表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エーテルコード  作者: エトコッコ
第3章:Ωの脅威

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/38

第6話「苦味」


オルフェ研究機関・訓練エリア。


訓練生4人は、模擬戦の真っ最中だった。


上の観覧ブースでは、クレアがタブレットを手に指示を飛ばしている。


「光井ィ!! 立ち位置が全っ然ちがぁう!!Dパターンって言ってるでしょ!! なんでアンタだけEの位置に居んのよ!!」


響き渡る怒声。


『あ、あれ……? なんでだ?』


02番機の光井が慌てた声音で返す。


「あ、あれ…? なんでだ?じゃなーい!!」


クレアはさらにヒートアップする。


「あれだけ“AからEまでは絶対に覚えとけ”って言ったのに! 予習してないの!?」


『ちゃ、ちゃんとやってるって……! ただED動かしながらだと、こんがらがるんだよぉ……』


タジタジの光井。


クレアは冷たく言い放つ。


「……他の3人は出来てますけど?」


『まぁまぁ。パターンは間違ってるけど、ミチも大分動きよくなってんじゃん』


04番機・アンジュがフォローに入った。


『ええ。それに僕らもミスはありますから』


01番機・東も落ち着いた声で続く。


『クレア。あたし達の改善点も教えてよぉ』


03番機・みのりが言う。


クレアは渋い顔をした。


「はぁ〜……アタシが悪者みたいじゃん」


タブレットを確認しながら指摘を始める。


「東くんは少し動き出しが早いかな。それにつられて、みのりんが動いちゃってるし」


『了解!』

『はいっ!』


2人が元気よく返事をする。


「アンジュは……特になしっ」


『ほい』


アンジュは軽く手を挙げただけだった。


「光井以外は上がっていいよ。お疲れ様」


『……やっぱ居残りかぁ』


光井が肩を落とす。


『んじゃ、おさき〜』

『ミチ、ファイトッ!』


アンジュとみのりが先に上がっていった。


『自分は、まだ一緒に訓練します』


東が言う。


『グンジン……おめぇって奴は……ほんっとイイやつだなぁ〜』


光井は涙目で喜んだ。


そんな様子を見下ろすクレアの背後から、声がした。


「訓練生、どんな感じだ?」


烈だった。


「ぅわぁっ!! あ、新井くん!?」


クレアは真っ赤になって飛び上がる。


「驚かすつもりはなかったんだけど、悪い」


「い、いつから……?」


烈によれば、クレアの怒号が廊下中に響き渡っていたため、それで気づいて来たらしい。


(ド、ドア閉め忘れてた……!? ていうか、よりによって新井くんに聞かれてた!?)


クレアはパニック状態だった。


烈は笑いながら言った。


「クレア、すげぇ様になってんじゃん」


この一言に、クレアは喜んでいいのか悲しむべきか判断不能だった。


烈は笑顔で続ける。


「でもよ、ミチにもうちょい優しくしてやってくんねーかな?…確かにアイツ、物覚えはあんま良くねーけど、裏ではちゃんと努力してんだ」


クレアは烈に、笑顔で話しかけられたことのほうに混乱していたが、何とか返事をした。


「ウン、キオツケル……」


カタコトで返すのが精一杯だった。



その夜。

オルフェ研究機関・心理ケア室。


光井と、褐色肌の短髪の男性が向かい合っていた。


彼の名はアルフレッド・モロウ。通称アル先生。


オルフェ研究機関の心理カウンセラーで、皆にとっての“安心できる場所”のような存在だ。


光井だけでなく、ファクターズ、研修生、オペレーターのリオまで頻繁に訪れる。


アルはいつも通り無理に話を促さず、柔らかく微笑みながらコーヒーを淹れてくれる。


「この前、新しい豆を仕入れました。飲んでみますか?」


「飲みたいっす。今日は……何も混ぜずに」


「いいですよ。ただ……少し苦味が強いかもしれません」


光井は普段、砂糖とミルク多め。しかし今日は——。


「……今日は、苦味が欲しい気分で」


「わかりました」


アルは白い歯を見せて微笑んだ。


差し出されたコーヒーを飲むと、光井は渋い顔をした。


「……混ぜますか?」


アルは優しく尋ねた。


「いや……今はこの味がいいっす」


光井は照れたように笑った。



翌朝。


光井が教室へ向かうと、背後から声が飛んだ。


「……おはよ」


振り返ると、クレアだった。


光井は“何かやらかしたか?”と内心ドキドキしながら挨拶を返した。


「お、おぉ……おはよ」


クレアは少しだけ目をそらして言った。


「……昨日は、言いすぎた。ゴメン」


光井の頭は真っ白になる。


「え……?」


「……じゃ」


クレアは逃げるように去っていった。


ぽつんと残された光井は、まだ状況を理解できず硬直していた。


その様子を、後ろから見ていた烈は、そっと目を閉じて微笑んでいた。


(第3章 完)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ