プロローグ
「うっ」
苦しそうな声を上げた声の主、宮本零は勢いよくドンッと大きな音を立てて道場の床に倒れた。
「零、もっと真面目にやれ! お前は宮本武蔵の血を引いているんだぞ! お前は二天一流の跡継ぎになるのになぜこんな簡単なことができないんだ!」
床に倒れたままの零をにらみながら怒鳴っているのは宮本宏人、零の父親だ。
「いや、親父を倒すのが簡単って言われてもな……」
そう、宏人の言うとうり、零は宮本武蔵の末裔だ。零の家系は、代々二天一流を受け継いでいて、剣道場を経営している。
零は、実力もあり、長男なので、跡継ぎになるのは決定事項だ。
「何言ってんだ、俺がお前と同じ17歳の時には先代をぼこぼこにしてたぞ」
「それは、じいちゃんがかわいそうだな」
と、雑談をしていると、
「零くん、大丈夫?」
後ろから声が聞こえた。この声の主は西藤愛乃、なぜか零の彼女ズラしてくるやつだ。零としては、鬱陶しくて嫌いな部類に入っている。
「やっぱり、零と師匠の戦いはすごいな」
そう言っているのは、佐々木宗太、零の友人で、愛乃に片思いしているらしい。
2人ともここの剣道場で、二天一流を習っている。
「おっ、もうこんな時間か、今日はこれで終わりにするぞ。零も先に帰ってろ」
「「「はい!」」」
零の家は剣道場の向かいにある。
「なんか今日は車が多いな。なんかイベントでもあるのか?」
「今日は特に何もないけどなんだろうな?」
「ま、どうでもいいか」
愛野と別れたあと宗太と信号が青になるのを待っていると、後ろから押された。
「えっ?」
物凄い力で押されたことで体感がすさまじい零でも道路に倒れこんでしまう。そして、転生ものにはつきものの大きいトラックが猛スピードで迫ってくる。
(ヤバいヤバい)
すぐに立とうとするが、なぜか立てない。
そして、零はトラックにひかれてしまった。
そのころ、宗太は不気味な笑みを浮かべて「これで愛乃は俺のものだ」と呟いた。
(うぅっ、体中が痛い、力が入らない。何があった……ん、だ。意識が、たもて、ない…………俺は、ここで、死ぬ……の、か。もっと、生き、たかった……なぁ…………)
ここで零は、1度命を落とした。