第1話「パーティ」
怜と音を乗せたキャリアがオルフェに帰還した頃、烈と閃たちのキャリアもすでに戻っていた。
「わたしたちが最後だったみたいだね。みんな無事でよかった」
音は、並んで停まるキャリアを眺めながら、嬉しそうに言った。
「ええ、そうね」
怜も微笑みながら答える。
事前にキャリア内の通信で、他チームも無事に任務を完了したことは把握していた。
◆
キャリアが着陸すると、バサラヲと各トルーパーがドッグへと運ばれていく。
閃たちとは、到着時間の差はあまりなかった。
キャリアのそばには、閃とみのりの姿があった。
「お疲れ様です! おふたり!」
キャリアから降りてきた怜と音に、みのりが元気いっぱいに声をかけた。
「お疲れ様、みのりちゃん!」
「お疲れ様、みのり」
それぞれが返す。
「お疲れー。みんな一足先に休んでるよ」
閃も、いつも通りのゆるい調子だった。
「わざわざ2人で待っててくれたの? ありがとう!」
音は笑顔で言う。
「閃もみのりも、疲れてるんじゃない?」
そう言った怜も、どこか嬉しそうだった。
「俺は一応リーダーだからさ。みんなの帰りを待っとくって言ったら、みのりんも付き添うって」
「そゆことです」
みのりは満面の笑みで答えた。
もっとも、その理由が“閃と少しでも一緒にいたい”という乙女心から来ていることを、怜と音が知る由はない。
「ま、詳しい話は後で」
閃はそう言い、4人は司令室へと向かった。
◆
司令室——
「皆、本当によくやってくれた」
モニター越しに、エドワードが言った。
「訓練生諸君の活躍も、しっかりと報告を受けている」
訓練生は、少し照れたような表情になる。
「そして、クレアくん。現場での判断とサポート、見事だった」
「ありがとうございますっ!」
クレアは背筋を伸ばして、はっきりと答えた。
「私は……いや、オルフェは、君たちを心から誇りに思う」
エドワードからの、最大級の賛辞だった。
その場にいたトーマス、牧、カリンも拍手を送る。
トーマスは、心なしか目を潤ませていた。
通信が終わると、トーマスが口を開いた。
「みんな、さすがに今日は疲れてるかな?もし良ければ……パーティでもしようかと思うんだが」
「パパパ、パーティ!?」
最も疲労の色が濃かった光井が、真っ先に反応した。
「今夜でも、明日でもいいけどね」
トーマスが言う。
「いやっ……!!みんな、どう!?」
光井は周囲を見渡した。
「ミチ、アンタさっきまで一番ぶっ倒れそうだったじゃん」
アンジュがツッコミを入れ、室内は笑いに包まれる。
その様子を見た閃が、確認するように言った。
「……今晩でもいい人ー?」
それぞれが反応し、パーティはその日の夜に決まった。
◆
パーティは食堂で行われた。
そこには普段の食堂では見かけないような料理や飲み物、色とりどりのお菓子がずらりと並んでいる。
「さぁ、堅苦しいのはなしだ。みんな、存分に飲み食いしてくれ!」
トーマスが声を上げた。
「GGピザ!!LLサイズ!!」
光井が目を輝かせる。
「寿司もあるぞ!しかも天然物だ!」
烈も驚いたように言った。
現代では、食材の約7割が人工物だ。
動物資源の減少と保護法の影響により、肉や魚も養殖の人工肉が主流になっている。
天然のものが使われるのは、お祝いなど特別な場だけだった。
「やばっ!今のうちに食べとこ!」
アンジュも“天然”の寿司を皿に盛る。
「アンジュ、サーモンばっかり!」
クレアは腹を抱えて笑っていた。
◆
「GGピザが大量に……!これは夢か……!?」
光井は両手にピザを持ち、頬張っている。
「光井くん!よかったね!」
音が笑顔で声をかけた。
(両手にGGピザ……!さらに羽野に話しかけられた……!俺、ここでどれだけ運使ってんだ……!!)
光井は、今にも天に昇りそうな気分だった。
◆
甘党の怜は、テーブルに並ぶ様々なケーキを次々と口に運んでいた。
「れーにゃん、主食の前におやつ?」
ニヤニヤしながら、何かしらのステーキを頬張りながら閃が近づいてくる。
「別腹だもん。それ、何のお肉?」
怜は尋ねた。
「“ムラサキウロコワニ”らしいよ」
「ワニ……?あの、ワニ?」
「そのワニ」
「……うーん。ちょっと、もらっていい?」
興味を示す怜。
「あーんして?」
閃は一口サイズに切り、フォークで怜の口元へ運ぶ。
怜は素直に口を開いた
——その瞬間
横から突然現れたみのりが、そのステーキをパクッと食べた。
一瞬きょとんとする閃と怜。
次の瞬間、2人は吹き出し、みのりも笑っていた。
◆
「なあ、グンジン」
烈が東に声をかけた。
「あぁ、新井くん」
東は焼きそばを山盛りにしている。
烈は、先ほどの戦場での出来事を東に話した。
すると——
東は持っていた皿を、ぽろりと落とした。
「うぉっ!!」
地面に落ちる前に、烈が素早くキャッチする。
東は、カタカタと震えていた。
「お、おい……グンジン……?」
烈が覗き込む。
「……会ったのですか……?戦場で……?……榊さんと……?」
今まで見たことのない東の動揺ぶりに、烈は少し戸惑った。
「まぁ……一応、グンジンには、伝えとこうと思って——」
「握手したんですかっ!? どっちの手で!?」
食堂中に、東の声が響き渡った。
全員が一斉に振り返る。
(あー……東くん、ついに烈から聞いたのね)
唯一その理由を知るカリンは、静かに微笑んでいた。




