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剣豪の復讐物語  作者: 大土 土人
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8話 二度目の死

 クリフォードは今、粗末な作りの馬車に乗っている。何でも、王都に行くらしいが今のクリフォードにはそんなことはどうでもいい。


(めっちゃ尻が痛いんですけど? なにこの揺れ具合、この世界の馬車ってどれもこんな感じなのか?)


 そう、馬車がめっちゃ揺れて尻が大変なことになっているのだ。


(これじゃ手がぶれて木刀が作れないぞ。どうしたものか)


 クリフォードは馬車に乗ってる間に木刀を作ろうとしていたのだが、この揺れではとてもじゃないが、木刀は作れないだろう。


(それにしてもどのくらいで王都に着くのだろうか)


 そう思い、手綱を握っているムワナにどのくらいで着くのか尋ねてみる。


「あの、あとどのくらいで王都に着きますか?」


「そうですね…… 」


 ムワナは少し考えてから、


「二日程で着くと思いますよ」


 と、淡々と言う。


(まじか、二日もこの揺れに耐えなきゃなんねぇのかよ。はぁ、どうしようかな…… )


 なんと、この尻が痛くなる馬車に二日も乗っていなければならないようだ。何たる地獄ダァァーと叫びたくなる。


 そこでふと、自分には火魔法の適性がある事を思い出した。適正といっても絶望的に低いが。そこで、


(よし、ナイフに火でも纏わせてみるか)


 クリフォードはナイフを手に取り、木刀に雷を纏わせる領容でナイフに火を纏わせようとする。だが、暴発(ぼうはつ)するのはごめんなので、魔力量を最小にする。


 すると、チロチロとナイフの先っちょに火が出てきた。


(しょぼっ! まぁ、暴発するよりかはマシか)


 そうして、クリフォードはナイフに火を纏わせる練習を始めた。



 そして、二日が経った。だが、王都に着く気配が全くない。しかも、家が一軒も見当たらない。本当に何もない。強いて言うなら、正面にどこまでも続いているように見える森だけがある。本当に王都へ向かっているのか、実は遠ざかっているのではないかと思ってしまう。


 そして、半日が経った。遠くに見えていた森が目の前に見える。


(絶対王都に向かってないだろ! もしかして、俺をこの森に置いていこうとしているのか?)


 そんなことを考えていると、ムワナが喋りだした。


「着きましたよ。さぁ、馬車から降りて下さい」


「……え? 」


 クリフォードから、またもや間抜けな声が漏れる。それもしょうがないだろう。この辺りには森しかないのだ。そこで降りろと言われたら誰でもこうなってしまうだろう。


「どうしました? 早く降りて下さい」


 そう言われてハッとし、両手に木刀を持ち、腰のベルトに蒼いナイフを入れ、最大限の警戒しながら馬車から降りる。


 そして、


「では、今から貴方には死んでもらいます」


「…………………… 」


 クリフォードは驚きすぎて声が出ない。


(なに? 死んでもらうだと? なんでそうなるんだ? 俺が何をした?)


 今、クリフォードの頭の中は疑問符で埋め尽くされている。


「? 聞こえませんでしたか? では、もう一度言いますよ。 今から貴方には死んでもらいます」


 やはり、クリフォードに死んでもらうと言ってるらしい。聞き間違いではない様だ。


「…… な、なんで…………? 」


 クリフォードは声を絞り出して理由を問う。


「それは、我が神が、インデュラ様が望まれたからです」


「…… か、神…………? 」


 全く予想外の言葉にクリフォードは言葉を失った。


「はい、大司教様が神託を受け取り、貴方を殺せとおっしゃりました。それに、貴方はこのマティシンガ国の脅威になり得ます」


「脅威……? 」


「はい、貴方は剣の才能に秀でています。自らの力で木剣を作り、通常では習得に1年ほどかかる身流を僅か1ヶ月で習得し、更には、熟達の剣士が使う纏魔までも習得しました。これ程の人物が敵国のソーディオンへ渡ったら、間違いなくこちらは戦争で負けてしまう」


 その瞬間、ムワナの瞳と髪が黒から灰色に変わり、ムワナの周りに膨大な量の魔力が集まってくる。


「ですから…… 」


 その膨大な量の魔力が無数の大炎に変わっていく。


「クリフォード、貴方を殺す。 【豪火球・五十連】」


 ムワナの周りの大炎が一斉にクリフォードへと飛んでいく。


(来る! )


 クリフォードは刹那の内に身流で身体強化と装備強化を施し、両の木刀に雷を纏わせる。


 そして、飛んでくる大炎を次々と避けていき、ムワナへ近づき、その首を切り落とさんとする。切り落とせなくても重症は避けられないだろう。


「ハアァァァ! 」


 そして、雷を纏った木刀がムワナの首に当たり、コツッという音がした。


「は? 」


 木刀はムワナの首に当たったが、傷1つ無い。しかも、雷で感電する気配もない。


(なんなんだよこいつは!)


「あぁ、それと、ないとは思いますが、もし生き残ったとしてもクリフォード・クルニスの名を名乗らないで下さい」


 クリフォードの驚愕を見向きもせずムワナはそんな事を淡々と言う。


「では、さようなら」


(クソッ! 体が動かねぇ どうなってんだよ! )


 ムワナの手元にはいつの間にか剣が握られている。その剣をクリフォードの心臓に突き刺す。


「ぐぁっっぅ……………… 」


 そして、クリフォードに突き刺さった剣を乱暴に引き抜く。そのせいで、クリフォードの胸から大量の血が噴き出す。


 その時、クリフォードは貧血で目の前が真っ暗になり、体に力が入らなくなっていた。だが木刀は決して手放さない。


 これが最後の希望だから。


「【嵐嘅(らんがい)】」


 その思いも虚しく、クリフォードは森へ飛ばされた。


 この時、クリフォードは飛ばされたこの森が、最強種族、鬼の住むチェワンドの森だと思いもしないだろう。





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