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エーテルコード  作者: エトコッコ
第4章:分岐

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第2話「狂戦士」


閃と音の前に、メルのレギオンΩが静かに降り立つ。


その時、バサラヲに日本軍から通信が入った。


『ご協力感謝します。ファクターズの皆さん』


「後はこちらで対処します」


閃は落ち着いた声で答えた。


『了解しました。ご武運を』


通信が切れると同時に、残りSD部隊は撤退を開始した。


「アンタも帰っていいよ」


メルは後方にいたγクラスに、ぞんざいに声をかける。


「えっ?了解です! 退却します!」


γクラスは慌てて後退し、後方に隠していた天華のキャリアに乗り込むと、一目散に離脱していった。


(あれでγクラスなんだもんねぇ……。ま、最初からアテにしてないけど)


メルは小さくため息をつき、改めて2機へと視線を向ける。


一瞬の静寂——


次の瞬間、3機は同時に動き出す。


閃は《化身鳴かみなり》、音は《シルフィード》を展開。


それぞれのEDにエーテルを纏わせ、機体性能を一時的に上昇させる強化スキル。


さらにエーテル武器も強化され、常時エーテル属性が付与される。


だが、レギオンΩには耐エーテル用の特殊装甲が使用されている。


純粋なエーテル攻撃をほぼ無効化するほどの性能だ。


特に閃は、前回の戦闘でそれを痛感していた。


機体強化+短期決戦——

そのための機体強化だった。


バサラヲが一気に加速し、レギオンΩの背後へ回り込む。


しかしメルは、ツムギ目がけて一直線に突進する。


——が、急にレギオンΩの動きが鈍くなった。


「お?」


メルが眉をひそめる。


バサラヲから伸びていたのは、《電縛》。


電気を縄のように伸ばし、レギオンΩを拘束していた。


その隙に、音はスキルを発動した。


「《衝撃のウィンド》!」


狙いはレギオンΩではない。


先ほどの戦闘で破壊されたSDの残骸。


風圧が残骸や瓦礫の破片を弾丸のように吹き飛ばし、レギオンΩを襲う。


「うわ、うざっ……!!」


メルは力づくで《電縛》を引きちぎり、迫りくる破片の嵐をハードクラッシャーで叩き落とす。


だが、その背後からバサラヲのアサルトライフルが火を噴いた。


強化された弾丸が、次々とレギオンΩを撃ち抜こうとする。


「ちっ……!」


レギオンΩはすぐさま上空へ逃れようとするが、すでにバサラヲが先回りしていた。


雷を纏ったバサラヲの強烈な蹴りが、レギオンΩのボディを捉える。


正面から地面に叩きつけられるかと思われた瞬間——


ヴァルキリー・ギアの制御で、レギオンΩを無理やり空中で踏みとどまらせた。


だが、すぐに背後で“空気の爆弾”が弾けた。


凄まじい衝撃と共に、レギオンΩは地面に叩きつけられた。


音の《破裂のウィンド》——

触れた瞬間に凄まじい空圧の爆発を引き起こす。


エーテルそのものは通らないが、風圧や物理的な衝撃は通用することは分かっていた。


「音!!」

「うん!!」


バサラヲは刀を抜き、ツムギもガンブレードを構える。


2つの刃が、同時にレギオンΩの背面へと走った。


バサラヲの刀とツムギの武器はエーテル素材だが、通常時はただの物理兵器。


いくらエーテル防御に特化した装甲でも、純粋な斬撃そのものまでは防げない。


刃先は、しっかりとレギオンΩを捉えていた。


しかし、あと一歩のところで本体は回避し、完全な致命傷には至らなかった。


それでも、レギオンΩの背面には大きなバツ印の斬撃痕が刻まれていた。


「……アンタら、フツーにやるじゃん。ちょっとびっくり……」


メルは口元を歪めながらも、前回とは明らかに違う詰め方に、心のどこかで感心していた。


「……“アレ”、使っちゃおっかなぁ…」


メルがぽつりと呟き、コクピットのスイッチを次々と操作する。


「“ベルセルク・ギア”、発動」


その瞬間——


レギオンΩの各部装甲が次々に展開し、エネルギーラインが発光。


関節部や隙間から白い蒸気が勢いよく噴き出す。


フェイスマスクが開き、中のハニカムセンサーが点滅、禍々しい“ツリ目”へと変化した。


ベルセルク・ギアとは——

ただでさえ高性能なレギオンΩを、さらに強化するシステム。


そして、メル機に搭載されているものは、特に攻撃性に特化した仕様だった。


異形へと変貌したレギオンΩを見て、閃は即座に音へ指示を飛ばす。


「もう戦うことは考えず、避けることだけ——」


閃の声が終わるより早く、変貌したレギオンΩがバサラヲへ突撃する。


ハードクラッシャーのフルスイングが直撃。


アサルトライフルは粉々に砕かれ、バサラヲは大きく吹き飛ばされた。


そして、音が反応するより先に、レギオンΩはツムギの目の前にいた。


叩き潰そうと振り下ろされるハードクラッシャー。


しかし、弾丸が腕部に命中し、打撃の軌道を逸らす。


吹き飛ばされながらも、閃は両腰部のハンドガンを引き抜き、弾丸を撃ち込んでいた。


その一瞬の隙を逃さず、音は急いで距離を取り、そのまま吹き飛ばされていくバサラヲの方へ飛ぶ。


バサラヲが壁に激突しそうになった瞬間——


音は《エアクッション》を展開し、衝撃をやわらげた。


「閃くん!!」

「ありがと」


短いやりとりを交わす間にも、レギオンΩは再び迫る。


閃と音は同時にスキルを発動させた。


「《電壁》!」

「《エアフィールド》!」


雷と風の防壁が二重に展開される。


だが、レギオンΩはそれらを力ずくで突破した。


もっとも2人は、防御は狙っていない。


レギオンΩが着地した時には、すでにそこから姿を消していた。


今の2人の目的はただひとつ——


“相手がシステムダウンするまで逃げ切ること”。


ただ、それは同時に自分たちのエーテル容量との我慢比べでもあった。


閃と音の息が、徐々に荒くなっていく。


それぞれの強化スキルである《化身鳴》と《シルフィード》は、強力な反面エーテル消費も大きい。


その上、多数のスキルを重ねがけしたことで、容量に余裕のある2人でさえ限界が近づいていた。


レギオンΩは上空へと飛び上がり、即座に2機を補足する。


「見〜っけ♡」


メルは楽しそうに笑い、再び機体を突進させた。


(このままじゃ、こっちの方が先に時間切れっぽいな…)


閃は瞬時に状況を計算し——決断した。


「“カイバ”さん! 変わって!!」


その声に応じて、バサラヲのコクピットから、機械的な男の声が響く。


『リョウカイシマシタ、センサマ。ヒキツヅキ、セントウヲオコナイマス』


バサラヲの“もうひとつの人格”が、静かに目を覚ました。

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