表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
結婚するとは言っていません【書籍化・コミカライズ化決定】  作者: 白雲八鈴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/69

第68話 魔性の君なのね

「マルトレディル君!」


 一通りの日課の訓練を終えて宿舎に戻ってきたところで、声をかけられました。


 確か団長の部隊の女性騎士の方でしたね。


「何か用でしょうか?」

「ねぇねぇ。さっきの人って誰?」


 ん? さっきの人って誰のことを指しているのか私が聞きたいです。


 私が意味がわからないと首を傾げていると、両腕をがしりと掴まれました。


「見たことない人とちゅーしていたよね」

「は?」

「団長とその人どっちが本命?」

「は?」


 何がちゅーなのですか? 本命?


「金髪のおじさまとさっき一緒にいたよね!」

「あ、グレンバーレル?」


 確かに一緒にいましたが、何がちゅーですか? ……あ、こそこそと耳打ちをされたときのことですか!


「グレンバーレルって魔導師団長様! あんなにカッコいいおじさまだったの!」


 まぁ、見た目だけはいいけど、中身は最悪ですよ。話がさっぱりもって通じないところがありますからね。


「知らなかった! それでどっちが本命?」

「あの? 仕事の話をしていただけですが?」

「それで魔導師団長様からちゅーを! マルトレディル君は魔性の君なのね!」


 そう言って去っていく女性騎士のかた。

 何を言われたのか、理解するのに数秒かかってしまいました。


「は? ……ちょっと待ってください! 勘違いが入っています」


 と叫んだときには、誰もいませんでした。


 グレンバーレル! あの時にスパイがいたことを話していれば、こんな勘違いされることはなかったのです!


 私はため息を吐きながら、食堂に向かいました。

 食堂が開いている時間が決まっているので、こんなことで時間を取られていると、閉まってしまいます。


 食堂の中に入ると、人は殆どいません。

 今日のメニューは何でしょうかね?

 空いているテーブルの席につくと、メイド服を着た人がやってきました。


「今日は何のメニューですか?」


 私はメイド服を着た者に尋ねます。

 ええ、黒髪に赤目の不服そうなメイドにです。


「そう言えば、メイド期間が団長命令で更に長引いたそうですね」


 私はニコリと笑みを浮かべます。

 勝手な行動をして一週間の再教育を命じられたにも関わらず、それが嫌で行わなかったために、更に一週間長引いたそうです。


 そう再教育というなの、メイド修行です。


 ギリっと歯ぎしりをしてくるデュークアルベルト・ファングラン。

 はい、この女装をさせられ、給仕をさせられているのは見習い騎士のデュークアルベルトです。


 恐らく屈辱的だと思っているのでしょうね。

 でも従騎士は騎士の身の回りの世話を行わなければなりません。服装はアレですが、これは見習い騎士として必要なことなのです。


「そういう態度は駄目ですよ。それで今日のオススメメニューはまだ残っていますか?」

「ちっ!」


 舌打ちをして去っていく黒髪のメイド。

 はぁ、従騎士となればできると思っているのでしょうが、今できなければ、従騎士としての務めはできませんよ。


 殺気立っている背中を見ながら、先程の言葉を考えてみます。

 私、どこから見られていたのでしょう?


 今回は周り人の気配はありませんでした。

 それに魔導師団のほうにいたので、いくら隣の敷地でも顔までは確認できないはずです。


 どう考えてもグレンバーレルの顔を見たような言い方でした。


 考えられるのは強化魔法ですか。


 視覚を強化した鷹の目です。

 極めれば、遠くの山の木の枝に実っている果実を捉えられるとも聞いたことがあります。

 それであれば、容姿も見ることができるかと……。

 変な噂を流されなければいいのですけどね。魔性の君ってなんですか?


「貴方はどんな手を使って、伯父上に取り入ったのです」


 思考中にそんな言葉が聞こえたと思えば、ドンとトレーを目の前に置かれました。

 あのスープがトレーの上に飛び散ったのですけど?


 それから、団長に取り入ったわけではありませんよ。


「貴方のような田舎の伯爵家の者がです」

「団長は実力主義です。それだけのことですよ」


 そう言って夕食を食べ始めます。

 レクスが女性騎士を起用している話を聞いていました。なので、本当のことなのでしょう。


 力が劣ると言っても、個々の能力はそれぞれです。

 もし先程声をかけてきた女性騎士が視覚強化型であるなら、それは凄いと思います。私はできませんからね。


「見習い騎士ファングラン殿は、弱いので仕方がありませんね」


 私は挑発するようにニコリと笑みを浮かべます。


 すると、私の夕食が上に吹っ飛んでいきました。正確にはテーブルが宙を舞ったのです。


 デュークアルベルトが足を振り上げている姿が目の前にありました。ロングスカートがめくれちゃっていますよ。


 私は手を伸ばして落ちてきたトレーを手にとり、その上に食器を受け止めていきます。


「食べ物を粗末にしてはいけませんよ」


 戦場では満足に食べることも難しかったのです。食べ物を粗末にする者は嫌いです。


「あと給仕をする者としても問題行動です」


 メイド失格です。

 足を引っ掛けて、床に跪かせます。


「うっ」

「メイドさん。お行儀が悪いですよ。スカートがめくれてしまっています」


 私の手はトレーを持って塞がれていますので、足蹴にしてしまったことは仕方がないことですよね。


「まぁ、これが見習いと従騎士の差ですね」


 そう言ってトレーを持って別の席に移動したのでした。なにかと絡んでくる公爵家の坊っちゃんは鬱陶しいですわね。


魔性の君 裏 (読み飛ばして良いです)


私の名はエレア・リエグリス。

しがない子爵家の次女です。

騎士団に入団した理由は、お金を稼ぐため。

だって私の下には5人の弟妹がいるのよ?

食べていくだけでも大変……え?お貴族様だろうって?


はぁ子爵家なんて庶民に毛が2本ぐらい生えたようなもの。そこまで裕福じゃないの。

貴族と結婚するのもお金がいるし。持参金っていうやつ?そんなお金良いよって言ってくれる旦那ならいいけど、それってすっごくお金持ちだから言ってくれるわけ。


でもそんなお金持ちなんて高位貴族だし、しがない子爵家の次女なんてお呼びじゃない。

しかぁーし!騎士団になら遭遇する機会があるわけ。


いい旦那を見つけられればという打算があったのは認めるよ。

でも、私は悟った。騎士としていれば旦那必要なくないって。


だってお給料が凄くいいの!

特に騎士団団長直属の部隊に配属されてから実家に仕送りしても手元に遊ぶお金が残る。凄くない?

宿舎暮らしなら基本お金がかからないし、服も最低限でいい。


老後のお金が貯まるってことよ!


で、その団長直属の部隊から外されないように日々の訓練は欠かせないわけ。

団長って何かに秀でていれば取り立ててくれる。


私の場合は索敵や視覚による情報収集。

視覚の強化ね。


だから光の加減が曖昧になる夕刻や明け方に訓練をすることが多い。

でも、騎士団本部の敷地からだと、風景に変わり映えがなくていつも同じ。


でも最近変わったことがあった。

入団して間もない新人君がその時間に外に居ることが多い。


最初、暴力沙汰で団長預かりになったと聞いていたし、暴れて隊長クラスをボコボコにしたって噂されている子って、どんなヤバい新人なのって思ったの。


それも部隊の訓練を免除されているって言うし、みんな不満があったのよね。あいさつも来ない常識がない子。


なぜ、団長がそれを許しているのかって、皆が不満を抱えていたの。


でも、私は知っていたんだ。

朝早くに本部に出勤して、夜は食堂が閉まるギリギリまで訓練していること。


最近は彼を訓練対象にして見ていたんだ。

彼、突然消えたりするんだよ?

よく見ると凄く離れたところにいるわけ。


これって私が見えていないんだぁってなったの。彼の動きを見切れれば私のお給料がアップするかもしれない!


と思って見たものの、未だに全くわからない。



そして今日。とんでもないものを見てしまった。


いつも通り外周を走っているマルトレディル君。それを待ち構えていたちょー美形の男性!


それも知り合いらしい。


そしてちょー美形の男性がマルトレディル君に近づいて『ちゅー』を……

ちょっと待って!!

マルトレディル君には団長という恋人が!


そう!団長が新人の彼にメロメロなの!

だから、すっごく甘やかしているの!


いったい誰なのだろうと思っていたら、突然私の魔法が解除されてしまった。

え?浮遊に隠蔽をかけていた私を見つけて、その私の魔法を強制解除した?


地上に落ちていく中、ちょー美形の男性が私の方を見ていた……気がする。


いったい誰なんだろう?


私は落ちても大丈夫なように、木々の間の張っていた網に落ちた。


これはマルトレディル君に聞くしかない!

そう思い立ち上がるも、網目に引っかかり地面に落ちてしまった。


これ如きで挫ける私ではない!




「マルトレディル君!」


私は宿舎に戻ってきたマルトレディル君に直撃する。


「ねぇねぇ。さっきの人って誰?見たことない人とちゅーしていたよね!団長とその人どっちが本命?」

「は?」


マルトレディル君は何故か首を傾げている。もしかしてマルトレディル君にとってはいつものことだったの!


「金髪のおじさまとさっき一緒にいたよね!」

「あ、グレンバーレル?」


呼び捨て!

それにその名前って……


「魔導師団長様!」


団長!強敵が現れましたよ。

これはもしや団長と魔導師団長とがマルトレディル君を取り合いに……ぐふぐふぐふぐふ。


二人の団長から愛されるマルトレディル君。


「それで魔導師団長様からちゅーを! 

マルトレディル君は魔性の君なのね!」


これはメリッサ様に報告しなければ!


団長に強敵出現!と。



(ということで次話に続きます)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
やっぱり色々通り越し従騎士だから反感は現場で有るんですね。腐女騎士が量産されてて笑えます(*´ω`*)
読み飛ばせません(きっぱり)!
腐女子…いや、貴腐人?それとも 腐騎士という新たなるジャンル?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ