「俺の許婚……男に興味ないらしい」私「!?」
よろしくお願いします。
ええ……その傲慢な性格じゃなかったら男達が黙って無いほどの、とてもお綺麗な顔がついてるね。染み一つ無い綺麗な頬もモチモチしてそうで、触れたらすごく気持ち良さそう。あとで友達だから良いよね?って言って触らせて貰おうかな。
「うーんと……目と鼻と口がついてますよ?」
「あらっ!大変ですわって……それは当然の事じゃありませんの!?」
私の冗談で少し慌てて顔を触ってる水無瀬さん、何だか少し可笑しくて頬が緩みそう……。
「ふふっ、そうですね。ただ、考え事してて……偶々水無瀬さんの顔に視線が行ってただけです。紛らわしい事して、ごめんなさい水無瀬さん」
「いえ、わたくしも姫ノ宮さんみたいな可愛い方に見られるのは嫌ではありませんですの。むしろ、その桃色の長い前髪の隙間から覗く……大きくて可愛らしいキラキラした瞳で見られるのは嬉しいですわ♪」
水無瀬さんは相変わらず嬉しそうに身体を揺らすから、ドリルがムチのようにビョンビョンとしてて目に入りそうで近づきたくない。それにしても、うっかり水無瀬さんを凝視してたみたい。今は何とか誤魔化せたけど次からは気をつけないと思っていると……。
キーンコーン……カーンコーン……
「予鈴ですわね?まだ時間があると思っていましたけど、楽しい時間は早く過ぎてしまいますわね♪」
「ええ、そうですね。私もこんなに楽しい時間を過ごしたのは久しぶりで、昼休みがあっという間でした。それに転校して友達出来るか不安だったので、水無瀬さんと友達になれて良かったです」
本当に良かった。この町に帰ってきて、こんなにも早くにユウト君の”許婚”と繋がりを持てたのは宝くじに当たったくらいに嬉しい……これから水無瀬さんと一緒にいても、友達だからと言う理由でついて回れる。それで水無瀬さんと居れば、当然ユウト君と話をしても触れ合っても不自然じゃない……。
今は水無瀬さんの友達ポジションだけど、卒業までにはユウト君と昔みたいに愛し合う関係に戻ってやるんだから!……まぁ、卒業までにユウト君がもし……万が一……あるかも知れない可能性で私の事を昔みたいに愛してくれなかったら。二人きりになれる所で、私を愛してくれるまでずっと一緒に居ようね……んふふ。
「ふふふ♪聞きました悠斗。わたくしと友達になれて良かったと姫ノ宮さんが言ってくれましたわ♪羨ましいですの悠斗?羨ましく思っても良いのですよ?羨ましいって言いなさい悠斗♪」
「はいはい……羨ましいよ可憐。これで満足か?」
「むむむ?言葉に心が篭ってませんが今は、わたくしの機嫌がとても良いので許してあげますわ!」
「それは……どうも」
はぁ、なんで水無瀬さんはこんな喋り方しか出来ないのかな……?私のユウト君もあの喋り方を初めは注意してた筈だけど、きっと治らなくて諦めたのかもしれない。だから、苦笑いしながら水無瀬さんと会話してる。ユウト君も困ってそうだし……今後のために少し言っといた方が良いかな?
「水無瀬さんちょっと良いかな?」
「はい、どうしましたの姫ノ宮さん?」
「……その喋り方を、少し直した方が良いと思います。今のままだと、私達以外に水無瀬さんの事を良く思われないと思いますから」
「……直らないのですわ」
まるで苦虫を噛んだような顔ってああ言うのかなって思える顔をしている水無瀬さん。美人だからよけいに迫力のあって、屈辱感がとても出てる。
「えっ?直らないってどう言う事ですか?」
「わたくしも小さい頃から、何度も何度も何度も直そうとしましたが……どうしても、この傲慢で人を見下した喋り方が直らないのですの。一時期、専門のお医者様に見てもらいましたが……お医者様もお手上げだったようでしたわ。困り顔で”世界の意思”かもなって冗談をおっしゃってましたが、今考えるとそうかもしれないですわね。だからわたくしには、姫ノ宮さんに出会うまで仲の良い友達が出来ずにいたのですわ。でも……許婚の悠斗は親同士が仲が良いのでお互い話す機会も合ったせいか、わたくしの事を多少は理解してらっしゃいますから、この忌まわしい喋り方をしても許してくれるのですの」
「そうでしたか……その……そうとは知らずに失礼な事を聞いてごめんなさい。私はその話を突拍子もないと思いましたが、水無瀬さんの辛そうな様子と今までの態度から真実だと思えるのでその話を信じます」
私の目を隠すような前髪と同じで何か呪いなのかな水無瀬さんも?なんだか…その…ちょっと…ほんのちょびっとだけ、同じ呪い持ちとして同情しちゃう。本当に私もこの前髪のせいで好きな髪型に出来なくて、イライラするよね。
前髪全部切っても、次の日には元通りとか……水無瀬さんのお医者さんの言った通りに”世界の意思”を感じちゃうよ!と言うか今まで疑問に思わなかったけど、お父さんもお母さんも髪が黒いのに私の髪の色……桃色なんですけど!?なんで今まで誰もそこに疑問抱かないかなぁ……ってユウト君の両親もたしか黒髪だよね。はぁ、桃色ってどこの地域の人の血を受け継いだら、私みたいな桃色になるのよ……。
なんだろこの髪の色の不思議?ちなみに水無瀬さんも艶の良い銀髪だけど、初めは外国の人かなって思ってたけど。こうなると私とユウト君と一緒で、両親も髪の色は黒かもしれないね。
「わたくしは気にしておりませんわ。いつもの事ですもの。それよりもこの話をしても、姫ノ宮さんのように信じてくれる人の方が貴重ですの。大概の人は……わたくしの話を信じてくれずに、そんなの嘘だ、言い訳だとおっしゃって離れて行ってしまうのですから……姫ノ宮さんにはずっと友達で居てほしいのですわ」
「はい、私も水無瀬さんとはずっと友達で居たいのです」
私がそう言うと水無瀬さんはニヤニヤとした笑顔になったけど、あれですごく喜んでるみたいなのは分かった。他の人から見たら、物語の悪の美人幹部が何か企んでそうな悪そうな笑顔だよね……。口調もそうだけど、表情も変な呪いにかかってるよ水無瀬さん。私も前髪以外にも変な呪いがありそうで怖い……。
「ひ、姫ノ宮さん……嬉しいですわ。これが噂の友情と言うやつですの……素晴らしいですわ」
「んふふ、そうですね。私も友達がいなかったので、水無瀬さんと友達として親交を深めていくのが楽しみです。放課後は各自予定がありそうですから……お昼休みは水無瀬さんと一緒にお昼ご飯を食べたり、お喋りして友情を深めましょう?」
「い、一緒にご飯ですの!トモダチとご飯たべ、たべるのデスノ!」
興奮しすぎで水無瀬さんの言動が可笑しくなってる。
「水無瀬さん少し落ち着いてください、言動が可笑しくなってます……」
「はぁはぁ、ごめんあそばせ……少し友達に飢えてましたので、その……友達とのお昼ご飯を一緒に楽しくお話するのが夢でしたの。いつもお昼は悠斗もどこかに行って近くにいませんし、一人寂しく食べるのはもう……ううっ……辛くて、嫌でしたの。ですが、明日からは!姫ノ宮さんもご一緒にお昼ご飯を頂けるとおっしゃってくれたので、独りぼっち卒業ですわね!」
水無瀬さんが私の手をがっしりと掴んで、宝石のような綺麗な瞳を潤ませて私の目を顔を赤く染めて見つめてくるんだけど……冷や汗がでるし、背筋がゾクゾクする。もしかして、そっち系なの!?まさかね……ってこの目の前ではぁはぁしてる人、確か男向けの恋愛ゲームしてましたよね?
友達居なかったって本人が言ってたし、恋愛ゲームをやりすぎて女の子を好きになっちゃったりしてない……?それにほら?私の髪の色、思いっきり恋愛ゲームに出てきそうな色ですよね……。あと、水無瀬さんが今攻略中のゲームキャラと私の容姿がそっくり……。
「姫ノ宮さんとは同じ学年ですし、暇な時間はずっと一緒に居られますわね。そういえば、まだアドレス交換してませんでしたの。今は交換してる時間もありませんので、次の休み時間は姫ノ宮さんの教室に顔をだしますわ」
「いえ……水無瀬さんのクラスに私が」
「ふふふ、遠慮しなくてよろしいのですわ。わたくし達友達なのだから、私が姫ノ宮さんの教室に行きますわよ♪それに自分の教室は少し居ずらいので、姫ノ宮さんの教室の方が安心しそうなのですわ」
なんでこんなにも積極的なんだろう水無瀬さん……あなたには私の愛するユウト君と言う許婚がいた筈では?と言うか私はまだユウト君のアドレス知らないのに、なんで憎き許婚の方のアドレスゲットしそうになってるのかな!?ちらちらとユウト君の方をみても、「俺もサクラのアドレス教えてくれ」と言ってくれない……。えー……、私はユウト君のアドレスゲットして毎時間メール送りたいのに……。
「二人とも良い加減に教室に帰らないと、午後の授業に遅刻するぞ」
「そうでしたわ!姫ノ宮さん、さあ急ぎませんと!」
「えっええ、水無瀬さん。なんで私の手を繋いだままなんですかー……」
何故か綺麗な白い手に手を繋がれたまま、水無瀬さんの横を走ってる私。
どうせならユウト君と手を繋ぎたい!なんでこうなってるの!
そんな事を思ってたら、横にユウト君が来てくれた!だけど様子が可笑しいような?そうしたら、言いずらそうにユウト君がボソッと私だけに聞こえるようにとんでもない事を呟いた!
「実は可憐はあの手のゲームしすぎて、男に興味ないんだ……。親達も困っていて悪いけど俺も手を焼いていてな。その……いろいろとよろしく」
「えぇ……そんな事言われても……」
「後でお礼はするから、夢から覚めるまで可憐に付き合ってやってくれよ。頼むよサクラ」
それって私がユウト君を狙ってるように水無瀬さんは私を狙ってるって事?ひぃいいいいい!?
狩人だと思ってた私は実は哀れな獲物だったと言うの!私はノーマルだよユウト君、同性とか無いから!私はユウト君の事が大好きなのにどうして、こんな酷い仕打ちをするの……それも相手はユウト君の許婚なのに。もしかして、あの日にした事を根に持っているの……!?
「どうしましたの?そんなにひどく顔を青くして大変ですわ!急いで保健室に行きますわよ。悠斗、わたくし達は保健室に向かうので講師の方に説明を頼んでもよろしくて?」
「ああ、まかせろ。サクラの体調が整うまで、可憐も一緒に居てやってくれ」
「友達ですもの。当然ですわ」
「いえ、とても体調が良いので……遠慮します。午後の授業を受けたいです。受けさせてください!」
「何を言ってますの?こんなにも震えて……可哀想に何でわたくしはもっと早くに気が付いてあげられませんでしたの!」
いやいや、水無瀬さんが原因で震えが止まらないの!良いから手を離してよ、このままだと水無瀬さんに保健室で何をされるか分からないよ……。何でこんな事に……。私はユウト君と昔みたいに愛し合って、一緒に居たいだけなのに。
それなのに……私はどうして何故か顔を赤く染めた水無瀬さんに「保健室に誰も居なかったら……どうしましょう?そしたら……私が姫ノ宮さんを介抱しないといけませんわね」とチラチラと何かを期待した目で見られているのかな?保健室の先生を待つと言う選択肢は水無瀬さんには無いの?
どうせ介抱されるならユウト君に、優しくして欲しいよ。戻ってきてよユウト君!水無瀬さんとチェンジを要求するよ!チェンジチェンジーーーー!
ここまで読んでくれてありがとうございます。
予約投稿分はココまでなので、また溜まったら投稿しようかなと思います。