」
「畏まりました、奥様」
今はお昼寝の時間だ。
母は俺をベッドに寝かしつけると、部屋から出ていった。
レンと呼べれたその女性は、何年もうちで仕えている猫のメイドさんだ。私のお気に入りだ。
「レン、ちょっとちょっと」
「はい、なんでしょうか?お嬢様」
「お父様の書斎でこんな本を見つけたんだ」
「これは、魔法書ですね」
「私、文字ちょっとしか読めないから教えて欲しい」
なんとこの世界には、魔法が存在するのだ。
父の書斎でこの本を見つけた時の驚愕ぶりといったらなかった。
ただ、文字の読み書きはなんとか独学で少し覚えていたが、やはり限界があった。そこで私は猫さんメイドのレンに教えて貰おうと考えた。
「お嬢様、少しでも文字が読めるのですか?」
「うん、でもちょっとだけだよ。自分だけじゃ限界が来てさ」
「そのお歳で素晴らしい……お嬢様は天才かもしれませんね」
「えへへ……」
実はもう20を超えてるなんて、言っても信じないな。
「でも、私も文字は少ししか分かりませんよ?」
「いいよ、分かるとこまでで」
「分かりました、未熟ではありますが、私がお教え致します」
「ありがとう」
それから私はレンと文字の勉強をした。
少ししか分からないなんて謙遜しちゃって、私はレンのおかげで十分文字の読み書きが出来るようになった。
文字を覚えたら次は魔法の勉強だ。
魔法を使うには、自分の中に秘められている魔力をエネルギーとする必要がある。
その魔力は一人一人総量が決まっているようだ。
自分の魔力総量を調べるには限界まで使って身体で覚えるしか無い。
魔法は七属性魔法と、肉体強化魔法とある。
七属性魔法には光、火、水、風、雷、土、闇の七つだ。
そして各属性には階級があり、1~5段階まである。
まずは火属性の第一段階の基礎からだ。
基礎は、例えば火属性なら、火を具現化して、具現化した火を操作するまでだ。
さっそくレンを引き連れて裏庭で練習だ。
ちなみにレンは魔力総量が少ないので魔法は使えない。
「よし、火をイメージして魔力を放出する、と」
『ボワッ』
「おぉっ出た出た、意外と簡単だな」
「パチパチパチ、お見事ですお嬢様!やはりお嬢様は天才……!」
「えへえへえへ…」
褒められ慣れてないので、褒められると滅茶苦茶喜ぶ。
「んで、これに魔力を注ぎ込んで操作する、と」
むっ、むむむ……これは意外と難しい……!
「くそっ、ちゃんと動け……!あっ、ちょっ、おいこっちくんなっ!」
火の玉がユラユラよろよろと、徐々に自分の方へと向かってきた。
「あっ駄目!いやん!こっち来ないでぇぇえええええ」
「お、お嬢様ぁぁああああっ!!」
「うわあああああああっ!!!」
着火。
そして燃えた。
私の美しい黒髪がアフロになった。
◇◇◇
「リファ……その頭は一体……」
「あの、ちょっと魔法で………」
父はプルプル震え、母はもう言葉も出ないといった様子だ。
これはお仕置きだろうな……。
「リファよ……」
「は、はい……お父様……」
「うおあああああああああああああ」
父が泣きながら私に抱きついて、私の頬をスリスリしだした。
「その髪型とっても可愛いよおおおおおおおおおお!!!」
「はぁ?」
「リファちゃん!その髪型とっても素敵よ!あぁん!アナタばっかりスリスリしてぇっ!」
両親が私の両頬をサンドウィッチするようにスリスリしだした。
メイド達も羨ましそうに指を咥えてそれを見ている。
ここの連中、やっぱ変。




