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ゴブリン騎士と農民姫  作者: 照喜名 是空
次代の章:五年目・春
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村の子供たち

 ◎チュートリアル


 次の日の朝、アーサーはゴブリン騎士に起こされて眠い目をこすりながら道場にやってきた。

 簡易な屋根がつけられた道場には幽霊剣士と数名の門下生がいる。

 皆、顔なじみだ。


「……来たか」

「先生!アーサーも3つになったから剣をならいますのだ!よろしくおねがいしますのだ!」

「……そうか、もう3つか……まこと、時の流れというのは早いな……まあよい、しかと励め……」

「はいですのだ!」


 後ろに立っていたゴブリン騎士もアーサーのきちんとした挨拶に大きくうなずく。


「先生、アーサーをよろしくおねがいします。まだまだ幼いですが……」

「うむ、お前も親らしくなったな……その幸福を大切にすることだ。私はそれができなかった……」

「はい、肝に銘じておきます」

「うむ……それでアーサーの育成方針だが、まずは基礎を仕込む。その上で決める。よいな」

「はい、先生に一から教えていただけるのです。息子も幸運なことというもの」

「うむ……」


 そんな大人同士のやりとりを放っておいてアーサーは顔なじみの門下生たちに駆け寄る。


「クリス!アーサーも剣をならうのだ!これでいっしょにあそべるな!」

「おっ、マジか!やったなあアーサー!お前きっとすぐに強くなるぜー!楽しみだな!でもまだ俺の方が絶対つよいもんね!」

「うむ!クリスは先輩になるのだ!すぐに追いついてみせるからなー!」


 クリスは村の鍛冶屋の次男坊だ。狼の獣人の血が入っていて、獣耳と尻尾がある。

 村の中には獣人や他の種属も多少いるが、やはり少数派だ。

 故に自然と彼らのような獣人やオーク、そしてゴブリン騎士の子たちは集まって遊ぶのが常であった。


「おっ、アーサーじゃん。木剣持ってるってこたァもう剣術習っていいって親父さんに言われたのかァ?」

「トニー先輩なのだ!そうなのだ!アーサーは昨日3才になったのだ!これからどんどん強くなってきっと冒険者になるのだ!」

「おォそりゃいいな!早くでっかくなれよォー!」


 初期の門下生であり、冒険者になったトニーである。

 彼もすでに鉄級冒険者として活躍しており、村の中では成功例といえる。

 トニーはわしゃわしゃとアーサーの黒髪を撫でると笑った。


「さて、数もそろったな……では、朝食前の鍛錬をはじめる。いつも通り、基礎の型からだ……ゴブリン騎士よ。お前はアーサーにつけ。基礎を教えてやるのだ。簡潔にな……」

「わかりました、先生」

「では始め!」


 門下生たちが並び、基礎の型である三連撃を始める。

 その中にアーサーもいた。


「アーサー、まずは見て真似ると良い。こう……右上から斜め下に」

「こうですのだ?」

「うむ、そうだ。左上から斜め下に……バツを書くようにだ。そうだ」

「あの、みんなから遅れてる気がしますのだ」

「入門してすぐは皆そうだ。気にするな。そして右から横一文字だ」

「はいですのだ」


 父親同伴ということもあってアーサーは照れくさそうであったが、それでも初心者なりに鍛錬をこなした。

 剣筋はまだまだへにゃへにゃとした不格好なものであったが、入門一日目にしてはまあ上出来であろう。

 その後も朝食を挟んで組み手の時間となったが、アーサーはまだ組み手を許されておらず、同じような他の初心者と共に基礎の型を正確にこなすように指導された。


「どうだ?アーサー。剣の鍛錬は」

「わくわくしますのだ!早く組み手ができるようにがんばりますのだ!」

「う、うむ。そうか……良い心がけだ。焦らずに励むと良い」

「はいですのだ!」


 ゴブリン騎士は少し驚いた。てっきり子供には単調な反復訓練は退屈だろうと思ったからだ。

 どうやら予想以上にアーサーは剣に焦がれていたらしい。


「蛙の子は蛙、だな……育つ池が濁っていようが、澄んでいようがだ……」

「いやまったくですな、先生……我が子ながらどうなるやら予想がつきません」

「子とはそのようなものだ……元気に、悪に落ちずに育てばそれで良い……」

「はあ……いや、まったくです」


 稽古が終わればお楽しみの時間だ。


「はーい、おつかれだねえー。お店開くよー。ジュースは弟子ちゃんに頼んでねー」

「フ、フヒ……レモネードとオレンジジュース、売りますね……フヒヒ……」


 コボルト術士の駄菓子屋が開くのだ。

 元よりポーションを売るためのものだったが、最近はもっぱらお菓子にジュース、カードゲームを売っている。

 知名度が出てきたので、魔法の道具は普通にコボルト術士の家まで買いに来る客が増えたのだ。

 そして、弟子ができた。年の頃は14,5。道場の門下生と同じくらいの女の子だ。

 陰気で、魔法にあこがれる年頃というやつだ。酒場の三女だが、その気質では酒場で働くより魔女の方が合っている。

 どうせ数ヶ月で飽きるだろうとコボルト術士の元に奉公に出されたが、それがどうして1年以上続いていた。


「エレインお姉さんなのだ!おねえさん、レモネードくださいなのだ!」

「フヒ、アーサーくん……今作るからね……フヒヒ……いつもかわいいね……」

「かわいいと言われてもあんまりうれしくないのだ……でもありがとうなのだ」


 陰気な魔女見習いとアーサーは幼なじみというやつだ。彼女のアーサーに向ける目線は湿気ていた。


「カードやろうぜアーサー!こないだ勇者カード当たったんだよ!デッキ組み直したもんね!」

「おー!それは楽しみなのだ!アーサーも騎士デッキちょっと変えてみたのだ!」

「オッケー!やろうやろう!今日は勝つからな-!」


 アーサーとクリスが地面にボロ布をしいてカードに興じる。

 なんだかんだで、ゴブリン騎士達は村にすでに受け入れられており、子供達は子供達でつきあいがあった。

 この幼少期の友人達はアーサーにとって掛け買いの無い財産になるだろう。

 空は青く澄み渡り、太陽は輝き始めた。今日も穏やかな村の一日が始まる……

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