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エーテルコード  作者: エトコッコ
第7章:宿命

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第2話「真実」


ヨハンは、モニター越しにゼクストと話していた。


『いよいよだ。待ち望んでいた、“D-coreの真の完成”まで』


ヨハンは、心底楽しそうに語る。


D-coreの真の完成——


D-coreは、現時点でもすでに完成している。


しかし、ヨハンが求める“真の完成形”は、その先にあった。


D-coreとエーテルの完全融合。


つまり、ファクターのエーテルを「喰らう」ことなく、D-coreそのものにエーテルを宿した状態。


さらに、DD自体がエーテルを内包し、ファクターを必要とせずに稼働すること。


DDという“器”に、エーテルという“エネルギー”、そしてゼクストの“人格”を移し、この世に「悪魔」を生み出す計画。


それこそが、アバタライズ実験の到達点だった。


言い換えれば、今のDDは、ヨハンにとってまだ未完成。


だが、徐々に“自我”を獲得しつつあった。


完成まで、あとわずか。



アバタライズ実験の“真の目的”は、ゼクストはDDに搭乗する以前から聞かされていた。


そして、ゼクストが戦い続けてきた理由。


かつて、イノが語っていた戦う目的。


D-coreの自我形成には、その性質上、戦いが不可欠だった。


そして——


D-coreが真の完成に至った時、ゼクストはDDに搭乗する必要がなくなる。


つまり、戦う理由が消える。


ヨハンは言っていた。


“D-coreさえ完成すれば、もう戦う必要はない。

その後は自由に、そして一生困らないだけの支援と安全を保証しよう”


ゼクストが戦ってきた理由、それは——

“戦いから逃れるための戦い”。


ファクターズの、“守るための戦い”とは、根本から異なるものだった。



「いよいよだね……」


イノは、どこか嬉しそうに呟いた。


「そうだな」


アーク、そしてクリスは冷静だった。


「ボ、ボクたち……やっと……!!アフフ」


サムは、イノと同じく喜びを隠しきれずにいた。


4人には、ひとつの約束があった。


——いつか、戦いが終わったら、みんなで一緒に暮らそう。


ナンシーはそんな彼らのために、カリフォルニアの自然保護地区にある別荘を譲るつもりだと話していた。


イノとサムは、その話題で盛り上がっていた。


だが、クリスは感じ取っていた。


“自由”とは名ばかり。


自分たちのような存在は、これから先も、監視対象であり続けること。


そして、カルマシールの存在。


その影響で、そもそも長く生きられない可能性が高いこと。


イノもサムも、きっとそれを理解している。


特に、サムは。


——それでも


戦わずに、限られた時間を、4人で穏やかに過ごせるなら——それが“幸せ”なのかもしれない。


「喜び」という感情を失ったクリスは、理屈として、そう結論づけた。


そして、アーク。


ファクターズとの数度の接触を経て、彼女の心には迷いが生じていた。


薄々、感じていた。


最後の“敵”が、誰なのかを。



『ここまで来られたのは、君たちのおかげ!しかも、予想より遥かに早い!』


ヨハンは、相変わらず浮かれていた。


『……で、ほぼ間違いなく

次の戦いが最後になる』


急に、口調が冷たくなる。


『……おそらく、もう察しているだろうが』


「……ファクターズ、ですよね」


イノは俯きながら答えた。


『……その通り。君たちとファクターズのことを思うと心苦しいが……こればかりは変えられん』


(嘘つけ、ジジイ)


アークは内心で毒づく。


「理由を、聞いてもいいですか?」


イノは、まっすぐモニターを見据えて言った。


『ファクター同士の戦いが、D-coreの成長速度を爆発的に高めていた。要は“経験値”だ』


『天華の連中では、それが全く足りなかった。つまり、時間と体力の無駄』


冷静そのものの口調だった。


「……わかりました」


イノは、静かに答えた。


ヨハンの言葉は事実だ。


そして、その主義主張は一貫している。


交流会も、戦いも、すべて自分たちの選択だった。


何も、言えない。


イノはそう思った。



オルフェ研究機関・司令室。


深夜、室内にはエドワードひとり。


すると、モニターに“GIGAS”の文字が浮かび上がる。


ヨハンだった。


『こんにちは、エド。あ、そっちはこんばんは、かな?』


「……」


『無視するなよ。さて、本題に入ろう。アバタライズ実験は間もなく完成する』


『“ファクターズの死”という過程を経て、な』


「やはり……DDに意思を持たせ、新たな生物を——

いや、“悪魔”を生み出すつもりか」


エドワードは、冷静だった。


『まあ、私のやろうとしてることは昔から変わっちゃいない』


「“機械と人間の融合”など……狂っている」


『それは否定しない。ただ……お前がそれを言うか?』


「……どういう意味だ」


『確かに私は“悪魔”を生み出そうとしている。だが、お前はなんだ?“神”を生み出そうとしているじゃないか』


「……やはり、お前……」


『ごく一部しか知らない“超極秘プロジェクト”を、

なぜ私が知っているのか、不思議かい?』


ギガスは、オーキュラムを当然のようにハッキングできる性能を持つ。


だが、それでもオーキュラムの全権を掌握できるわけではない。


エドワードは、確かに困惑していた。


『ヒントをやろう。最初に言っただろ?“ギガスには私の頭脳が入っている”と……』


エドワードは、息を呑んだ。


「……!?まさか……!!」


『ハイ!正解は〜?“本当に脳みそが入ってる”でした〜!!』


比喩ではない。


ヨハンは、自身の脳を電子化し、ギガスへ移植していた。


つまり——ギガスそのものが、ヨハンだった。


『肉体なんて、とっくに捨ててる。私は電子の世界で生き続ける』


『だから、お前たちの“監視カメラ”も、私にかかれば覗き穴同然ってわけ♪』


「……なるほどな。実に、お前らしい」


エドワードは言った。


『まあ、これもアバタライズ実験の一環さ。“機械と人間の融合”!』


「……」


『とりあえず、またゼクストは来る。今度は“敵”として、な!』


その言葉を最後に、モニターから“GIGAS”の文字は消えた。


エドワードは、無言のまま椅子に座り込み、しばらく動けずにいた。

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