拡散希望
「遅かったな」
椿原を駆除し、車に着くと、仲介人の奴がそう言った。
「初めてだから、手間取ったとかか?それとも…」にやけた顔をして、わざとらしく間を開けて言った。「それとも、椿原が昔のクラスメートだったからか?」
「⁉」
「別に、後ろから見ていたとかそんなんじゃねぇよ。駐禁取られるの嫌だから、ココにいたからさ」
「冗談に聞こえない…」自然とナイフに手が伸びる。
「ナイフ出しちゃダメだよ」そう言って、仲介人は体をくっつけてきた。ついでに、拳銃もつけている。それは、銭形のとっつぁんが持っている拳銃と同じやつだな。感じたのはこれくらいだった。
車を走らせている。ナイフはグローブボックスに入れた。
「何か、聞きたいことがあるんだろ?」仲介人、今は運転手が話しかけてきた。
「………」
聞きたいことは山ほどあった。が、これを聞いたら俺はどうなる。情報を入手したら俺はどうなる。そもそも、聞くほどのことだろうか。
「気にするな、聞いたところで、俺は何もしない。出血大サービスさ」運転手は声を上げて笑った。
気が緩んだのか、俺は次から次に質問をぶつけた。
依頼人は一体誰なんだ。椿原が駆除される理由はなんだ。椿原の言っていたビジネスとは。拳銃やナイフはどこで手に入れられるのか。
「最初の以外、答えてやるよ」運転手の口元が笑っている。
「駆除される理由は簡単だ。言ってしまえば父親の敵討ちってとこだ。ビジネスは、金貸し、女の斡旋、薬に拳銃、臓器売買もそうだな。拳銃とかは、こういったビジネスをやってる奴らから買えばいいさ」
「何故、最初のは駄目なんだ。父親の敵討ちってなんだ」
「依頼人については秘密厳守なんだよ、さすがに。で、お友達と仲良かったんだろ、あの息子の父親は。お前だって、お友達が痛い目に遭うと、ムカつくだろ。それと同じだよ。依頼人はいずれ駆除される。そういうことさ」
父親を駆除するように依頼した椿原は、誰かに依頼されて駆除された。その誰かは、椿原の父親の仲間ってことなのか。悪い顔と一緒に、ある言葉を思い出した。
『死んでもらった…なんとか一郎として…』
「なんとか一郎として、死んだ。椿原がそう言っていた」
「なんとか一郎?」
車が赤信号で止まったついでに、運転手が鞄から書類を出して渡してきた。
「きっと、それに書いてあるやつだな。息子には何らかの意図があったんだろう。まあ、地位の高い人間だったからな、父親は」
「よく分からない…」
「お前はもう少し、勉強しろ。息子は、誰かから戸籍を買って、父親の戸籍と入れ替えた。誰かっていうのは、そこに書いてある〝轟沢一郎〟ってやつだ」
轟沢一郎?聞いたこともなかった。議員にいたような気がするが、きっと違う人だろう。
「何故かは分からない。そうせざるを得ない理由があったんだろ」
依頼した人間も駆除される。だからきっと、依頼した女もそのうち駆除されるよ。動かなくなった、南条を尻目に懸け、俺はこの場から立ち去ることにした。




