02-13 嫉妬眼鏡は必然さを求める《藤視点》
紫の藤―パーヴィス・イステリア Side
学園祭前日、私はとある令嬢と言い合っていました。
このわからず屋の令嬢方に説明するのは全く不毛なものです。呆れてそのまま決定事項を伝えようとした時、シエラ嬢が現れました。
彼女は私の言っていることと、相手が求めていることとを、彼女にしかできない方法で上手く折衷してきた。
こういう方法もあるのか、そしておそらく私が押し付けるよりも全員にとって、いい結果をもたらしている。
彼女に「最後まで聞いてくれてありがとう」と言われた時、はっとしました。
私は心のなかではこのわからず屋の令嬢たちの努力は認めるべきだと思っていたことを自覚したからです。
そうでしたね、私は天才は嫌いです。努力は認められるべきと思っていたはずなのになぜか、自分の思う合理性だけを相手に突きつけていた。
これでは衝突するわけです。彼女はそれに気づかせてくれました。
彼女がいれば私は新たな価値観に気づくことができる。きっと視野も広げられるだろう。
私の世界を広げてくれる人なのかもしれない――。
翌日の学園祭当日。
前日に私が禍々しいと表現したブースで見かけたので声をかけた。
なんでもあの時の令嬢たちにネイルを施してもらったそうだ。
「このネイルは二日しか保たないので、安心して初めて色付きに挑戦しました!」と口元に両手を持っていって、キラキラ輝くオレンジのネイルを見せてくれた彼女は、控えめに言ってすごく可愛かった。
まあ、何もしていなくても彼女は美しい容姿をしているが。
しかし、なぜネイルも光も『オレンジ』なんだ。そこは私の色である『紫』にすべきだろう。それが気に入らない。
「なぜ全てオレンジ色なんですか? オレンジが好きなんですか?」
「私は『金木犀』が大好きなので、その絵柄にしていただきました。それと私が希望して『金木犀』からオレンジパウダーを作ったんです。オレンジは私の『推し』色なんです!」
「あなたにはもっと似合う色があります。紫のほう……いえ、なんでもありません」
『推し』とはなんだ? 金木犀が大好き?
あなたは藤のほうが似合うと言ってやりたかったですが、周囲に人がいたので我慢しました。
特に昨日の令嬢たちの中の一人がじっと見てきてなぜか頷いてますし。
まぁ、彼女の大好きという言葉はいつでも思い出せるようにしておきましょう。
そして本日の学園祭初日の一番のイベント、ゴーランド殿下と挑戦者のチェス大会です。
ともに鉱石を見に行った日にわたしとの食事を断ってまで作った魔道具は、とんでもない代物です。あれは王家も欲しがるでしょう。
こころなしか、殿下の顔にもそう書いてあるような気がします。
本当に気に入りません。私は彼女と接触するまで、殿下に今までこんなことを思ったことはありませんでした。シエラ嬢は想定外の気持ちを抱かせる天才です。
とりあえず、殿下は彼女の視界から排除すべきですね。殿下は力尽くで彼女を手に入れられる権力がある。
そして学園祭二日目のレグルスの魔法実演も拝見しました。
私には特製の魔力の流れを見る魔道具がありますからね。彼女が作り出した流星群は魔力が整っていて本当に美しかった。
周囲の人間はレグルスがやったものだと勘違いしてましたが、本物を見極められないとは本当に愚かですね。そもそもあのレグルスにあんな高度なことが、できるわけがないではありませんか。やれやれだ。
後夜祭は私は彼女と過ごすべきです。それが合理的で必然です。
なぜかはわかりませんが、そういうものでしょう。わからないままでいいとはこれも視野が広がった影響ですかね。
さて、彼女を探しに行きますか。きっと彼女のことだ。大図書館で読み物に耽っているはずだ。
向かう途中、ゴーランド殿下にお会いしました。殿下のこの顔……嫌な予感がします。
「おい、パーヴィス。私が選んだシエラを見なかったか?」
「私も彼女を探しています。殿下は仕事もあるでしょうからそろそろ王宮に戻られては?」
「側近のお前ごときに言われることではない。分をわきまえろ」
やはりこう来ましたか。想定通りですね。
ですが、私はまだ知りませんでした。彼以外にも彼女を狙う不埒なものが幾人もいることを――。
♢ ♢ ♢
――リンッ
―――紫の藤/パーヴィス・イステリア
好感度 60+/100(現時点での限界突破)
11月4日 学園祭イベント成功
聖夜のダンスパーティーイベントまであと51日……
――……リリンッ




