royal battle royal③
「ワカメ女とはあの女よく言ってくれたわね」
ジュリオンはじとっとした目でグレイシーを見つめた。
「らん」
シンシアの氷の刃がジュリオンに向かって飛んでいく。
「はぁ!? ちょっと待ちなさいよ! 今話す流れだったじゃないの!?」
ジュリオンはやっとのことで避けてそう言った。しかしシンシアは首を傾げてもう一度。
「らん」
さっきよりひときわ大きめの氷の刃がジュリオンめがけて飛んでいく。
「あんた、空気ってものを読めないのね。でもいいわ。勝負に非情になるって言うならこっちだって! ラン!」
ジュリオンはもじゃもじゃとした髪の毛の中から魔法陣の描かれた紙を取り出しそう言い放った。その紙に書かれていた魔法陣は二つ。
一枚の紙に二つの魔法陣。原理は先ほどと一緒で毒々しい色の水がシンシアめがけて飛んでいく。
「アイスウォール」
魔法陣のショートカット詠唱でシンシアは氷の壁を出現させ、水を防いだ。氷に当たった水は無様に床に散った。しかし水のかかった氷と床はジューと音を立てて溶けた。
「なるほど……毒。でも、関係ない」
シンシアは言うと、10個ほど魔法陣が連なった長い紙を取り出した。そして「ラン」と口にする。
連なった魔法陣が全て光ると、次々に氷の破片がジュリオンめがけて飛んで行った。が、まだジュリオンの顔は歪まない。
「ウォートルウォール」
ジュリオンがそう言うと彼女の前に水の壁が展開された。水の壁は、硬度こそないものの氷の破片の勢いを殺し、彼女まで届かせない。事態は一進一退かのように見えた。
「むぅ。周りに人がいるとめんどくさい。一気にできない……」
シンシアはぶすっとした顔で言った。
「舐めないでちょうだい! あなたはすぐに死ぬのだから。ウォートルドラゴニア。ついでにラン!」
ジュリオンは龍の形をした水を放つショートカット魔法に毒素を放つ魔法陣を合わせて展開した。そのせいで禍々しい色に染まった龍水がシンシアに向かって襲いかかる。
しかし、シンシアはため息をついて落ち着いて言う。
「私の魔法は、氷を直接生成しているわけではないこと……わかってないよね……。ラン」
シンシアは一枚の紙に書かれた魔法陣を展開。さらにシンシアは左手を龍水の方に伸ばした。そして起こったことは……。
毒の龍水が凍ったのだ。
一方シンシアの右手には水から奪った温度が蓄積されている。シンシアはその熱量をジュリオンに向けて放った。
「何よ! ウォートルウォール!」
ジュリオンはすかさず水の壁で防ごうとするが、奪った水の熱量が多い分、水の壁は一瞬で蒸発した。そしてジュリオンの黒い髪の毛がよりチリチリになった。
まぁそれどころじゃ済まされないんだけど。
ジュリオンは全身にやけどを負い、満身創痍でシンシアをにらんだ。
「よくも……よくもやってくれたわね。あんた、ちょっと魔法ができるからっていい気になりやがって。私がどれほどの苦労をしてこの位置についていると思っているのよ」
ジュリオンはそうシンシアに告げるが、シンシアは相変わらず無表情で返事をするのだ。
「へぇ。興味ない」
その言葉でジュリオンはブチギレた。髪の毛を逆立て、恐ろしい剣幕でシンシアを見た。しかしそれでもシンシアの表情は揺るがない。
「私も本気を出させてもらうわ。これはまだ人に向けて使ったことはないんだけどね。王水っていう、金をも溶かす魔の水を使わせてもらうわ。ラン」
ジュリオンは三枚の魔法陣を同時に展開。二つの魔法陣から粉塵が放出され、ジュリオンの目の前でもう一つの魔法陣から出る水にみるみるうちに溶けていく。その水は空中で形を止めると、ジュリオンはそれを手で操作したようだった。彼女が腕を動かすと同時に王水も動いていく。
シンシアは氷の壁で防ごうとするも、王水はみるみるうちに氷を溶かしていく。
「むう」と唸りながらシンシアは後ろに飛び退いた。
王水はジュリオンの操作によって再び大きく動き出した。




