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エーテルコード  作者: エトコッコ
第4章:分岐

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第7話「皆で」


完全同調とは——

ファクターとEDの同調率が100%に達し、さらにその状態を維持したときにのみ発生する現象。


発動中、EDの性能は通常時の5倍近くに跳ね上がり、ファクターのエーテルスキルも大幅に強化される。


しかし、これはあくまで理論上の話。


今まで、この領域に到達したものは誰もいなかった。


そんな中、レギオンΩの拳を片手で受け止めていたのは、バサラヲ。


その全身からは眩ゆい光の粒子が放出されていた。


通常、性質変換したエーテル——エーテルスキル以外の、純度100%のエーテルの流れは、ファクターでないと肉眼で捉えることは不可能とされている。


しかし、その光は皆の目にハッキリと映っていた。


リーアは目を丸くし、思わず呟く。


「なにこれ……。ウチの知らない新システム?」


その瞬間、接触回線が開いた。


『バサラヲは何も変わっちゃいない。変わったのは“俺自身”さ』


閃の声だった。


その姿は、バサラヲと同じ光の粒子を纏い、髪は荒々しく逆立っていた。


リーアが反応するより早く、バサラヲは掴んだ拳ごとレギオンΩを上空へ放り投げた。


リーアは一瞬状況を理解できなかったが、空中で体勢を立て直す。


だが――


目の前には、すでにバサラヲがいた。


その手のひらが、レギオンΩの胸部にそっと触れる。


『喰らうかい? “静電気”』


次の瞬間、信じがたい電撃が装甲を貫いた。


エーテル攻撃を無効化するはずの装甲が、一瞬で突破されたのだ。


リーアは意識が飛びかけるも、なんとか耐えた。


そして、すぐに撤退行動に移った。


ふと、かつてチャンに言われた言葉を思い出す。


『強化兵とは違い、ファクター共の数値は当てにならない』


「……もう、静電気とは呼べないな……」


リーアは呟いた。



オルフェ研究機関・医療エリア。


閃はゆっくりと目を開けた。


「……医務室……」


完全同調の発動後、リーアを撃退した直後に気力が尽き、そのまま意識を失っていた。


傍らには、怜がもちのすけのぬいぐるみを枕にして、座ったまま眠っていた。


おそらく、ずっと側にいてくれたのだろう。


その寝顔があまりに気持ちよさそうで、閃は起こさなかった。


しばらくすると、ベッド横のモニターから声がした。


烈だった。


『おう、起きてんな』


「うん。さっき目覚めた」


『今、話せるか?あとでもいいけど』


「いや、大丈夫」


少しして烈が医務室に入ってくる。


ドアの音で怜がガバッと起きた。


「……起きてたんだ」


怜は眠そうに目を擦る。


「うん。怜は大丈夫?」


閃が尋ねる。


「私は平気。訓練生も……全員無事」


怜は小さく微笑んで答えた。


閃も安心したように笑う。


烈は申し訳なさそうに頭を下げた。


「本当にすまねぇ。皆に迷惑かけちまった」


怜は気を遣って席を外そうとしたが、閃がそっと手で制した。


そして烈に聞く。


「美晴さん……どうだった?」


烈はまっすぐに閃を見て、静かに答える。


「穏やかだったよ」


その言葉だけで十分だった。


閃は胸の奥がふっと軽くなるのを感じた。


「そっか……良かった」


これ以上、言葉はいらなかった。


「今度、皆で里帰りしよう。ファクターズ全員でさ」


閃は笑顔で言った。


「ああ!美晴さんも結菜さんもチビたちも、皆会いたがってたからな!」


烈も少年のような笑顔で答えた。


「私も……会いたい」


怜も柔らかく笑った。


烈は閃の肩を軽く叩く。


「じゃあ、回復待ってるぜ」


そう言って医務室を後にした。


怜は少し照れながら、ぬいぐるみを差し出す。


「これ……未使用の新品だからっ……!」


さっき思いっきり使ってなかった?と内心ツッコミを入れつつ「くれるの?」と聞いた。


怜は小さく頷く。


「ありがとう。これ……怜だと思って抱きしめとく」


閃は少しイタズラな笑みを浮かべて怜に言った。


「……あっ、あほ!!」


怜は顔を真っ赤にし、逃げるように部屋を出ていった。



医務室に残った閃は、そっともちのすけを抱きしめた。


その頬には、静かに涙が流れていた。


(第4章 完)

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