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magi code - 俺だけが読める魔法文 -  作者: あまた せい
1章 始まりの街、ルクス編

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深い森の洞窟③2026

 ドーム状の部屋の中心に位置していたそいつに近づいてみると、ドロドロの巨体は遠くから見たのよりもはるかに大きく感じた。

「ブォォォォォォォォォ」

 咆哮も近くで聞くと迫力が凄まじい。


「ラン!!」

 俺はまず火の魔法陣で火の玉を飛ばした。当てれそうな距離まで近づいて放ち、すぐに後退する。飛んでいった火の玉はドロドロの巨体に少しの焦げ目をつけた。

「マジか……」

 思ったよりもダメージが入っていない。


「アキヤマさん!! 私がやるのです!!」

 アイラが交代で近づいていき、ボアをギガプニリンに放つ。しかしこれも焦げ目を少しつける程度の威力しかないようだ。やはり、魔法教会が手こずるだけのことはあるようだ。


「下がれ!! アイラ!! 交代で少しずつ削っていくぞ!!!」


「はい!! なのです!!」

 巨体から放たれる攻撃をかわしながらギリギリの距離から魔法を放ち続ける。しかし、攻撃をかわせる距離からだと、こちらからの攻撃もあまりダメージを与えられない。


「これじゃ先にこっちの魔力切れが来るんじゃないか」

 俺は距離を置いて黒モフ、ないしはサラと通信する。


「ふむ……アイラとアキヤマくんの魔力を使い切っても奴を倒すのは難しいだろうな……」


 やはりか。

 巨大な肉をライターで炙っているような感覚だ。ギガプニリンは基本的にはドロドロの巨体を振り回して体当たりを繰り返すだけなので近づきすぎさえしなければ、攻撃に当たることはなさそうだった。再びヒットアンドアウェイ作戦をしながら、ダメージの与え方を考える。


「やっぱ、あれ。使うしかないよな……でもどうやって?」


「アキヤマさん? 何か思いついたのです……!?」


「……ああ! 作戦を立てる!! 一回引くぞ!!」

 二人同時に巨体から離れようとする。同時だったのがいけなかったのかもしれない。ギガプニリンはドロドロの体から何かの気体をアイラに吹きかけた。アイラは一瞬動きを止め、そのせいでギガプニリンの攻撃に直撃した。


「ぐぅ……ッ!!」

 壁に叩きつけられ悶絶するアイラ。


「な、そんな攻撃もあるのかよ!!!」

 一体何のガスだ?

 アイラはうまく動けていないようだ。毒性のあるガスかもしれない。あるいは麻痺。

 とりあえずはこのままではアイラの方に攻撃が集中してしまうので、火の魔法陣で攻撃して挑発する。もちろんこちらを狙ってガスを吹きかけて来る。おそらくあれを食らうとしばらくは動けなくなる。最悪全滅だ。

 ふと昔やったゲームを思い出した。ゲームの中では死んだらコンテニューできた。でもここではそんなものあるはずない。この世界は魔法という夢のような概念がある代わりに、死と隣り合わせの世界のようだ。


「やいドロドロ!! こっちを狙ってこい!!!」

 俺は大手を振って奴の注意を引きつける。


「ブォォォォォォォォ!!!!」

 挑発するとガスと巨体を使って暴れまわるギガプニリン。さすがに近づくと一瞬で死にそうだったので距離をとる。あんだけ啖呵を切っておいて、やってることはビビりながらちくちく攻撃かよ! なさけねぇ!


「……アキヤマくん!! ……面白いことがわかったぞ!!!」

 再びサラからの通信。


「何だサラ! 攻略法でもわかったのか!」


「……いや……あの魔物の正体だよ……聴きたいかね……聴きたいだろう!!!」

 サラは興奮して焦らして言ってくるが、こっちは必死なので早く言って欲しい。


「時間ないから早く教えてくれ!!!」


 こういう時でもサラはサラらしい。再び動けないところをアイラが狙われそうになっていたので、ヒットアンドアウェイして狙いを自分に向けさせ、距離をとる。


「……アキヤマくん……アブリガスという魔物を知っているかね……?」


「こんな時に講義ですか!!! 要点だけどうぞ!!!」


「……全く……まぁいいだろう……アブリガスというのは……はるか北の都市ロマネの東にある山に生息する……毒性のガスを噴出する魔物だ……」


「何で今そんな魔物の話を?」


「……わからないかね? ……あの巨体を見て……」


「ガス……? まさか?」


「……そう!! ……あれはアブリガスとギガプニリンの合成魔物<<キメラ>>なのだよ……魔法教会め……こんな実験をこっそりとやっていたのか……しかしあの様子を見るに……理性がなくなってしまったのだな……多大な魔力をかけて合成した結果、理性が無くなり暴走……魔法教会の無能っぷりが目に余るわ!!!」

 感情が荒ぶったサラの声が聞こえる。


「合成……そんなことができるのか……」

 そんな事実を告げられても戸惑っている暇はない。再び攻撃を自分に向けさせるために攻撃する。しかし相手もだんだんこっちの避け方に慣れ始めたのか、攻撃に当たりそうになる回数が多くなっていく。

「そんなことがわかっても。このままじゃジリ貧……」


「アキヤマさん!!!」

 アイラはもう起き上がっていた。

 起き上がれるようには回復したようだが、必死の形相で声を張り上げている。


「……何か策があるのか……? ないならアイラを連れて逃げたほうがいい……それぐらいの時間ならこの使い魔でも稼げるだろう……」

 サラは見かねて俺に声をかけてきた。


「ええ。まぁちょっとしたものですけどね。でもアイラの助力が不可欠なんだ……。アイラは風の魔法は使えるのか?」


「……ああ……アイラは火の魔法より風の魔法の方が得意だよ……よし……策があるなら私が敵の攻撃を引きつける……アイラと敵を叩け」


「わかった」

 しのごの言ってる場合ではない。サラの提案に乗りアイラの方に駆けつける。


「大丈夫か? アイラ」


「大丈夫とは言えないのですが……魔法ならしぼり出せるのです。私は……何をすればいいのです?」


「敵をギリギリまでこっちに引き寄せる。そしたら俺の合図で敵に向かって最大の力で風の魔法を放ってくれ」


「風の魔法……ですか? それはいいですが……あの巨体を切り裂くほどの力はないのです……」


「それでいいんだよ。というか切り裂く必要はない。むしろ刃状じゃなくて暴風的なのがいい」


「わかりました。今出せる最大火力の暴風をお見舞いしてやるのです」

 

「ありがとう。頼むよ」

 俺は覚悟を決め、化け物を見上げる。

 これで準備はできた……はずだ。あとはうまくいくのを祈る……。サラの使い魔はギガプニリンから付かず離れずで攻撃を避け続けていたが、ガスを直撃し地上に落ちる。


「ブォォォォォォォォォ!!!」

 ベチャ……。黒いもふもふは巨体に押しつぶされた。


「くそ……」

 あの使い魔も生きていただろうに。酷いことをしやがる。しかし本当に悪いのは魔法教会のくそどもだ。こんな実験を行なって……。偉いからって何でもやっていいってのか。見つからなけりゃやっていいってか。……違うだろ。魔物だって使い魔だって人間だってみんな生きてるんだ。平等な命だろ。

 その命を自ら捨てようとした男が、命について考えていた。

 そしてギガプニリンは動いた。ギガプニリンが次に狙おうとしたのはこちらではなく、最初に弾き飛ばしたプニタローの方だった。確かにこちらよりもプニタローの方が位置的には近かった。でも子供なんじゃないのか。何でそっちを狙うんだ。


「くそやろおおおおおお」

 必死に走って何発も火の魔法陣で火を放つ。ギガプニリンの背中に何発か当たって灼き焦げる。

「こっちを狙ってこい!!!!」

 必死の攻撃でギガプニリンの狙いをこちらに向ける。理性がない分、攻撃の対象はその場の感情頼りになるようで助かった。そこからアイラのいる場所まで必死で逃げた。

 狙ってこいと言いながら、狙わないでと心で祈る。

 決死の逃避行。大股で走る。

 絶対、明日は筋肉痛だ。

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