第3話「救出①」
ヨハンとの一件から、数日経過した頃。
日本軍より救援要請が届いた。
ここ最近、全国的に天華連盟の侵略は激しさを増しており、それに伴う被害報告も後を絶たなかった。
怜と音は別の支援要請に向かっており、今回の任務に向かったのは、閃と烈の2人だった。
2人はキャリアに乗り、目的地へと向かっていた。
救援要請が入ったのは夕方頃。
場所は、ホッカイドウの森林地帯。
任務内容は、有人機2機と無人機3機の救出。
加えて“ツキカゲ”の夜間特化型、“ツキカゲ・夜叉”で構成された部隊、「影忍隊」との合流も予定されていた。
目的地に到着する頃には、すでに日が落ち、周囲は闇に包まれていた。
「……影忍隊から、まだ通信はないな」
閃が呟く。
「天華の連中を追撃してんのかもな」
烈が答えた。
「それより先に……ハートを見つけないと」
影忍隊は先に合流地点にいるはずだが、有人機に搭乗していたハートの救出を最優先すべきだと、閃は判断した。
森林地帯、そして夜間——
視界は悪い。
閃はキャリアに搭載されていたオラクルドローンを射出し、索敵を開始した。
すると、複数のSD反応を捕捉。
ライトが点灯したキャリアを、その地点へ向かわせ、閃と烈はそれぞれのEDに乗り込み降下する。
そこにあったのは――
完全に破壊された、ブロックスが3機。
2人はドローンと共に周囲の探索を続ける。
少し離れた位置で、大破したザンテツと、中破したザンテツを発見した。
この2機は、有人機だ。
ドローンが接近し、生体反応をチェックする。
大破した機体からの反応は、完全に途絶えていた。
中破した機体からは、微弱な生命反応を検知。
閃はバサラヲから降り、すぐさま中破したザンテツへ向かった。
外側から見ても、コクピット周辺に致命的な損傷はない。
閃は、外装に備え付けられた緊急開閉ボタンを押した。
ハッチが開き、中には意識を失ったハートの姿があった。
目立った外傷はない。
ハートをコクピットから抱え出し、地面に横たえると胸元に手を置き、《雷衝》を使用した。
威力を調整すれば、心臓マッサージとして応用できる。
ドローンのモニターに映し出された生命反応が、徐々に回復していく。
その間、烈のレンゴクはドローンと連携し、周囲の警戒を続けていた。
やがて、ハートが意識を取り戻した。
「……大丈夫ですか?」
閃が声をかける。
「………ファクターズか。助かったよ………」
ハートはそう答えた。
「他の連中は……?」
一瞬の間を置き、閃は冷静に答える。
「……生きていたのは、あなただけです」
——その時
ドローンには反応が出ていなかったが、レンゴクのレーダーが、ごく僅かな揺らぎを捉えた。
烈はそれを見逃さず、即座にその方向へキャノンを向ける。
すると通信が入った。
『ま、待ってくれ!こちら影忍隊だ!』
闇の中から、ツキカゲ・夜叉がゆっくりと姿を現した。
「あ、あぁ……」
烈はキャノンを収める。
(……なんだよ、驚かせやがって)
『合流が遅れてすまなかった。天華の追撃に当たっていた。敵機は全て撃墜した』
「……他の隊員は?」
閃が尋ねる。
『私が先に合流のため戻った。残りは、いずれ戻ってくる』
閃が背を向けたまま、その通信を聞いていた。
すると、先ほど救出したハートが静かに手首に装着されたリストガンを、閃に向けていた。
引き金が引かれかけたその瞬間——
《雷撃》が、ハートの全身を貫いた。
閃は背を向けたまま、指先だけをハートへ向けていた。
そして烈に言う。
「烈……やっぱり、コイツら全員“敵”だ」
「……見てーだな」
烈も応じ、クローを展開する。
『……チッ』
ツキカゲ・夜叉のハートは舌打ちすると、再び闇へと姿を消した。
閃は高速でバサラヲに飛び乗り、即座に武器を構える。
すでに2人の周囲には、4機のツキカゲ・夜叉が取り囲んでいた。




