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magi code  作者: ロジカル和菓子
2章 魔法教会支部が仕切る街、アマネ編
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いざ潜入①

 そこは昨日と同じ空間が広がっていた。狭い店内に多くの在庫を抱えている。でもなかなかいい雰囲気をしている。アイラの方を見ると、キラキラと目を輝かせている。


「みたいならまずは適当に店内を見て回るか?」


 あまりにもアイラが見たそうにしていたのでこちらから助け船を出してやる。


「アキヤマさんが言うなら仕方ないですね〜〜」


 せっかく助け船を出してやったのにアイラは渋々といった感じで答えた。しかし、心の中は隠しきれておらず、耳はぴょこぴょこと動いている。どうやら待ちきれないようだ。店内を歩いて回ると、案の定アイラは色々な品物を見るたびに耳をぴょこぴょこさせ、俺に魔法陣や魔法道具の解説をしてくる。


「これは土の魔法!! 土の壁を出すことができるんですって!!! これは水の魔法!! 消火に便利だそうです!!! これは雷!! 放出ではなく好きな位置に雷を発生させられるんですって!!! どれも魅力的すぎると思いませんか!!!」


 なんだか興奮しすぎていつものアイラっぽくない。


「お、おう。どれか買ったらどうだ?」


 ついつい勢いに押されてそういってしまう。


「そうなのです! これから旅を続けることを考えたらやっぱり魔法の新調は必須なのです。でもお金は大切に使わなければなりませんし……」


 どうやらだいぶ葛藤しているようで、頭を抱えている。


「なら、一つだけ買うって言うのはどうだ?」


 また助け船を出してやる。


「それはいい考えなのです!!!それでは他も見て回りましょうか!!」


 テンションが余計に上がってしまったらしいアイラはだんだん早口になっていっている。そのテンションのまま店の中を見て回る。しかし、どれを買うのかは決まらないまま店内を1周することになってしまった。店の中を1通り見終わってもまだ興奮は冷めないようで、買う商品を1つ選ぶだけでこんなに時間がかかるとは。


「まだ決まらないのか?」


 しびれを切らしてアイラに問いかける。


「こんなにいっぱいあったら決めきれないのです……せめて2つ、いや3つなら……」


「んじゃ3つでいいから早く選びなよ」


 このままでは選ぶまでに日が暮れてしまう。


「本当なのです? なら、あれとあれとあれかな……」


 そう言うとアイラはとたとたと走っていき、お目当ての魔法道具を3つ持ってきた。


「3つとも魔法陣でいいのか?」


「素敵な魔法道具も捨てられないのですが……やはり新たな魔法を仕入れることの方が先決かと思ったのです」


 それは正論で、俺が1日目にしようとしたことでもあった。


「それもそうだな。んじゃ買いに行くか」

 商品を持って店主のいる店の奥へと向かうと、老婆姿のルシエラがカウンターの向こうで椅子に座っていた。


「ああ、あんた。また来たのかい? 今度はちいさなお嬢さんも一緒かい」


 いやいや、お嬢さんって、あんたも同じぐらいの歳だろうが。しかしそのことは秘密なので黙っておく。


「はじめまして。アイラといいます。アキヤマさんに話を聞いて来たのです。とりあえずこれをお会計お願いするのです」


 アイラはカウンターに魔法陣を3つ置くと、その合計の値段にあたるお金を差し出した。


「まいどあり。それで? これだけが目的じゃないんだろう?」


 老婆の姿でこう言われると何もかも見透かされてるような気がする。しかし相手は本当は年頃の娘だ。昨日俺の話を聞いたことから導き出したのだろうと推理する。


「ああ。魔法教会支部について。もうちょい詳しく教えてほしい」


「お願いするのです」


 俺とアイラは揃ってルシエラに頭を下げる。


「頭をあげておくれ。商品をまとめ買いしてくれたしね。そんな情報ぐらいなら教えてあげるよ。ただ私が知っていることなんてたかが知れてるんだけどね」


「それでもいい。頼む」


「ふむ。で? 魔法教会の何が知りたい?」


「魔法教会支部の内情を知りたいのです」


「内情か…難しいねえ。私は魔法教会に入り込んでるわけじゃないからねぇ。魔法教会と優先的に取引をさせてもらってるだけなのさ」


「そうなのですか」

 アイラはあからさまに肩を落とした。


「まぁそう簡単に情報が出てくるとは思ってなかったけどな」


「それでも残念なのは残念なのです」


「そんじゃあ別の質問。魔法教会の魔道士は高級店にしか行かないもんなのか?」


 直で情報が入らないなら、魔法教会の魔道士が行く場所で情報を集めればいいという考えだ。


「いや、そんなことはないさね。魔道士だってみんながみんな高級志向ってわけじゃない。市場通りにも行く者はいるし……あとは酒場とかにも行くんじゃないのかね」


 ありがたい情報だ。でも結局酒場で情報を集めることにかわりはなかった。


「そうか、それはいい情報だ。ありがとう。ルシエラ」


「ちょっとさっきからこのおばあさんに対して態度が大きくないですか? アキヤマさん。年上には敬語でしょう? お師匠様の時は許可されてたから黙っていたのですけど、ちょっと気になったのです」


「いや……ルシエラはいいんだよ。まぁ。な?」

 実は老婆が若いということは説明出来ないので言葉に詰まる。


「若者の失礼なんぞに怒らんよ、私は。気にせんでええよ。お嬢さん」

 ルシエラが助け舟を出してくれた。


「おばあさんがそう言うなら……」

 アイラは渋々と言った感じで納得してくれたようだ。なんだかアイラの中で俺は礼儀を知らない奴みたいな認識になっていそうで怖いんだが。


「それでだな? 他に……魔法教会支部の建物に入る方法、とか? 流石にないか」

 手っ取り早い方法をダメ元で尋ねてみる。


「バカを言わないでくださいアキヤマさん。そんな手段があったら苦労しません」


 すかさずアイラがツッコミを入れてくる。しかし。


「いやあるけどのぉ?」と予期せぬ返事が帰ってきた。


「はぁ?」


「えぇ?」


 俺とアイラはふたりして素っ頓狂な声を出してしまった。


「いやあるけどのぉ?」


「いや聞こえてなかったわけじゃないから! 耳が遠いのはどちらかというとそっちのほうだろぉ!?」


「そうです! 驚いただけなのです! それよりその方法というのを教えてくれませんか? ルシエラさん」


「そんなの簡単さね。あんたらがこの店で働けばいいんさね」


「どういうことだ?」

 意図が理解出来ずにルシエラに尋ねる。


「うちは年に何回か魔法教会に商品を大量に運び込んでるんだ。だから店員としてそれを手伝えば合法的に中に入れるさね」


「なるほど。確かにそうなのです」

 アイラは猫耳を動かしながら頷いた。思わぬチャンスに興奮しているらしい。


「それじゃあそれで頼むよ!」


「いいさね。ただし、条件があるさね」


 当然、こちらの要求だけを聞いてくれるとは思っていなかった。どんな条件を突きつけられるのか。


「その条件というのはなんなのです?私たちに出来ることなら頑張るのです」


「条件っていうのはね……うちで働くことさね」


「はぁ?」


「あんたら話聞いてる限りじゃちょっとは魔法についてわかるようじゃないか。うちは見ての通り店員が私しかいなくてね。人手が足りなくて困っているのさ。とくに在庫管理がやっかいでね。最近は倉庫がごっちゃになってしまっているんさね。だからそれを片付けるバイトとしてあんたらを雇わせて欲しいさね」


「その働きってのはお金貰っちゃってもいいのか?」


「あの建物に入るだけで給料なしで二人もこき使うなんてしたらバチがあたっちまう。筋は通すさね」


 それは俺らからしてもありがたい要求だった。旅の資金も今は豊富にあるが、いずれ尽きてしまうことは確かだ。いちいちサラに使いを送ってもらうわけにもいかないので、旅の途中でお金を集めるのは必須事項でもあった。


「やらせていただくのです! ありがたいのです!」

 アイラは喜んで返事をした。


「ああ。俺からも頼む。働かせてくれ」


「ふむ。なら決まりさね。今日はなんかまだやることがあるのかい?」


「そうだな。今日は一応やるべき事は残ってるかな」


「なら明日からかね。あんたら住む場所はどうしてるんだい?」


「市場通りのはずれにある宿に泊まっているのです」


「あんたら旅してるんだろ? 様子からして。その宿の金も節約したいんじゃないのかい?」


「それはそうなのです」

 泊まる宿のお金も馬鹿にならないのは確かだ。


「ならうちの空き部屋を使うといい。どうせ誰も使ってない場所だからね。好きに使うといいさね。明日宿を引き払って荷物を持って朝10時にここに来るといいさね。案内してやるさね」


「ほんとにそんなに何から何までいいのか? 俺らにとっていいことづくしだぞ?」


「いや、そんなこともないさね……むしろこれで足りるだろうかってぐらいさね…」

 ルシエラはやけに引っかかる言い方をした。いったい何があるというのだろうか。しかし、ありがたいことに代わりはないので、受けさせてもらうことにする。


「わかった。ならよろしく頼む」


「お願いするのです」


 ふたりして頭を下げる。そうしてアマネの生活は大きく変化を遂げ、幸か不幸か2人は住み込みの従業員になることになった。

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