↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
magi code - 俺だけが読める魔法文 -  作者: あまた せい
2章 魔法教会支部が仕切る街、アマネ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/167

いざ潜入③2026

 中に入ると、予想していたほどの活気はなく、店の主人も元気がなかった。客もまばらで、夕飯どきにしては客の入りは少ない。料理が美味しくないのかと心配になったが、入っている客は美味しそうに料理を食べているし、見た目や香りもいい。まずいから人が入っていないわけではないようだ。カウンターの向こうでグラスを拭いていた主人はこちらに気がついたようで声をかけてきた。


「いらっしゃい。何にするかい?」


「おすすめは?」


「とりあえずはビターとサイ豆かねぇ。料理はどれも自信があるよ。とくにおすすめなのはカザツマのステーキだ」


「んじゃそれください」


「私も同じのでお願いするのです」

 アイラもメニューを選ぶのが面倒だったのか、一緒のものを頼んだ。


「お嬢ちゃんビター飲んでいいのかい?」


「私ももう十六なのです。問題ないのです」


「そうかい、そりゃ失礼した。んじゃちょっと待ってな」

 そう言うと主人はビターという飲み物とサイ豆という豆をゆでたものを持ってきた。それを出すと主人はカザツマという魔物かなにかの肉を取り出し、厚切りにしたあと、鉄板で焼き出した。ジュージューと鉄板が音を立て、肉汁がこぼれ落ちる。これは確かにおすすめだけあってうまそうだ。

 ビターというのは酒で、ビールに味が似ていたが、ビールよりは少し苦く、癖があるが美味しかった。しかしアイラの口には少し合わなかったようで、飲むなりしかめっ面をした。


「ははは、嬢ちゃんにはすこし早かったみてえだな」

 主人にからかわれ、アイラは顔を赤くする。


「ビターは俺が飲むから違うの頼みな」

 そう言うと、よっぽど口に合わなかったのか、文句を言わずに素直に言うことに従い、今度はジュースを頼んだ。


「あんたら、見ない顔だね、どこから来たんだい?」

 店の主人は肉を焼きながら問いかけて来た。


「ああ、俺たちはルクスから来たんだ」


「こんなとこにどんな用があったんだい? もしどこかへ行く途中に寄っただけなら早く出ていった方が身のためだよ」


「それはどういう意味なのです?」

 すかさずアイラが訊ねた。


「最近ここらじゃ夜に通り魔が出るんだよ。あんたら聞いたことないかい? 夜のアナウンス」

 そういえば昨日妙な放送があったことを思い出した。


「ああ、あの妙に偉そうな放送か」


「そうさ。あれは通り魔が出るようになってから放送されるようになったんだ。っと、カザツマのステーキおまち!」

 話の途中で主人は料理を出したが、それよりも話が気になってしまっている。肉汁したたる、肉のステーキ。しかし不穏な話題が気になりすぎる。


「おお、うまそうだ。で? 通り魔?」


「ああ。そいつは魔道士を狙う通り魔でな? 魔道士は強いはずなのに夜にグサリとヤっちまいやがんでさぁ。それが毎晩続くもんだから魔法教会も夜の出歩きを禁止するしかなくなった、って流れでなぁ。おかげでうちも商売あがったりなわけだ。酒なんて夜に飲んでなんぼだからなぁ? それに夜の食事の客も店にこなくなっちまうからよぉ。辛いぜ。あんたらもそれ食べたら早く帰った方がいいぜ。じきに夜のアナウンスが始まるからな」

 主人はそう言うと仕事に戻って食器を片付け始めた。だから人が少ないのか。


「アイラ、どう思う?」

 俺は聞いた。


「そうですね……わかりませんが、とりあえず……食べませんか? 早く宿に帰らないといけないのは本当のようなのです」

 意見が聞きたかったのだが、アイラの言うことも最もだった。ここで話し込んで夜時間になっても困る。ということで料理に口をつけることにした。カザツマという魔物の肉は非常にジューシーで美味しくかみごたえもあり、ボリューム満点だった。ファミリーレストランのステーキの何倍もうまかった。しかし、すっかり通り魔について考え込んでしまい、料理を楽しむ余裕はなくなってしまった。

 肉を食べ終えても、残るのは満足感ではなく疑問が浮かぶばかりだった。しかしそこで話し込むわけにも行かなかったので、俺とアイラは主人の忠告に従い、早めに料理を食べ終えることにした。……そして料理を食べ終えた俺とアイラは、料理の感想を話し合うわけでもなく宿へと急いだ。


 宿に着き、自分たちの部屋に帰ってくると、アイラと俺はすぐにさっきの話をすることになった。両方ともそのことしか頭になかったから、どちらともなくその話になったのだ。

「アキヤマさん……さっきの話ですが……」


「ああ、通り魔だってな」

 気になるが、情報が少ない。魔道士を狙う、夜に現れるぐらいしか情報がない。


「詳しく調べる必要があるのです」


「ああ。でも無理は禁物だぞ」

 無理してアイラが怪我をしたら後悔してもしきれないだろうと釘をさしておく。


「わかっています。でもアキヤマさんよりは強いから大丈夫なのです」


「そういうことじゃないだろ。闇に紛れて刺されるんだったら強いも弱いもないし」

 特にアイラは何か無茶をやらかしそうで怖い。まぁ俺が言えたことでもないが。


「わかっているのです! お互い気をつけるのです……」

 俺が心配していることが伝わったのか、アイラは反論するのをやめた。


「その通り魔については慎重に調べることにするか。間違っても夜に出歩いて調べるなんてことはしないようにしよう」


「なのです」


 通り魔の件については『いのちだいじに、でも調べる』という方針になった。RMIで働くことにもなったし、そう急ぐことはない。ルシエラにも聞いてみたりしよう。それぐらいの気持ちでその日の調査と意見交換は終わりになった。お互い明日に備えて早く寝ることにして、アイラはサラに定期報告をし、俺は一足先に眠りにつくことになった。こう一日にやることがあると、よく眠れる。

 普通不安になるような話を聞かされた後だと眠れなくなったりすることがありそうだが、そんなこともなかった。通り魔とは言っても夜にで歩かなければ自分には関係のないことだ、そんなことを思い、そこまでの不安も持たなかったのかもしれない。そうして俺は昨日と同じく不安も持たずすぐに眠りについた。


 しかしその時の俺は気づいていなかった。自分に関係ないとして見過ごしたものがいつ自分に関わる人物に牙を剥くかわからないということに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。