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第三章

昼間には学業や仕事に専念して、夜間には頭の中で膨らむ幻想と対峙する日々が続いた。それには、うんざりしていた。いいや、むしろ、自己を満たす苦痛に飽きて、退屈するようになった、という方が正しいかもしれない。何度も見て覚えてしまった映画をもう一度、早回しで眺めているような感覚。


習慣化した幻想との対決から自分を引き離すべく、僕は新しい物語を求めた。それは、ときには、小説であったり、映画であったりした。


そうして、僕は自分を救うつもりで、さらなる深みに、果てのない湿地帯に両足を沈めてしまったのだ。身体を軽くするはずの慰みは、僕から発する糸を別の糸に結び付け、重くした。未知の到来はどこか懐かしい雰囲気をまとって、僕の目をかすめ、なにげない顔をして座っていた。


大学教授の、「ジョイスの『ユリシーズ』における意識の流れについて」という講義の後、僕は近くのカフェテリアでコーヒーを飲んでいた。十二月の刺すような冷気にかじかんだ指先を少しでも温めようと、カップを両手で包んだが、思いがけず攻撃的だったその熱にうろたえ、テーブルに戻した。


店員たちは深緑のエプロンをつけ、さっそうとした身のこなしで、テーブルの間を渡り、片手にはエッグサンドのプレートを、もう一方の手にはコーヒーカップがのった銀のトレーを、といったぐあいに動きまわっていた。


僕の視界の中で、立っては座り、入れ替わる客が水槽の水草に、店員たちは小魚の群れに重なった。数日前、偶然、目に映ったテレビの番組のせいかもしれない。それは地中海の生態系を扱った番組だった。強烈な太陽光は海面の屈折で和らぎ、その水面下では様々な魚類や哺乳類が暮らしている。


熱いコーヒーの表面を吹いて冷ましている、この間も、色鮮やかな魚たちは過酷な生態系の猛威に耐え忍んでいるのだった。


ふと顔を上げると、乗用車、バス、トラックが行き交う大通りに面した窓ガラスに僕の顔が映った。雲を透過して降り注ぐ、硬い日光の下で、その表情は白々しく、何も示していなかった。


向かいのテーブルには、一人の若い女性が腰かけていて、左手に文庫本を持ち、ページの間に親指を喰い込ませ、うっかりページがめくれたり、読んでいる箇所を見失ったりしないよう、しっかりとつかんでいた。ノートの上に置かれた右手は、ボールペンを走らせ、黒い滑らかな文字が紙の上を滑っていく。暗い褐色のポニーテールが耳の後ろから流れ、首にかかっていた。


本のタイトルは白地に青いゴシック体で印刷されていて、僕の目にははっきりと読み取れた。

『岸辺のロシュフォール夫人』と。


目の前でテーブルの輪郭が薄れ、かつて、味わった一節が僕の手元に、再び書物の形を取って、浮かび上がった。




「こうしていると、あなたの不快感が手に取るように分かります」ロシュフォール夫人はささやき、整った眉を寄せた。

エドモンはとっさに口走った。

「そんなはずはありません。僕はこうして、あなたとこの海岸線を歩けるだけで、幸せなんですよ」

「いいえ、腕が震えていらっしゃるもの。私の父の言葉に気を悪くなさったんだわ」

「いいえ。あなたのためなら、どんな侮辱でも飲み込みましょう」

「ほら。そのようにおっしゃるでしょう。」

ロシュフォール夫人はエドモンの腕から自分の腕を抜き、日傘を小脇に抱えて、少し前を歩いた。

「そうして自己犠牲の精神を発揮なさるのは、わたくしのため?」




僕は向かいの女性の口元がかすかに歪み、くすりと笑ったように、小さく息を吐くのを見た。


どの場面に差し掛かったところだろうか。


僕は石像のように、その固まった視線を彼女に注いでいたのかもしれない。


ふと彼女は顔を上げ、訝しげに眉をひそめた。

僕はとっさに顔を背けると、冷め過ぎてしまったコーヒーカップのなかを覗き込んだ。視界の端で、ぼんやりとした像を捉えたところ、彼女は首を振って、ページの間に戻ったようだった。


僕が席を立ち、会計を済ませ、店を出ようとすると、再び、あの若い女性と目が合った。彼女は僕の鞄を見つめ、突然、表情を明るくした。本をテーブルに残し、丁寧な手つきで椅子を引いて立ち上がると、こちらに歩み寄った。


「そのストラップ、K大学のでしょう?」彼女は僕の鞄の把手から下がったアクリル板のキーホルダーを指さした。

「ええ」

「じゃあ、私たち、同級生ね。」それから首を傾げ、小さく笑った。「でも、先輩や後輩ってこともあるわ」

「二年生ですが」

「あら。じゃあ、同じだわ」彼女はポニーテールを軽やかにゆすって、今度はずっと晴れやかに笑った。

「どうして、私の方を見てたの?」

「あなたの読んでいた本が、僕の知っているものだったから」

「知ってるの? でも、フランス文学のクラスでは、あなたを見なかったわ」

「専攻ではないけれど、読んだことがある」

「読書家ね」彼女は感心するように頷くと、僕に訊ねた。

「次の授業はいつから? 一緒に座って、あの本について、お話ししない? ちょっと、行き詰ってるの」

「ええ、いいですよ」

僕はその返事が許容するように響くのに、気づいた。実際のところ、僕の中に生じた感情はそれよりもずっと、能動的なものだった。それを表す言葉がないことを、今でも残念に思う。


僕は彼女に従い、同じテーブルを挟んで座った。彼女が訊ね、僕が答え、その方向が変わることはなかった。気づくと二時間が経っていた。


彼女は本当の語り部だったと思う。これまで会った、誰よりも流ちょうに話し、誰よりも上手に、人の言葉を飛び越えて、自分の台詞を引き受けた。


それから、僕らは、明日も、同じ場所、同じ時間に、待ち合わせることを約束して別れた。

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