6月/憂鬱
最近、茜屋先輩が元気ない。
元々あの先輩はテンション高くて迷惑だったとは言え、それはそれで。
「………はぁ……。」
ちらちらとこっちの方を見ては、物憂げな表情で溜め息をつく。
何なんでしょうか、つまんない奴だなあとか思われてるんですかね。
変な様子の茜屋先輩は放置して、僕は雪幸先輩を見る。
彼女は静かに本を読んでいた。……あ、笑った。
やっぱり可愛いなぁ。
「………何ですか、これは。何ですかこの空気は!!」
葵先輩が机をバシンと両手で叩いて叫んだ。
…………空気?
「全員首傾げた!? 分かってない奴ですね!?」
なんだろう。停学処分が終わってから先輩方みんなおかしい。勿論今の葵先輩もおかしい。
「ん………あぁ、何がおかしいんだ?」
茜屋先輩の聞き方はいかにも興味なさ気にぞんざいな聞き方であった。
「梅雨時なのに偶々晴れてる!! ならどっか行きませんか!?」
あまりにも机を叩きまくるので、むしろ自分の手が痛そうだ。
「葵先輩、大丈夫ですか……?」
「いいえ、全然!! 調子が狂うんですよね! 皆こんな感じだと!!」
「……………。」
「雪! 本を起きなさい。そしてこっちに来るのです!!」
葵先輩は立ち上がって、雪幸先輩の首根っこを掴む。そして引きずるように廊下へ言ってしまった。
重い沈黙。外は快い位に晴れてるというのに、何故か部室にはどんよりとした空気に包まれていた。
そこに茜屋先輩の溜め息。溜め息。
聞いてるこっちが暗くなる。……ので話し掛けた。
「先輩、どうしたんですか?」
「べっつにぃー……?」
言い方にムカつきそうになったが、そこは外の清々しい晴れの風景を見て落ち着く。
「溜め息ばかり吐いて、何か悩みでもあるんですか?」
「あるわけないっしょ……? はぁ。」
溜め息。
………あぁ、分かる。何で怒ってたのかが。とてつもなく葵先輩に同情する。
「………茜屋先輩。」
「な、なによ?」
茜屋先輩が何で声が上擦ったのか分からないけれど。
「ちょっと、勝負しましょうか。」
「はあ?」
丁度、開け放しだった扉から二人が戻ってくる。
「何?」「何でしょうか?」
「こう言うときは動いた方が良いと思いまして。」
僕らは全員で高校のテニス場に来ていた。
「何か動く気にはなれないんだけど。」
「まったくもう。」
葵先輩は溜め息混じりに呟いた。
動こうとしないでわめき続ける茜屋先輩を引き摺って来たのはこの女子二人だからだ。
僕? 葵先輩が『優君は手伝ってくれなくても大丈…絶対手伝わないで。』と言うので手伝ってない。まあ、当たり前だと思う。
………勿論腕力的な話じゃないよ?
「んっ……。準備よし。」
雪幸先輩は屈伸したり伸脚したりストレッチして伸びたりな準備運動を終えていた。
「ほら、雪だって乗り気ですし。やりますよ!」
でも相変わらずやる気のない茜屋先輩。
「仕方ないなぁ……。」
まあ、みんなすでにジャージに着替えていたんですけどね。
「じゃ、始めるとしますか……。」
テニスのラケットを振り回し、茜屋先輩は気怠げに宣言した。
さて、やるか………!!
実際、ルール分かる人は居なかった。審判も居ないので、最早体を動かすこと以外に目的もない。
一応、僕と雪幸先輩でペアになって部長副部長と打ち合いをしていたのだ。
途中から
「ふはははは!! 弱い弱い!!」
「それくらい返せるわ!!」
とか、茜屋先輩は寧ろ普段よりハイテンション……廃テンションだったくらいなんだけれど。
「はぁー動いた動いた。」
満足げな表情で帰路につく僕たち。
茜屋先輩は悩んでいたことを忘れたかのような表情であった。
「そう言えば、智?」
「ん? 何よ?」
雪幸先輩が問う。
「何か悩んでなかった?」
その質問に茜屋先輩は、一秒ほど動きを止めるが、しかしすぐに笑顔で
「んー。何もないよ?」
と、言った。
「そっか、良かった。」
「優君優君」
ちょいちょいと僕の肩を叩いてくる葵先輩。
「提案、ありがとうございますね?」
「……テニスしようってやつですか。別に、あれは茜屋先輩がうざったかったからやったことですよ。」
「そうでしょうから、礼を言ってるんですよ。きっと、もうああはなりませんからね。」
どういうことなのだろうか。
まあ、茜屋先輩が普段通りなら文句を言うつもりは無いけれど。
先輩方3人並んで帰る姿はどこか、美しさのようなものを感じた。
翌日。
「雨がどうした!! こう言うときこそ!」
「智うるさい!!」
「はぁい………。」
まあ、概ね、いつも通りだよね………。
「優君、この部活は楽しい?」
雪幸先輩は唐突に聞いてきた。
この部活が楽しいか……って、そんな事は考えるまでもなく決まっている。
僕は雪幸先輩を真っ直ぐ見てしっかりと言った。
「当たり前じゃないですか。」
きっと僕は笑顔だったのだろう。
──文芸部室は、明るい雰囲気に包まれていた。
「み、短い?」
はい。
「ええー、でも仕方ないじゃないか、梅雨なんて何もな」
飽きたの?
「え? いや、ネタ切」
飽きたんでしょ? 長めで書くのに。
「それは優に聞い」
「───何ですかここは。」
じゃ、聞いてみますか?
「優!? 何でここに!?」
よんじゃいました。
「このコーナーに真の筆者を呼び出すとは……。」
いや、真の筆者俺。そいつ違う。
「ふふっ、真の筆者のオーラに偽物が怯んだか。」
「いや、あのこの空間、なんですか?」
見れば分かるでしょ、メタ空間だよ。
「何ですか、メタ空間って。」
今名付けた。元はないから何かあったら関係ないと思ってな?
「はあ……。」
「んで、何の話だっけ。」
あと一話ですね。
「………。」「………。」
あっれぇ!? ノーコメント!? ノーコメント!? 良いと思ってるんですかぁ!?
「次回分かることじゃんか。自称筆者。」
うううううるせえな自称じゃねえよ自称じゃ!! 次回作で初っ端で殺すぞおらぁ!!
「いやちょっ、それはやめたげてよ!?」
止めない、後悔するが良い……ふはははは!! ふははははははは────────
──────っは!!?」
「何寝てるんですか、コーナー始めますよ?」
「んぇ……あぁ、夢か……。」
「そうですよ、あんなこと、番外編ですら起こりはしませんよ。」
「あんなこと?」
「それはともかく、おまけのコーナー!!」
「おまけのコーナー!!」
「今回は!! 特別に!!」
「特別に? 何だよ?」
「…………いえ、私達のみで会話をつないでって。」
「と、特別に、か。」
「そうそう。」
「……。あ! そう言えば何か関東の方で例の騒がしい教団が暴れてるのは」
「被害者が何でそう言う話を。」
「えー、菊川ちゃんがちゃんと捜査してるんでしょ?」
「らしいですけど!! 被害者が普通そう言う話をするのですかって話じゃないですか。」
「良いじゃん。」
「というか、先月の入院、あれですよね、優君に窓閉められたとき挟んだやつですよね?」
「そだよ? それがどうしたの?」
「それがどうして、うまくいってなければ奪っ」
「いくら葵でもその話題はげーんきん☆だよ?」
「ええわかりますよ珍しいくらい変な言動をしてるくらいに言われたくないんですね結局あれは何だった」
「勘違いだよ勘違い。あのときの優がどうもカッコ良く……って何言わせんだよ!?」
「痛っ!? 勝手に言ったんでしょう!?」
「ああそうだよ!!」
「にしても、文字数が少ないですけど、優君ちゃんとやってるんでしょうか。」
気になる?
「気にならない!! だから来るな!!」
「何に話しかけてるんですか?」
「何でもない!!」
「ああ、何も指示なくなったのでこの辺でこのコーナー終わります。」
「お疲れ様でした!」
「実はこのコーナー最終回でした!!」
「え、マジで?」
「マジです。」
「………マジか。」




