#08ー02
#08-02
山田は、こともなげにそれを捨て、ふぅと息を吐いた。
「いい時間ですね……そろそろ撤退としましょうか」
「はぁ!?」
ラブリータが反射的に叫び、すぐに自分の口を押さえる。
バツの悪そうな笑顔でオーディエンスを意識するように振る舞った。
「えぇ~逃がしませんよぉ~?♡」
ピンクのピコピコハンマー。
その表面には、使いすぎて禿げた銀メッキが覗いていた。
その時だった。
エントランスに――黒いバンが突っ込んできた。
「ぎあぁぁぁぁぁぁぁぁーーーっ!!」
タイヤを引きずったままのバンが急停止し、
助手席からジョシュが転がり落ちてくる。
「ギリギリセーフ……!?」
「いえ、ギリギリアウトです。」
山田の冷淡な声が、場に響いた。
バンのタイヤはパンク、白煙が上がっている。
それでもこの突撃は、現場をさらに混乱させるには十分だった。
「プランBに変更です。」
「おっしゃ!行くぞジョシュ!!」
ノースがジョシュの首根っこを引っ掴み前方の警官に投げつける。
「えーーーーデジャブーーー!!」
非常階段の鉄扉に激突しながら、
ジョシュと警官がもつれ合って転がり出た。
そのすぐあとにノースが駆け上がり、
「はいはい、邪魔どいたーーー!!」と叫びながら警官を蹴り飛ばす。
山田は一歩遅れて階段に入り、
ポケットから端末を取り出してタップ。
「……屋上ヘリ、あと3分」
だがその時、階段の上から――
バン!!
鉄扉が勢いよく開いた。
ノースが顔を上げた瞬間、
鋭い蹴りが顔面を撃ち抜く!
ドゴォン!!
寸でのところで避けたノースが呻く。
「ッッッッぶねぇぇぇええええ!!!???」
現れたのは――
重力の気配をまとった、ひとりの女。
「逃がさないわよ。株悪の連中!!」
スターヴォイド。
ナンバーファイブ・ヒーロー。
彼女の手のひらには、小さなブラックホールが浮かんでいた。
「げぇぇええナンバーファイブまで来ちゃった。」
ジョシュが山田に起こされながら涙をうかべる。
狭い非常階段は、かつてないほど緊迫している。
この狭さでは、大振りなマチェーテは振り回すには中々厳しいだろう。
山田は、ノースの前に出て発砲する。
しかし弾は、そのミニミニブラックホールに速やかに吸い込まれるだけだった。
「まぁ予想通りですね。」
山田は、そのまま駆け出し近接戦にシフトチャンジした。
足と足が交差する。
足と足が交差する一瞬――
スターヴォイドのブーツが、山田の蹴りを回転しながら受け流す。
彼女の動きは、冷静で無駄がなかった。




