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エーテルコード  作者: エトコッコ
第2章:ゼクスト

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第2話「激突」


天使型は両腕のエネルギーブレードを展開し、静かに——滑るような変則的な動きでバサラヲに斬りかかる。

閃はすぐ反応し、刀で受け止める。


ガキィンッ!

火花が散る。


女型はシラユキへ迫る。

まるで生物のような4本の腕が、別々の角度から襲いかかる。


シラユキはジャベリンを高速回転させて攻撃を防ぐ。

しかし、2本の腕がジャベリンを掴み、そのまま引き剥がそうとしてきた。


敵の力は、明らかに常軌を逸していた。



レンゴクは巨人型へと突進する。

だが——


背面の巨大な“手”のようなウィングが盾となり、その突進をあっさり受け止めた。


ガシャァンッ!


「……!?」

烈は目を見開く。



鳥人型は、空中にいるツムギへ襲いかかる。

空中で回転し、尻尾のブレードを突き出した。


ツムギはギリギリのところでガンブレードで受け止める。


ガンッ!


「っ……!」

鋭い衝撃に、音の息が漏れる。



その時、各EDに通信が入った。


『皆! 住民の避難は済んだわ! 思いっきりやっちゃって!』


リオの声だ。


閃は即座に叫ぶ。


「リーダーより各機へ! エーテルスキルを使うぞ!」


4人は同時に、エーテルを集中させた。



「《火炎弾》!!」


レンゴクは炎の弾丸を巨人型に放つ。


しかし巨人型は“水の壁”を生成し、そのまま攻撃をかき消した。


「!!」

烈は驚愕する。



「《氷結》」


シラユキが冷気を放つ。


だが、女型が放った“オレンジ色の炎”により、一瞬で相殺された。


「…!!」

怜は静かに目を見開く。



「《斬撃のウィンド》!」


ツムギは風の刃を連続で放つ。

鳥人型にヒットするも、その姿は幻のように掻き消えた。


「えっ…!?」

音は驚きを隠せない。



「くらいなっ! ビリビリ!」


閃の《雷撃》が、バサラヲを伝って天使型へまっすぐ放たれる。


しかし天使型は片手を前にかざし、その軌道をねじ曲げて上空へと流した。


「…やっぱり、相手もファクターか」

閃が言う。


「ああ…! しかもあの4本腕、俺と同じ属性だ!」

烈が返す。


「同じファクターなのに戦うなんて…」

音が小さく呟く。


「さっきので、誰がどの属性かはわかったわ」

怜が淡々と告げる。



女型は標的をレンゴクに変え、炎を放つ。


「火力勝負か! 乗ってやるぜ!! 《火炎波》!!」


レンゴクの真っ赤な炎と、女型のオレンジ色の炎が正面からぶつかり合い、激しく拮抗する。



怜は狙いを巨人型に変え、《氷弾》を放つ。


《氷弾》は、氷の弾丸を撃ち出すだけでなく、着弾時に氷結効果を発生させる。

怜の狙いは、巨人型を水の障壁ごと凍らせることだった。


しかし——


《氷弾》は巨人型に届く前に軌道を変えられ、すべて上空へと反らされた。


またも天使型だった。

さらに天使型は、いつの間にかシラユキの間合いに入り込んでいた。


斬撃を受ける——その瞬間。


天使型に、“空気の衝撃波”が直撃する。


音の《衝撃のウィンド》が、天使型を横合いから吹き飛ばしていた。



巨人型は片腕でシラユキへ強烈な打撃を加える。


シラユキは瞬時に《アイスシールド》を発動させ受け止めたが、凄まじい衝撃に耐え切れず、吹き飛ばされる。


同時に巨人型は、もう片方の腕をツムギへ向ける。

手のひらのシャッターが展開し、その奥から砲身が姿を現した。


音が反応しようとした、その瞬間——


鳥人型の“不可視の精神攻撃”が音を襲う。


「い、いゃゃあぁあ!!」


「音っ!!」


烈が向かおうとするも、女型がその行く手を遮る。


怜も致命傷は避けたものの、立て直すので精一杯だった。


ツムギは完全に動きを止める。


巨人型の砲撃が放たれようとした、その瞬間——


「…準備完了」


閃の静かな声が響いた。


次の瞬間、バサラヲから1本の雷が伸び、鳥人型へ直撃。


続けて鳥人型から雷が連鎖し、天使型・女型・巨人型へと伝わっていく。


「《雷導》。 “よくばりバージョン”…ってね」


閃は、事前にスキル《蓄電》で体内にエーテルを溜め込んでいた。


そして今の《雷導》は——

“当てた相手から連鎖していく雷”の威力を、限界まで強化したものだった。


4機のDDは動きを止め——

そのまま空へと飛び立ち、去っていった。



静寂。


ファクターズはその場に立ち尽くしていた。


「……撤退してくれたか」

閃が呟く。


「ああ……」

烈が拳を握りしめる。


「怜ちゃん、大丈夫?」

音はふらつきながら怜へ駆け寄る。


「私は平気。音こそ大丈夫なの?」

怜が返す。


「うん! すぐ回復したから大丈夫だよ!」

音は笑顔を見せた。


モニター越しに見ていた職員たちも、ほっと息をつく。


4機は、それぞれオルフェへ帰還した。



その後。


イシュタール財団の基地。


4機のDDが、格納庫へ帰還する。


ハッチが開き、4人の少年少女が降りてくる。


灰銀色の髪の小柄な少年「イノ」。

天使型DD“エンプティア” ——通称”悲哀の悪魔”のファクター。


褐色肌で筋肉質、高めの黒ポニーテールの少女「アーク」。

女型DD “ドレディア” ——通称“恐怖の悪魔”のファクター。


短い白緑の髪、無口そうな青年「クリス」。

巨人型DD“セレティア” ——通称“悦楽の悪魔”のファクター。


紺色のマスクにキャメル色のテンガロンハット、茶髪の青年「サム」。

鳥人型DD“ラフティア”

——通称“憤怒の悪魔”のファクター。



「お帰りなさい」


穏やかな声が響く。


白衣の女性——ナンシー・フローレンス。

イシュタール財団の研究主任であり、ゼクストの“母”。


「ただいま。マザー・フローレンス」

イノが柔らかく笑う。


「マザー・フローレンス、アイツらなかなか手応えあったよ」

アークが言う。


「アークがそう言うの、珍しいわね」

ナンシーが微笑む。


「アフフッフフフ! ま、まさかあんな電気食らうなんて思わなかったよ! アフフフ!」

サムが、あの独特の笑い声を上げる。


「皆、怪我は無い?」

ナンシーが優しく問う。


「マザー・フローレンス、大丈夫だよ。クリスが治してくれた。ありがとね、クリス」

イノが微笑む。


「当たり前のことをしたまでだ」

クリスは淡々と返す。


「いいえ、クリス。当たり前なんて何も無いわ。いつもありがとう」

ナンシーが、柔らかな声音で告げる。


クリスは小さく頷いた。


「皆、ゆっくり休んでね。愛してるわ、“私の子供たち”」


ナンシーはそう告げ、静かに去っていった。


イシュタール財団が生んだ、DDのファクター、その名は「ゼクスト」。


彼らは、ファクターズと同じ様で、遠い存在だった。

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