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エーテルコード  作者: エトコッコ
第6章:律動

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第6話「魔獣」


シズオカ上空——


キャリアの中には、閃、訓練生、そしてオペレーターのクレアが乗り込んでいた。


この一帯では、数日前に小規模な戦闘が発生している。


その余波を受けたのが、これから向かう街だった。


現在、街は全面停電。


それに加え、派遣された救助隊との通信も途絶している。


さらに、救援物資を積載していた災害救護任務用SD“ヒキャク”も、同じく反応が消失していた。


つまり、完全なインフラ停止。


現代社会において、ほぼすべての動力は電力に依存している。


各街には必ず最低でも一基の電力施設が設置され、無線レーザー送電によって、インフラのすべてを賄っていた。


構造は全国共通で三段構えとなっている。


・第一電源

・第二電源

・第三電源


たとえひとつが落ちても、即座に別の電源が肩代わりする。


それが現代において、当たり前であり、街全体が沈黙するなど、よほどの事態でなければ起こり得ない。


クレアは、現地から送られてきたデータを確認しながら呟いた。


「道路は寸断されていない。…それなのに、誰も辿り着けていないわ」


隣で映像を覗き込んでいた閃も、静かに口を開いた。


「街の被害も、思ったよりもずっと軽いね」


その背後から、みのりが顔を出しぽつりと呟いた。


「……やっぱ、残党の仕業……?」


言葉にできない緊張が広がる。


やがてキャリアは、避難施設付近へと着陸した。



避難施設は、多くの人々で溢れていた。


だが、異様なほど静かだった。


空調は停止し、澱んだ空気が漂っている。


職員の話によると、入院していた患者に加え、戦闘で負傷した住民が多数運び込まれたため、残っていた予備バッテリーのほとんどを病院へ回しているという。


状況は深刻だった。


クレアは即座に判断を下す。


「二班に分かれるわ」


・A班:閃、東 —— 電力施設へ

・B班:訓練生3名とクレア —— 救助隊および物資の捜索へ


指示と同時に、全員が動き出した。



A班の2人は、キャリアから各自のEDを降ろす。


すると、それを見た避難施設の子供たちが一斉に駆け寄ってきた。


「うおぉ!!バサラヲだー!!」

「かっこいいー!!」


歓声とともにスマカを構える人々をコクピット越しに見た閃は、思わず口元が緩んだ。


(今回は使わないと思ってたけど……一応持ってきといてよかった)


人々の笑顔を見て、そう思った。



電力施設に到着したバサラヲとトルーパー。


建物外部には、目立った損傷は見当たらなかった。


「外観は無傷ですね」


東が言う。


閃はバサラヲに格納されていたドローンを飛ばし、外部から内部をスキャンさせた。


生体反応は無し。


確認後、2人はコクピットを降り、地域職員から預かっていたパスコードを認証して施設内へ入った。



1階——

第三電源区画。


機械そのものに外傷はない。


ドローンの解析映像を見て、東が言った。


「……配線が数本、断線しています」


「整備不良かぁ〜?」


閃がやや呆れ気味に言った。


「これくらいなら、僕で直せます」


「さっすがグンジン! 頼りになるぅ」


閃は軽く笑った。



地下1階——

第二電源。


非常階段を下り、少し歩いた先にあるゲートを開いた瞬間、空気が変わった。


視界いっぱいに広がる、夥しいクモの巣。


「……ヴェッ」


閃は思わず声が漏れた。


「まるでホラーハウスだな……」


整備不良どころではない。


施設そのものが、長期間管理されていなかった痕跡だった。


「……おかしいですね。こんなこと、普通は……」


東も眉をひそめる。


スキャンの結果、損傷は中程度以上。


専門家でなければ修理は難しい状態だった。


そして——

地下2階、第一電源。


2人はゲートの前に立つ。


「……もう嫌な予感しかしない」


閃が半眼で言う。


「フォームじゃないだけ、まだよかったですよね」


東が苦笑する。


今回はEDを使う想定ではないため、2人はオルフェ製のジャージ姿だった。


「…マジそれな」


深呼吸し、ゲートを開く。



真っ暗な空間。


完全な無電源状態。


——それ以上に、異様な気配。


「……念のため、グンジンはゲート付近で待機」


閃の声が、低くなる。


「……了解」


ドローンのライトが点灯した瞬間。


先程とは比較にならない量のクモの巣。


そして、明らかに異常な機械損傷。


閃は、確信する。


「……っ! 魔獣だ!!」


直後、天井から“何か”が落ちた。


黄色い外殻。

紫色の複眼。

全長5メートルの巨大で禍々しいクモ。


魔獣“エレイーター”。


閃はとっさに叫んだ。


「グンジン!! 逃げろ!!」


だが、初めて目の当たりにする魔獣を前に、東の身体は完全に硬直していた。


そんな2人にエレイーターが飛びかかる。


閃は即座に《雷衝》を放った。


一撃は魔獣へ。

——もう一撃は、東へ。


東に放った方は威力は抑えたが、階段付近まで吹き飛ばされる。


一方、エレイーターは大きく吹き飛ばされ奥の壁に叩きつけられた。


「こいつは俺がやる!! 修理を頼む!!」


叫ぶと同時に、閃はゲートをすぐに閉じた。


「上矢くん!!」


東は叫ぶが、すぐに歯を食いしばり、立ち上がる。


(……今は、自分にできることを全力で…やるのみ!!)


そう心に決め、彼は1階へ向かって駆け上がった。

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