↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エーテルコード  作者: エトコッコ
第2章:ゼクスト

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/82

第3話「カルマ」


イシュタール財団・医療エリア。


白く静かな部屋に、4つのベッドが並んでいた。


イノ、アーク、クリス、サム——ゼクストの4人は横たわり、目を閉じている。


今日は“カルマシール”の点検だった。


「……っ」


イノが小さく呻く。


体の奥から、じわりと痛みが這い上がる。


カルマシールとは——

暴走を抑えるための“制御インプラント”。


DDとゼクストの後頭部・首の後ろ・背骨の3箇所に埋め込まれており、これがあるからこそ、彼らはDDを“比較的”安定して操作できている。


だが定期的な調整・交換が必要で、副作用と強い苦痛が伴う。


それは、彼らが“無理やり背負わせた業”でもあった。


「もうすぐ終わるわ、イノ」


ナンシーが、イノの額にそっと手を当てる。


その優しい触れ方だけで、不思議と痛みが引いていく。


イノはわずかに微笑んだ。



治療が終わり、4人は休憩室へ移動した。


ソファに腰を下ろすと、アークがぼそりと呟く。


「……ったく、便利なのか不便なのかわかんねぇよな、アレ」


「ふふっ。でも、あれが無いとDDには乗れないしね」


イノが柔らかく笑って返す。


「アフフ……フフ、アレ、な、慣れないよね」


サムが肩をすくめる。


「本当にそうだよね。サム、体調は大丈夫?」


イノが心配そうに覗き込む。


「う、うん。アフ……フ、大丈夫だよ」


サムはぎこちなく答えた。


「……決して無理はするな」


クリスが静かに言う。


その声音はいつも淡々としているが、心配は隠しきれていない。


「いざとなったら、マジでさっさと逃げろよな」


アークまでサムの肩を叩く。


「ア……フフフ、フ、あり、ありがとう……」


仮面から見えたサムの目が、少し潤んだ気がした。



ゼクスト——彼らは元々、オルフェ研究機関で保護されていた子供たちだった。


イノはイギリス第1支部、アークはアメリカ第2支部、そして、クリスとサムはイタリア支部。


しかし、オルフェは創立者であるエドワードとヨハンの思想の対立によって崩壊してしまった。


その後、ヨハンは独自に“イシュタール財団”を設立。


その陰で、エーテルコードの多くの子供たちが拉致された。


彼らもそのうちの一部だった。


ヨハンが進めた計画——『アバタライズ実験』。


ファクターとSDを肉体レベルで接続し、SDを“もうひとつの身体”として扱うための危険な人体実験。


この実験を巡って、エドワードとヨハンは完全に決裂した。


そして、その果てに生まれたのがDDとゼクストだった。


ゼクストは唯一の成功例。


その他の被験者たちは——皆、犠牲になった。



オルフェのEDは、ファクターのエーテルを拡大しつつ、安全性最優先の“共存型”。


それに対し、イシュタールのDDは、ファクターを“Dケーブル”で直接接続し、エーテルを無理矢理増幅させ、機体を優先する“融合型”。


カルマシールも、ファクターのためではなく、“DDを安定稼働させるため”の装置だった。


ファクターを守る器と、ファクターを素材として使う器。


両者は、同じ“機体”という存在でありながら、まるで正反対だった。



そして、ゼクスト。


彼らは人体実験の果てに、強制的にエーテルファクターとして覚醒させられた存在だ。


もっとも、クリスだけは例外だった。


彼は実験以前からすでにファクターとして目覚めていた。


サムには、特に深い後遺症が残っている。


あの特徴的な笑い方も、すべて“実験の影響”。


顔を覆う仮面や、テンガロンハット、手袋——その全ては、身体に残った傷跡を隠すためのものだった。


だからこそ、イノもアークもクリスも、サムのことをいつも特に気にかけていた。


同時に、ゼクストにはもうひとつの代償があった。


Dケーブル接続のための“Dコネクター”を首の後ろに埋められ、生涯消えない痛みと共に生きる身体。


そして何より——4人は、それぞれ“感情をひとつ失った”。


イノは「悲しみ」、アークは「恐怖」、クリスは「喜び」、そして、サムは「怒り」——


失った感情が戻ることは、おそらくもうない。


それでも、彼らは互いを支え合い、前へ進もうとしていた。


ある“目的”のために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。