第7話「交流会③」
ファクターズとゼクストは、地下2階にある談話室へと移動していた。
監視モニター越しにオルフェの職員たちが様子を見守っている。
互いに向かい合う。
最初に口を開いたのは、閃だった。
「とりあえず、ようこそオルフェへ。まずは簡単に自己紹介からいこっか」
「俺は上矢 閃。ファクターズのリーダーで、バサラヲのファクター。よろしくね」
いつも通りの、肩の力が抜けた調子だった。
「……白木 怜。一応、ファクターズのサブリーダー。シラユキのファクター」
怜も淡々と続く。
「俺は新井 烈。ファクターズで、レンゴクのファクターやってる」
烈も短く名乗った。
「あっ! わ、わたしは、音。羽野 音です。ファ、ファクターです。えっと、ツムギです」
音は少し慌てながら自己紹介を終えた。
◆
今度はゼクスト側だ。
「改めまして、イノと言います。本日はよろしくお願いします」
イノは丁寧にお辞儀をする。
「……オレはアーク」
ぶっきらぼうな声。
「……クリスだ」
最低限の言葉だけ。
「ああ……ボ、ボクはサム。アフフ! あっ、この笑いは勝手に出ちゃうだけだから、き、気にしないで!」
サムは慌てて補足した。
自己紹介が一通り終わった。
◆
閃はにこやかに言った。
「ま、堅苦しいのはナシで。ゆっくりしてってよ」
「ありがとう、閃。そうさせてもらうよ」
イノも笑顔で返す。
「何か飲む? 色々あるけど」
そう言って、閃は冷蔵庫を覗いた。
「コーラ、グァバ、レモン水、コーヒー、ミルク、お茶……」
「じゃあオレはコーラ」
アークが即答する。
「ありがとう。なら、僕はミルクをもらっていいかな?」
イノが続けた。
「……俺は遠慮しておく」
クリスはそう答える。
「あっ! アフ!ボ、ボク、グァバ飲んでみたい!」
「おっけー」
閃がドリンクを取り出し始めた、その時。
「あ! 閃くん、手伝う!」
音が駆け寄ってくる。
「音、ありがと」
すると怜も歩み寄った。
「……私たちが準備する」
「あ、ほんと? じゃあお願い」
閃は2人に任せることにした。
人見知り気味な2人には、少し距離を置く時間も必要だと感じたからだ。
◆
その間に、アークが烈へ声をかける。
「オメー、炎のやつか?」
「おう。俺が炎のやつだ」
烈が答えると、アークは手のひらにオレンジ色の炎を灯し、不敵に笑った。
「どっちが強ぇかな?」
烈も負けじと、真っ赤な炎を灯す。
それを見たイノが目を輝かせた。
「すごい! 同じ炎のファクターなのに、色が違う!」
確かに、属性は同じでも性質は微妙に異なっていた。
「……アーク。やめないか」
クリスが静かに制す。
「ジョーダンだって」
アークはすぐに炎を消し、烈もそれに倣った。
そこへ閃が戻ってくる。
「やっぱさ、エーテル属性と性格って関係あるのかな?」
「それ、どーいう意味だよ」
アークがツッコむ。
「熱くなりやすいってこと」
その一言に、イノとサムが同時に吹き出した。
「確かにー!」
イノは笑いながら頷く。
(……的を射ているな)
クリスは内心、そう思った。
◆
「ねぇ、ところでさ!閃が持ってるの、BW SPでしょ?」
イノが目を輝かせて尋ねる。
「おっ! もしかしてイノもBWやる?」
閃のアホ毛がハート型になった。
「うん! でも、僕が持ってるのはBW2なんだ」
「BW2?レトロゲーム好き?」
「大好きだよ! 毎日“マッシュチーム3”してる」
「3!? あの最高傑作って言われてる3!? あれはいつやっても面白い!!」
ニャンダルフリークの閃は、完全にスイッチが入っていた。
「閃は、どのシリーズが好き?」
「基本的に全部だけど、特に“エルフの伝承”と“もふもふの村”かな」
「どっちもすごく人気だよね。でも、どっちもやったことなくて」
「エルフの伝承は難しそうだけど、世界観が好きで見てるだけでも楽しい」
「確かに、ちょっと上級者向けだよな〜。エルフの伝承ってさ——」
2人は完全にニャンダルトークで盛り上がっていた。
◆
一方、クリスは烈の持っているコミックが気になっていた。
それに気づいたサムが声をかける。
「アフフ……クリス、烈くんの本、気になってる?」
クリスは静かに頷いた。
「ん? ああ、これか?」
烈はそのままコミックを手渡す。
「すまない」
クリスは礼を言い、表紙を眺める。
アークとサムも覗き込むが、ローカル文字で書かれているため読めなかった。
「……空手道一直線」
クリスが呟く。
「おっ、ローカル文字読めんのか。スゲーな」
烈は素直に感心した。
「ジャンルは?」
「格闘マンガだな」
「へぇークリスにも知らねーもんあんだな」
「ク、クリスは、あ、ありとあらゆるジャンルの本を読むんだ! 日本のコ、コミックもいっぱい!」
サムは烈に言った。
「へぇー! よかったらそれやるぜ。俺はまた買えばいいし」
「気持ちはありがたいが、自分で購入する」
クリスは丁重に断った。
◆
そこへ、怜と音がドリンクを持って戻ってきた。
「どうもありがとう!」
「サンキュー」
「アフフ! ああありがとう!」
それぞれが礼を言い、ドリンクを受け取る。
音は、クリスに声をかけた。
「あの……もし、飲みたくなったら、いつでも言ってくださいね」
「俺は水のファクターだ。喉が渇くことはない」
淡々とした返答。
「だが、気持ちは受け取っておく。ありがとう」
「……はい」
音は少し照れながら、ぺこりと頭を下げた。




