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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
星詠国家ルミナス クーデター編

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355/475

王宮内にて

     ◇ ◇ ◇


 王宮の。


 中。


「…………」


 静かだ。


 外では。


 あれだけ。


 騒ぎになっていたのに。


 中へ入った途端。


 音が。


 遠くなった。


「……気味悪ぃな」


 ログが。


 小さく。


 呟く。


「あぁ」


 ロイドさんが。


 周囲へ。


 視線を走らせる。


「静かすぎる」


「…………」


 俺も。


 《砕》を握りながら。


 辺りを見る。


 壊れた。


 扉。


 砕けた。


 柱。


 壁には。


 何かが。


 ぶつかったような跡。


「ここでも戦ったんだ……」


「そのようだな」


 バルガス隊長が。


 足を止めずに。


 答える。


「だが」


「?」


「気ぃ抜くんじゃねぇぞ」


「はい」


「…………」


 先頭。


 セブランさんが。


 廊下を。


 進んでいく。


「この先を右だ」


「分かった」


「…………」


 迷いなく。


 進んでいく。


 やっぱり。


 本当に。


 王宮の中を。


 知ってるんだ。


「…………!」


 突然。


 ロイドさんが。


 手を上げる。


「止まれ」


「!」


 全員が。


 足を止める。


「どうしたんすか?」


「…………」


 ロイドさんが。


 僅かに。


 鼻を動かす。


「……血の臭いだ」


「!」


 前。


 曲がり角。


「…………」


 ロイドさんの。


 手が。


 腰の剣へ。


 伸びる。


 バルガス隊長も。


 足を止め。


 前方を。


 睨む。


「ログ」


「はい」


「アルト」


「はい」


「俺から離れるな」


「……はい」


 俺も。


 《砕》を。


 握り直す。


 ゆっくり。


 進む。


 一歩。


 また。


 一歩。


 そして。


 角を。


 曲がった。


「…………!」


 人。


 倒れてる。


「おい!」


 駆け寄ろうとした。


 その時。


「待て」


「!」


 セブランさんが。


 俺より先に。


 前へ出る。


「…………」


 倒れている。


 女の人。


 顔色が。


 悪い。


 額には。


 汗。


 呼吸も。


 浅い。


「…………?」


 セブランさんが。


 その顔を。


 覗き込む。


「この方は……」


「?」


 次の瞬間。


 目を。


 見開いた。


「ナーラ姫!?」


「姫!?」


 思わず。


 聞き返す。


「知ってる人なの!?」


「あぁ」


 セブランさんが。


 女の人の傍へ。


 膝をつく。


「ガオン王子の姉上だ」


「ガオンの!?」


「…………」


 ガオンの。


 お姉さん。


「なんでこんなところに……」


「それより様子がおかしい」


「え?」


「触るな」


「!」


 伸ばしかけた。


 俺の手を。


 セブランさんが。


 止める。


「…………」


 ナーラさんの。


 腕。


 小さな。


 傷。


 その周囲が。


 黒ずんでいる。


「これは……」


「…………?」


 セブランさんの。


 表情が。


 変わる。


「毒だ」


「毒!?」


「あぁ」


 傷口へ。


 顔を近づける。


「…………」


 じっと。


 確かめる。


「この毒……」


「分かるのか?」


 ロイドさんが。


 聞く。


「…………」


 セブランさんが。


 ゆっくり。


 顔を上げる。


「スコルネ族長の毒だ」


「族長?」


「あぁ」


「治せるのか?」


 バルガス隊長の。


 問い。


「…………」


 セブランさんが。


 ナーラさんを見る。


「俺なら治せる」


「本当!?」


「あぁ。ただ――」


 ――パシン。


「…………?」


 乾いた。


 音。


「伏せろ!!」


「!?」


 バルガス隊長の。


 怒声。


 全員が。


 身体を。


 沈める。


 次の瞬間。


 頭上を。


 何かが。


 走り抜けた。


 ――バキィッ!!


「…………!」


 振り返る。


 背後。


 石柱に。


 細長い。


 何かが。


 巻き付いている。


「……鞭?」


 その。


 先端。


 一本の。


 細い針。


「おやおや」


「…………!」


 声。


 廊下の。


 奥。


「避けられてしまいましたか」


 コツ。


 コツ。


 足音。


「…………」


 ゆっくりと。


 一人の男が。


 姿を現す。


 黒い。


 長髪。


 後ろで。


 一本の。


 三つ編み。


 眼鏡。


 細身の身体。


 見た目は。


 随分と。


 若い。


 そして。


 口元には。


 薄い笑み。


「せっかくですから」


 男が。


 鞭を。


 引き戻す。


「もう何人か、仲良く寝ていただこうと思ったのですがねぇ」


「…………」


 セブランさんが。


 ゆっくり。


 立ち上がる。


「……セト」


「おや?」


 男が。


 セブランさんを見る。


「…………」


 その目が。


 僅かに。


 見開かれた。


「これはこれは……」


 眼鏡を。


 指先で。


 押し上げる。


「懐かしい顔ですねぇ?」


「…………」


「ししし」


 口元が。


 さらに。


 歪む。


「相変わらず、生意気そうな顔だ」


「……あんたも変わってないな」


「おやおや」


 男が。


 肩を。


 竦める。


「久しぶりに会った師匠に、その態度ですか?」


「師匠!?」


 思わず。


 セブランさんを見る。


「…………」


 セブランさんは。


 何も。


 答えない。


「ししし」


 男が。


 鞭を。


 ゆっくりと。


 引き戻す。


「本当に……変わりませんねぇ、セブラン」


「…………」


 セブランさんの。


 顔から。


 いつもの。


 穏やかさが。


 消えていた。


「セト・スコルネ……」


「…………!」


 スコルネ。


「まさか……」


「あぁ」


 セブランさんが。


 低く。


 答える。


「こいつが……スコルネ族長だ」

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