第六話 学園の中
学園に入っていく理事長の後を追い、私達三人も、中に入っていく。学園の中に入ってまず目にはいるのが美しい噴水。
ヴァルシオーネ学園の案内パンフレットに書いてあった、学園の自慢。
その一つがこの治癒の噴水だ。実は、ヴァルシオーネ学園は理事長の古い友達、ガブリエルさんが理事長に自ら頼んで作った学園なんだそうだ。
理由は勿論、理事長が優秀な魔術師であったこと。彼女ならより優秀なる生徒を成長させられると判断したからだ。そして完成したときにガブリエル様が理事長に送った一つ目の贈り物だそうだ。もう一つは理事長室にあるという。
噴水の周りには、怪我した生徒や綺麗な水の上にしか姿を表せない光源虫と触れ合う生徒がいた。
「美しいでしょう?私の自慢なんですよ。ガブリエルったら、私の望みを叶えてくれたんです。」
「仲が宜しかったんですね。」
「えぇ、それはもう。さて、理事長室にいって、さっさと属性儀式をすませてしまいましょう。」
属性儀式。それは本来普通の学園なら自ら理解するものだけれど、何せ異質形の属性もいるものだから、ヴァルシオーネ学園ではある水晶を使って見極めるのだそうだ。
理事長室の扉を開けて中に入る。窓からの光が眩しい。
理事長室の机には一つの水晶が置かれていた。その上には魔法使いがよくかぶるトンガリボウシが置かれている。
「この水晶、水晶のくせして帽子なんか被ってるぜ。」
カイルが水晶にズカズカと近付いてトンガリボウシに触れた。
バチバチッ!!
刹那、水晶のトンガリボウシから高圧電流が流れた。カイルには私が防御魔法をかけていたから何とか傷は無いけれど魔法を書けていなければ危うく焼き焦げカイルになっていた所だ。
その時には私がおいしくいただいてあげるけど。
「あ、あぶな…。」
「トロイア、この方は生徒ですよ?高圧電流なんて流してはいけません。」
「あらぁ、やだやだ。乙女に触ろうとするからてっきり泥棒かと思っちゃたわ。」
そういってんふふ、と奇妙に笑うトロイアと呼ばれた水晶。
そう、これがガブリエル様の二つ目の贈り物、話す儀式用水晶。トロイアだ。
「さて、カイルくんにはリリアンヌさんの魔法が掛かっていたから無傷ですし、儀式を終わらせましょう。
マリネさん、この水晶に魔力を流し込むように意識しながら手をかざしてください」
「…」
マリネが静かに手をかざす。その手からは綺麗な緑色よりも少し明るい魔力が溢れ出している。
トロイアは気持ちいわ〜と和む。流石、治癒に特化したマリネだ。
「はい、終わりよん。貴方は治癒に特化してるわねん。
攻撃魔法には向いてないけど、治癒の才能はあるわよ。」
「次は俺!俺!」
張切ってトロイアに触ろうとしたカイルにまたもやトロイアが痺れるだけの電流を流した。
「そんなに強く触らないで頂戴!ベタベタするわ!」
怒られて犬みたいにしゅんとなったカイルがゆっくりと魔力を流し込む。
「あつつつつ…あんた、火属性がやばいわね。
剣士として向いてるけれど、暑いわ!」
意味のわからない弁解をして、次に私を見た。
「あんた…チェスカ。分かってるんでしょ?この子がなんの属性か。この世界でまだ二人しかいない、異形属性の中でも最も貴重な属性。」
「えぇ…溢れ出しています。その魔力が。凍えるように冷たい魔力。氷属性が。」
氷