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エーテルコード  作者: エトコッコ
第2章:ゼクスト

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第5話「シンパシー」


オルフェ研究機関・格納庫。


閃はバサラヲの前に立ち、2人の男性と話をしていた。


白髪まじりの黒髪に無精ひげの男——黒須くろす 正人まさと


エーテル兵器開発の主任である。


もうひとりは度入りのゴーグルをかけた、チリチリパーマの男——能勢のせ かい


技術主任で、ED本体の整備・調整を担当している。


「両肩にミサイルランチャー、両腰にハンドガン…と。これでいいか?」


黒須が尋ねる。


「はい、大丈夫です」


閃は頷いた。


ファクターズのEDには共通設計というものがない。


各ファクターのエーテル波長・性質・戦闘スタイルに合わせて、1機ずつ完全新造されている。


そのため、SD用の兵器とは規格が異なり、使用不可だ。


ただし、バサラヲだけは例外だった。


SDやトルーパーに近い規格で設計されており、通常兵器を装備できる。


両肩・両腰にハードポイント、腰背部にはウェポンラックを持ち、ファクターズのEDの中で最も汎用性の高い機体だった。


さらにSDの兵器は、ほぼ全てがリニア式となっている。


つまり、閃の雷のエーテルと相性抜群だった。


「というか博士。なんかやつれてません……?」


能勢が、心配そうに黒須を見る。


「エドワードさんに、こき使われまくってるからな」


黒須は苦笑しながら肩をすくめた。



数日後。


4機のDDが、再びオルフェを目指していた。


だが、今度はファクターズが“待ち構えて”いた。


ファクターズとゼクストは、接触と同時に戦闘へ突入する。


バサラヲが左肩のミサイルランチャーを展開し、上空のサムのラフティアへ向けて射出。


同時に、バサラヲ自身も跳躍する。


ラフティアは軽やかにミサイルをかわしていく。


気づけば、バサラヲも同じ高度まで上がっていた。


閃は《電空》を発動させる。


微弱な放電を下方向に流し、落下速度を抑えることで、滑空・滞空時間を伸ばすスキルだ。



アークのドレティアは、シラユキを狙う。


怜は即座に《アイスステップ》を発動。


脚部と地面に薄い氷膜を展開し、シラユキを高速で滑走させる。


「ハッ! スピードで撹乱するつもりかいっ!」


アークが笑う。


アークのエーテル属性は“炎”。


烈と同じ属性だが、その炎はオレンジ色で軽く、温度も高い。


「《フレイムウォーク》!!」


足元に炎をまとい、一気に加速。


一歩踏み出すごとに、地面に炎のターボが走る。


あっという間に、シラユキとの距離が詰まった。



ツムギは下腿部に3基ずつ内蔵された“フェアリービット”を、イノのエンプティアへと放つ。


ビットは音の風のエーテルに操られ、高速で軌道を変えながら、あらゆる角度からレーザーを撃ち込んだ。


(速い……! 避けながら視界に捉え続けるのは難しい)


イノのエーテル属性は“念”。


条件は“対象を視認し続けること”。


前回の戦闘で、その特性はすでに見抜かれていた。


また、視界に捉えられない風のエーテルは、イノにとって天敵でもあった。



烈は、クリスのセレティアへ向かって強烈な火球を放つ。


クリスは《アクアスフィア》を展開。


クリスのエーテル属性は“水”。


癒しや回復の効果を持ち、ゼクストにおけるサポーター的存在だ。


セレティアの巨体が、水のバリアに包まれる。


しかし火球は、バリアに触れる直前で急停止した。



バサラヲはラフティアとの距離を詰めながら、右肩のミサイルランチャーを発射する。


「当たらないよ。アフフ……」


ラフティアは再び、容易く回避行動に移ろうとする。


——しかし


バサラヲは、両腰のハンドガンを素早く抜き、ミサイルに向けて連射した。


ラフティアの直前で爆発させるための“誘爆”だった。


回避行動に移る前に、ミサイルが目前で爆発。


ラフティアは爆炎と爆煙に包まれる。


サムのエーテル属性は“幻”。


その発動には、高い集中力が必要だった。


ラフティアはすぐさま爆煙を抜け出す。


バサラヲは、撃ち尽くしたミサイルランチャーをパージすると同時に、両手のハンドガンも投げ捨て、即座に刀へと手をかける。


爆煙を突き抜け、ラフティアの間合いへ踏み込む。


刀を振り下ろし——

ラフティアの尻尾を、切断した。


続けざまに回し蹴りを叩き込み、ラフティアを遠くへ吹き飛ばす。



レンゴクが放った火球は、空中で軌道を変える。


《火炎追尾弾》——

追尾性能を付与した火炎弾だ。


その火球が向かった先は——ドレティア。


アークはすぐに気づき、吠える。


「オレに炎は効かねぇ!」


正面から受け止めようとしたその瞬間——


火球は、瞬時に“氷の塊”へと変化した。


氷塊はドレティアへ直撃する。


「うぉ!!」


砕け散った氷の破片は、そのままドレティアの胴体へと張り付き、じわじわと四肢を凍らせていく。


その間に、烈はセレティアへ向けて突進していた。


「この前とは、レベルが違ぇぞ……!」


烈の声と同時に、レンゴクが四足歩行形態に変形する。


“ビーストスタイル”。


レンゴクだけが持つ特殊機構。

瞬発力を跳ね上げる、強襲形態だ。


「《火炎装》!!」


レンゴクの全身が、真っ赤な炎のエーテルに包まれる。


レンゴクの性能を一時的に強化するスキル。


一気にセレティアへ肉薄する。


セレティアは、背面の巨手型ウィングを前方に展開。


さらに《アクアスフィア》を拡大し、“完全防御形態”を取る。


次の瞬間——


レンゴクの突進が、バリアをこじ開けるようにセレティアへ激突した。


凄まじい衝撃波が周囲へ広がる。


押し込むレンゴク。

耐えるセレティア。


だが烈は、そこで一度レンゴクを跳躍させ、後方へと下がった。


セレティアの背後には、すでにバサラヲが回り込んでいた。


「《雷衝》」


凄まじい雷の衝撃波が、セレティアを背後から襲う。


水のバリア《アクアスフィア》は、結果的に“電撃の威力を増幅する媒体”となってしまっていた。


「クリスっ!!」


イノが叫び、ツムギのビットを次々と切り裂いていく。


「どりゃぁ!!」


アークも、炎のエーテルでドレティアの身体にまとわりついた氷を一気に溶かす。


2人はすぐさまセレティアの元へ駆け寄った。


「……問題ない。それよりサムは?」


クリスが確認する。


「退いてもらってる」


イノが短く答える。


「……俺たちも引こう」


クリスが冷静に判断する。


「しゃーねぇ……」


アークも渋々従った。


3機は撤退を開始する。


その時——


エンプティアに、バサラヲからの通信が入った。


イノは一瞬だけ戸惑う。


だが、すでに双方の機体は武装を収めていた。


「アーク、クリス。ごめん、ちょっと先に行ってて」


イノが告げる。


クリスは何かを察したのか、「わかった」とだけ言った。


アークは文句を飲み込みつつ、「あとでちゃんと説明しろよな」とだけ言い残し、2人は離脱していく。


イノは通信モニターを開いた。


そこに映ったのは、自分とそう歳の違わない淡い金髪の少年。


柔らかそうな雰囲気。


なんとなく、自分と“似た顔立ち”だとイノは感じた。


『悪いね、急に。こちらはファクターズの上矢 閃。君たちがゼクストだね?』


閃が尋ねる。


「うん。ボクはゼクストのイノ」


イノが答える。


『そっか。イノ君、単刀直入に聞くけど——君たちは、ヨハンに“無理矢理”戦わされてるの?』


閃の問いに、イノは少し考え込んでから答えた。


「あっ、イノでいいよ。うーん……半分そうで、半分は違うかな」


『わかった、イノ。じゃあ、もう半分の理由を聞いてもいいかな?』


閃が尋ねる。


「ゼクストの……仲間のためかな。閃君たちも、きっとそうでしょ?」


イノは優しい笑みを浮かべて返した。


『こっちも閃でいいよ。その通り。教えてくれてありがとう』


閃も、柔らかく笑う。


「うん。じゃあね、閃」


エンプティアは静かに高度を上げ、そのまま去っていった。


そのやり取りは——

他のファクターズも、オペレーターたちも、エドワードたちも、全員が聞いていた。


そして同時に、閃の中にあった“ある疑問”が、ひとつ晴れた瞬間でもあった。

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