第8話「交流会④」
交流会は、和やかな空気のまま続いていた。
アークが、怜に声をかける。
「なぁ、オメーのそれ…なんだ?」
怜が抱えていた、もちのすけのぬいぐるみを指さしている。
「……もちのすけ」
怜は少し俯き、照れたように答えた。
「……オメー、もしかしてそれ、好きなのか?」
アークが聞く。
怜は、こくりと頷いた。
次の瞬間——
アークが吹き出した。
怜の顔は、一気に真っ赤になる。
「もぉアーク、失礼だよ?」
イノがすぐにたしなめる。
「いや、だってよ!い、意外すぎて……!!」
アークは息を整えながら言った。
「可愛いね、もちのすけ。すごく柔らかそう」
イノは、にこやかに伶へ声をかける。
「……触ってみる?」
怜は、そっとぬいぐるみを差し出した。
「えっ!いいの?触りたい!」
イノは指先でもちのすけをつつく。
「わぁ…柔らかい…」
「あっ……!ボ、ボクも触っていい?」
サムも恐る恐る尋ねた。
「ええ、もちろん」
怜が答える。
「アフフ…。か、可愛いね…」
イノもサムも、すっかりもちのすけに夢中だ。
「アークも、触ってみなよ」
イノが笑顔で言う。
アークは少し迷ってから、そっと指でつついた。
「……か、可愛いじゃねーか……」
小さく、照れた声だった。
「クリスは、も、もちのすけ知ってる? アフフ」
サムが聞く。
「もちろんだ。日本の有名なカルチャーだからな」
クリスは淡々と答える。
「……推し、とかいる?」
怜が、少し勇気を出して尋ねた。
「……推しかどうかは分からんが、個人的には“もちお”が好きだ」
もちお——
もちのすけの仲間で、海苔眉が特徴的な角餅だ。
「……もちお、いいね」
怜は、ほっとしたように微笑んだ。
◆
「キミは?」
今度は、イノが音に尋ねる。
「あっ!わたしは……これ」
音はポケットからスマカを取り出した。
「写真を撮るのが好きなの」
「よかったら、見てもいい?」
イノが笑顔で言う。
「……変な写真ばっかりだから、遠慮なく笑ってね……」
少し照れながら、音は写真を見せ始めた。
変わった形の雲。ヒビ割れたグラス。折れた木。静かな廃墟。
どれも、不思議と目を引く写真だった。
「アフフッ!あ、あっ……おかしくて笑ったんじゃないよ! げ、芸術的で、すごく素敵だよ!アフ!」
音の顔が、ぱっと明るくなった。
「ぅえ…!?本当?嬉しい!」
(可愛い…)
サムは、心の中で思った。
「うん!ボクもそう思うよ」
イノも頷く。
クリスも、静かに肯定した。
「ありがとう!」
音は、嬉しそうに笑う。
「サムくんの、そのマスクと帽子も、すっごくオシャレだよ!」
「あっ……!ありがとう!アフフフ!」
サムは照れながら笑った。
◆
音の様子を見て、烈がハッとしてスマカを取り出す。
「本当はテツ連れてきたかったんだけどよぉー、寝ててさ。でも写真なら山ほどあるぜ!」
「テツ?」
アークが聞く。
「おう!俺の愛犬だ!」
烈は、テツの写真を次々に見せた。
「お!強そうだな!」
アークが笑う。
「うん!それにカッコいいね!」
イノも続ける。
「……聡明な顔つきだな」
クリスも反応した。
「な、なんとなく……アフフ!烈くんに似てる気がするよ……!」
サムが言う。
「だろ!?だろ!?」
烈は、心底嬉しそうだった。
こうして、ファクターズとゼクストの交流会は、しばらく和やかに続いた。
◆
一方、監視モニターを見ていたリオが、笑顔で言う。
「完全に打ち解けてますね」
「ええ」
松永も、穏やかに頷いた。
しかし、その光景を見つめるエドワードの胸中は複雑だった。
(本来なら、この子たちが争う必要など無かったはずだ…。ヨハンめ…)
◆
ゼクストは、DDの前に立っていた。
「今日は本当に楽しかったよ!ありがとう!」
イノは満面の笑みだ。
「アフフ! ま、また会いたいな!」
サムも続く。
「こちらこそ!サムの言う通り、また会いたいね!」
閃も、柔らかく笑った。
「ま、悪くなかったぜ」
アークも、無意識に笑顔になっている。
「今度はテツ、連れてくっからな!」
烈が言う。
怜とクリスは、静かに頷いた。
「みんな、気をつけてね!」
音が、笑顔で手を振る。
(可愛い…)
サムは、また心の中で思った。
ゼクストはDDに搭乗し、空へと帰っていく。
こうして、交流会は幕を閉じた。
◆
上空を進むDDの中。
「ファクターズ、やっぱりいい人たちだったね!」
イノがにこやかに言った。
「アフフ!うん!ま、また交流会したいね!つ、次はボクらの大事な物も持ってきてさ!」
サムも元気よく答えた。
アークとクリスは無言だったが、同じ気持ちだった。
(第8章 完)




