第1話「朝のひととき」
オルフェ研究機関の地下2階にある生活エリア。
朝の食堂は、いつも賑やかだ。
バイキング形式の料理が並ぶカウンター、清潔な白いテーブル、大きな窓……。
といっても、地下施設なので外の景色ではなく、モニターに映し出された青空と緑の映像だが、少しだけ開放的な雰囲気を作っている。
◆
「やほー」
閃が食堂に入ると、すでに何人かの顔があった。
同じ制服に身を包んだ職員達。
そして——。
「……おそい」
冷たい声が飛んできた。
振り返ると、冷ややかな目をした少女が、こちらを見ていた。
濃黒のストレートロング、ハーフアップで纏められた髪。
無表情だが、どこか凛とした美しさを持つ顔立ち。
白木 怜。
“氷のファクター”でありファクターズのメンバー。
「逆に考えよう。れーにゃん達が早すぎるんだ」
「……その呼び方、やめろ」
怜はジト目で閃を睨んだが、閃は全く気にせず、にっこり笑っていた。
◆
「おう、寝坊か?」
奥のテーブルから、低い声が聞こえた。
がっしりした体格の少年。
強面だが、目元には優しさが宿っている。
新井 烈。
“炎のファクター”でありファクターズのメンバー。
「寝坊? する訳ないだろ」
「じゃあなんで5分遅刻してんだよ」
「気持ち的には5分前に来たから」
「気持ちだけじゃねーか」
烈は呆れたように笑い、トレイに視線を戻した。
◆
「あっ閃くんおはよ〜」
優しい声の小柄な少女。
栗色のふんわりした寝癖付きミディアムボブに、丸い黒縁メガネ。
羽野 音。
“風のファクタ”でありファクターズのメンバー。
「おっすー」
「今日もアホ毛だねっ(?)」
音はにこにこと笑いながら、料理を取っていた。
◆
閃もカウンターで料理を取る。
ご飯、肉、焼き魚、また肉、目玉焼き、ついでに肉。
「……偏食」
怜が隣で呆れたように言う。
「ご機嫌な朝食でしょ?」
「野菜無い」
「あっ」
閃は慌てておまけの肉を追加した。
怜はため息をつき、自分のトレイを持ってテーブルへ向かう。
◆
4人がテーブルに揃うと、少し離れた席から訓練生がちらちら見ていた。
「……相変わらず見られてんな」
烈が小声で言う。
「肉うめぇ」
閃は気にせず朝食を頬張っていた。
「閃先輩っ!」
1人の少女が駆け寄ってくる。
短い茶髪、小柄な体、元気いっぱいの笑顔。
「やほー、みのりん」
「今日の訓練なんですけど——」
「俺も一緒だよ。よろしくぅ」
「はいっ! よろしくお願いしますっ!」
みのりは嬉しそうに戻っていった。
◆
「…相変わらず、懐かれてんな」
烈が苦笑する。
「まあ、閃くん可愛いから」
音がくすくす笑った。
「かっこいいじゃなくて?」
閃がむくれた顔をする。
◆
朝の食堂は、いつもこんな感じだ。
平和で、温かくて、少しだけ賑やか。
——そして、この日常を守るために、彼らは戦う。




