王宮内にて
◇ ◇ ◇
王宮の。
中。
「…………」
静かだ。
外では。
あれだけ。
騒ぎになっていたのに。
中へ入った途端。
音が。
遠くなった。
「……気味悪ぃな」
ログが。
小さく。
呟く。
「あぁ」
ロイドさんが。
周囲へ。
視線を走らせる。
「静かすぎる」
「…………」
俺も。
《砕》を握りながら。
辺りを見る。
壊れた。
扉。
砕けた。
柱。
壁には。
何かが。
ぶつかったような跡。
「ここでも戦ったんだ……」
「そのようだな」
バルガス隊長が。
足を止めずに。
答える。
「だが」
「?」
「気ぃ抜くんじゃねぇぞ」
「はい」
「…………」
先頭。
セブランさんが。
廊下を。
進んでいく。
「この先を右だ」
「分かった」
「…………」
迷いなく。
進んでいく。
やっぱり。
本当に。
王宮の中を。
知ってるんだ。
「…………!」
突然。
ロイドさんが。
手を上げる。
「止まれ」
「!」
全員が。
足を止める。
「どうしたんすか?」
「…………」
ロイドさんが。
僅かに。
鼻を動かす。
「……血の臭いだ」
「!」
前。
曲がり角。
「…………」
ロイドさんの。
手が。
腰の剣へ。
伸びる。
バルガス隊長も。
足を止め。
前方を。
睨む。
「ログ」
「はい」
「アルト」
「はい」
「俺から離れるな」
「……はい」
俺も。
《砕》を。
握り直す。
ゆっくり。
進む。
一歩。
また。
一歩。
そして。
角を。
曲がった。
「…………!」
人。
倒れてる。
「おい!」
駆け寄ろうとした。
その時。
「待て」
「!」
セブランさんが。
俺より先に。
前へ出る。
「…………」
倒れている。
女の人。
顔色が。
悪い。
額には。
汗。
呼吸も。
浅い。
「…………?」
セブランさんが。
その顔を。
覗き込む。
「この方は……」
「?」
次の瞬間。
目を。
見開いた。
「ナーラ姫!?」
「姫!?」
思わず。
聞き返す。
「知ってる人なの!?」
「あぁ」
セブランさんが。
女の人の傍へ。
膝をつく。
「ガオン王子の姉上だ」
「ガオンの!?」
「…………」
ガオンの。
お姉さん。
「なんでこんなところに……」
「それより様子がおかしい」
「え?」
「触るな」
「!」
伸ばしかけた。
俺の手を。
セブランさんが。
止める。
「…………」
ナーラさんの。
腕。
小さな。
傷。
その周囲が。
黒ずんでいる。
「これは……」
「…………?」
セブランさんの。
表情が。
変わる。
「毒だ」
「毒!?」
「あぁ」
傷口へ。
顔を近づける。
「…………」
じっと。
確かめる。
「この毒……」
「分かるのか?」
ロイドさんが。
聞く。
「…………」
セブランさんが。
ゆっくり。
顔を上げる。
「スコルネ族長の毒だ」
「族長?」
「あぁ」
「治せるのか?」
バルガス隊長の。
問い。
「…………」
セブランさんが。
ナーラさんを見る。
「俺なら治せる」
「本当!?」
「あぁ。ただ――」
――パシン。
「…………?」
乾いた。
音。
「伏せろ!!」
「!?」
バルガス隊長の。
怒声。
全員が。
身体を。
沈める。
次の瞬間。
頭上を。
何かが。
走り抜けた。
――バキィッ!!
「…………!」
振り返る。
背後。
石柱に。
細長い。
何かが。
巻き付いている。
「……鞭?」
その。
先端。
一本の。
細い針。
「おやおや」
「…………!」
声。
廊下の。
奥。
「避けられてしまいましたか」
コツ。
コツ。
足音。
「…………」
ゆっくりと。
一人の男が。
姿を現す。
黒い。
長髪。
後ろで。
一本の。
三つ編み。
眼鏡。
細身の身体。
見た目は。
随分と。
若い。
そして。
口元には。
薄い笑み。
「せっかくですから」
男が。
鞭を。
引き戻す。
「もう何人か、仲良く寝ていただこうと思ったのですがねぇ」
「…………」
セブランさんが。
ゆっくり。
立ち上がる。
「……セト」
「おや?」
男が。
セブランさんを見る。
「…………」
その目が。
僅かに。
見開かれた。
「これはこれは……」
眼鏡を。
指先で。
押し上げる。
「懐かしい顔ですねぇ?」
「…………」
「ししし」
口元が。
さらに。
歪む。
「相変わらず、生意気そうな顔だ」
「……あんたも変わってないな」
「おやおや」
男が。
肩を。
竦める。
「久しぶりに会った師匠に、その態度ですか?」
「師匠!?」
思わず。
セブランさんを見る。
「…………」
セブランさんは。
何も。
答えない。
「ししし」
男が。
鞭を。
ゆっくりと。
引き戻す。
「本当に……変わりませんねぇ、セブラン」
「…………」
セブランさんの。
顔から。
いつもの。
穏やかさが。
消えていた。
「セト・スコルネ……」
「…………!」
スコルネ。
「まさか……」
「あぁ」
セブランさんが。
低く。
答える。
「こいつが……スコルネ族長だ」




