七月/文芸部活動記録!!
少しだけ雲行きが怪しかった部活内の空気も、この間解決した。
─────僕は今、書けることがあるだろうか。
「………と言うわけで、髪切っていいらしいので数日中に行こうと思います。」
「そう言や、まだ行ってなかったのか。」
圭佑は呆れた様子でそうこたえた。
だって行く機会も無かったのだから仕方がない。
義姉は「物騒なのに巻き込まれたら大変。あの虚無天使だかを祀ってる教団が起こした騒動が治まるまで待って」と言うし、行かせて貰えなかったのだ。
因みに既に髪を切る許可は取ってある。陥落済みだ。
「そう言えば、前上げた十字架。どうよ、何か恩恵あったか?」
アレ、か。
どうだろう。特に無い気がするが、そう言うのも気が引ける。
……って、そう言えば塚見が言ってたな。危険だ何だって。
「いや…?」
「そうか。まあ、そうだよな。」
「捨てるかどうかちょっと悩んでるとこ。」
「そうか。って!! 捨てるなよ人があげた物を!!」
って、あの十字架沢山あるからそれでいいやって妥協したんじゃなかったっけ?
少し疑問に思ったけど。大した問題じゃない。
「あー、はいはい。捨てないでおくよ。」
僕はそう返答した。
「優君、あなたの可愛い彼女ですよ?」
雪幸先輩が部室にて読書している僕の前でそう言った。
読んでる本と僕の顔の間に割り込んで。
「ふわっ!?」
雪幸先輩の顔が間近にあることで大いに動揺する僕。
「か、可愛いのは同意だけれど」
「良いじゃない、私達付き合ってるんでしょ。」
「それはそうですけど………。」
目を逸らしながら返答する。ちょっとまだ照れてしまう……。
「それと、敬語みたいなのは止めて。」
そこでやっと雪幸先輩は顔を離し、隣の、それも肩が触れ合う位の近さに座り込む。
「それと……先輩って言うのも。」
「………止めた方が良いんですか?」
「当たり前。その方が良いじゃない。近い感じがして。」
そうですか………。そうか…。
「わかった。雪幸せ」「雪幸でも雪でもいいよ?」
つい、先輩と言ってしまう前に割り込んで言われた。なら、雪幸と呼ばせてもらおう。
「ゆ……雪…幸。これでいい?」
やっぱり呼び捨ては何だか照れる。しかし、まあ。
「はい。」
返事した彼女の笑顔を見て、そんなことはどうでも良いなんて、思えてしまった。
「なぁに書いてんだっ!」
「いっつぁ!?」
思い切り背中を叩かれた。痛い。
叩かれたとき僕は丁度部室のノートパソコンに文字を打ち込んでいた。そして叩いた張本人である茜屋先輩は痛がる僕をよそに、パソコンのモニターを覗き込んだ。
「………ああ、原稿……。提出回数的に終わりそうだからって、手を抜くなよ?」
「分かってますけど………ネタが……。」
そう言うと、茜屋先輩は呆れたように溜め息を吐く。あからさまな演技に少しだけカチンとした。
「あっのねぇ……それでも文化祭に文芸部の展示の一部なんだから手を抜かれたら困るんだよねぇ………。」
「何ですか、そのプレッシャーの掛け方……。」
そう言われてもネタがないと考えたら、今まで疑問だった事を聞いてみれば良いじゃないかと。
「茜屋先輩は何でそんな赤髪なんですか。」
突然の質問だったにも関わらず、茜屋先輩は平然と答えてくれた。
「んー……ちょっと子供の頃、なんというかな………事故に巻き込まれてこうなったんだよ。元は綺麗な黒髪だったんだー。」
「へぇ……そうだったんですか。………って嘘でしょう!?」
「あはははは、バレた? 本当は茶色とも黒ともつかないような色してました。てへ。」
コツンと自らの頭を叩く。てへぺろ、ってやつだろうか。そんなもの最近は見てない気がする。
「じゃなくて……事故でそんなのなるわけ無いじゃないですか……。」
「まぁ、それは置いといてよ。」
茜屋先輩が小さく『信じてもらえなかったか……。』と呟いていたのは聞こえないふりをした。
「それで、何で赤髪なのに校則違反じゃないんですか?」
「優等生の特権だよ。」
そうだった。この先輩は普段ふざけているように見えても、テスト成績はトップクラスなのだった。
授業をまともに受けている想像ができないけれど、優等生(自称)ならば、きっと普段からは想像できないような真面目さを発揮して────
「嘘だよ、信じちゃった?」
───るかどうかは結局分からない。
「じゃあ、何でですか?」
「赤髪の事情をちゃんと話したからね。納得してもらっただけだよ。」
………何だろう。この『なんか違う』感じは。
「まぁ、そう言うならそうなんでしょうね。」
「おい、自分で聞いといて信用しないとは良い度胸だ。」
「………はぁ、良いんですか、僕今執筆中なんですよね。」
「さっきまでこっち見て喋ってたくせに……卑怯者め。」
何とでも言うが良い。
「葵先輩? 葵先輩じゃないですか。どうしたんですかこんな休日に。」
僕は、自分の家から一番近い駅に来ていた。
雪幸と待ち合わせてデートしようということに………なんですかそっち書けと言われても書きませんよ恥ずかしい。
と言うわけでその駅前で葵先輩を偶然見つけてしまい、話しかけようとしたところである。
「あら、こんにちは優君。」
………言葉は平静そのものだけれど、葵先輩何でこっち見ないんですか。何でそんな動揺してるんですか。
「偶然ですね、何で優君はここに?」
不審すぎるけど、僕がそれを言おうとしたら、物凄い笑顔で「なんですか?」と言われた。怖い。
「え、えと。雪幸と待ち合わせ…してます。」
「おぉ、やっとお二人、デートするんですか。おめでとうございます。」
………何ですかやっとって。おめでとうございますって。付き合い始めて二ヶ月過ぎてやっとデートだって良いじゃないですか。
勿論そんな事は言わないけど。
「あ、ありがとうございます。」
言わないけど。
「じゃあ、先輩は一人でこんな所を彷徨いているのは何でですか?」
『一人』を強調して言った。
「うぐっ。…良いじゃないですか。たまには適当な駅に降りて適当に散策したって。」
「一応ここが僕の家からすれば最寄りの駅なんですけどそれは適当なんですか?」
「良いじゃないですか。」
「良いんですか。」
「良いんです。」
………あまり納得出来はしないけど、一応引き下がっておこう。
「………それで、最近どうです?」
葵先輩は主語の抜けた質問を投げる。抽象的すぎて分からなかった。
「どうって、何がですか?」
「雪との仲の具合ですよ。まあ、デートしようとするくらいだから心配は無用かもしれませんが念の為。」
仲か…………。
「良いに決まってるじゃないですか!」
僕は迷いなく、そう言い切った。
「そうですか。それだけ聞ければお腹一杯です。じゃあ、この辺で。」
「はい、では。」
そう言ってすぐ去っていった葵先輩。と入れ違うように雪幸はやってきた。
「待ってた?」
「はい。まぁ、何でか葵先輩がそこにいたので、退屈はしませんで…しなかったよ。」
雪幸はその返答に頬を膨らませて
「次からはもっと早く来るよ。」
何かの段階を飛ばした発言。僕はその飛ばされた部分を察して
「いや! 雪幸がくる間葵先輩が居なくても楽しみだったから退屈しなかったと思うよ!!」
しかし、ご機嫌斜めな僕の恋人の機嫌はすぐには直らなかった。
「だからちょっと待って先に行かないで!?」
それに振り回されるのも少し楽しかったけれど。
「終わりました。」
僕は原稿を書き上げて、茜屋先輩にそう言った。
「あれ、もう終わったの? まだ七月入って二日も経ってないよ?」
茜屋先輩はきょとんとした様子であるが、書ききったことには変わりない。
どうしても信用しない茜屋先輩に、一度データを保存してからパソコンの画面を見せる。
「お、おぉ。書ききってる。」
「これで僕の文芸部員としての活動は終わりですか。」
僕は満足げに呟いた。
しかし部員の三名様は不満そうだった。
「何言ってるの? それだけで部員止めてもらったら困るんだけど。」
「そうですよ。」
「困る。」
…………いや、別に辞めたりは……。
「大体まだまだ仕事はあるんだよ?」
「本にしますからね、綴じたり……絵を描いたり?」
だから、辞めるとは一言も言ってない…………。
「辞めたら、泣くよ?」
雪幸、そんなこと言わないでくれ……。もちろん辞めないけど。
「辞めませんよ。この部活は嫌いじゃないですし。」
いや、何で先輩方そんなキラキラした目で見てくるんですか。
「そっ…それより! 本! 本です!! どうするんですか、中身について何も聞いてないんですけど!」
そんな空気は悪くないけど背中がむず痒い感じがして、大きめの声で転換を図る。
「おお、ついに聞いてくれたか! それはだな!!」
茜屋先輩は既にあったのだろう中身の構想について熱く語り始める。
それを笑顔で見守る葵先輩。この時ばかりは表情の殆ど動かない雪幸でさえも口の端をはっきりと分かるくらいに上げ、微笑んでいた。
「───これから、文芸部活動記録の編集を開始する!! 覚悟しろよ!!」
高らかに笑う茜屋先輩。
と言うか! え? そのタイトルだともしかして………。
「気付いたか優! そうだ! お前が書いた話だけを載せるぞ!!」
「ええ!?」
僕は驚いた。嬉しいか恥ずかしいかで言えば、圧倒的に恥ずかしいのだけれど。
きっと良い思い出になるだろうな。
そう考えることで、自分と乖離させた。
「喜べ!! これが『文芸部活動記録!!』だ!」
──完──
はい。こんにちはなのかこんばんわなのか、はたまたおはようなのか。陽光ゾンビに改名しました凌吾です。
凌吾よりも陽光ゾンビを広めていきたいので、陽光ゾンビでしばらくはやります。
名前思いつかないからとリアルネームに近い物を使ってましたら友人にバレまして………って、ここは文芸部活動記録!!の後書きですので近況報告は控えておいた方が良いですよね。
と言うわけで、短めを予定していた今作が完結しました。
前作の義腕の王の三分の一の癖に話数が十分の一です。驚き。
そして一話一話を長くしようとしたら、えらく更新に時間がかかってしまいました。そこら辺はすいませんm(_ _)m
正直、今作は日常ものに挑戦してみた。という具合で、あまりいい点が見つからないかも知れません。
しかも次回作は今作の話と前作の義腕の王の世界感を一部………というか完全に一致させてます。というか今作、舞台は一応京都辺りを予定してました。
前作の事情でしてね。
はてさて、失敗気味な今作ですが、なんと次回作も主人公が同じです。パチパチー。
あまりよくない気がしますが、1から説明すれば大丈夫だよね………技量があれば(無いから問題に)
と言うわけで、
文芸部活動記録!!
を読んでくださった皆様。ありがとうございました。
また何処かで会いましょう。 陽光ゾンビ




