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53・生徒達の洞穴内探索

前回のあらすじ


学園の生徒達には様々に含むところがありそうだ。


 

「おいデュートリッヒ! ちゃんと歩けよな! ロダリオさんのお荷物に土なんかつけてみろ 寛大なロダリオさんはお許し下さっても 俺は許したりしないからな!」



 スプリントノーゼに滞在すること3日。ファムエル先生からの文が届き、俺達学園の生徒は護衛の兵士達と共にハルメリーに向かう事となった。


 学園のある王都からあまり外には出ない俺にとって、課外授業とは言え集団で何処かに出掛けるのはちょっとした旅行気分を味わえると期待していたのだが・・・現実はこれだ。



「平民はもっと奥詰めろよ」

「荷馬車に乗せればスペースも空くんじゃないか?」

「デュートリッヒ そっちの荷物も積んどけよ」



 学園では貴族も平民も平等と謳っているが平民は貴族の使い走り。それが暗黙の了解となっている。


 正に今の俺の状態と言う訳だ。


 以前この問題をそれとなく教師に投げ掛けてみたが「ここではそう言った人間関係を含め学ぶ場所である」と返され、まともに取り合うつもりがない事を暗に示された。


 これには辟易としたが、取り敢えず下手に出ていれば面倒な事には発展しないので、平民出身の生徒は皆揃って口を噤むのが常態化していた。


 事前に内情を知っていればこんな学園に入学なんかしなかったのに・・・


 でも王立学園の卒業生と言うのはそれだけで箔が付くし、自分の夢の為にもクリアしておきたい課題でもある。こうなったからには我慢するしかないのか。



「ギャッハッハッハ! でよ~そん時家のメイドがよー・・・」

「マジかよっ で? で? どんなだった?」

「それがよ・・・」

「おいデュートリッヒ 菓子袋こっちに寄越せ」


「・・・・・あ うん・・」


「チッ 何だその反抗的な目は 貴族様に向けていい態度じゃないな~」


「ご ごめん・・・なさい」



 はぁ~・・・帰りたい。これなら教室で1人自習をしていた方がマシだ。正直ハルメリーに向かう馬車の車窓から望む景色に何の感慨も浮かばない。旅情もへったくれもない。


 スプリントノーゼから2日。



「やっと着いたのかよ デュートリッヒ 宿まで後どのくらいだ?」


「え・・・ 俺はハルメリーに来た事がないし分からないよ 町には着いたんだからもうちょっとじゃないかな」


「あ? 俺は御者に訊いて来いって言ってんだよ にしても・・・何だこの田舎はよ 雅さの欠片もないじゃないか」

「道もガタガタ 最悪かよ」

「こんなとこ来てまでダンジョン探索とか 勘弁してくれよホント」



 ここハルメリーは王都と比べると緑も多く道は狭いようだ。そこを住人であろう人達が往来している情景から、風土の違う土地に来たのだなと(おもむき)を感じさせてくれたのだが、彼等は違うらしい。


 我が学園のお貴族様方は田舎だ狭い汚いと、道中それはそれは口汚く罵っていた。


 暫くした後、馬車はとある建物の前で停車した。しかし・・・ここが今回俺達の宿泊する宿だろうか。



「おぉー・・・」

「へぇ こんな田舎にも貴族用の宿があるのか」



 この町の様相に似つかわしくない綺羅(きら)びやかで装飾過多な外観はどこか彼等の琴線に触れたらしい。散々不平不満を漏らしていたご機嫌は、たちまち右肩上がりに回復していった。


 現金なものだなと思ったが、これで暫くは此方にとばっちりが来ないと思えばまぁ良しとしよう。


 そこで出された夕食も、いつも学園で食べている食事より見た目も豪華絢爛で味も良いのか、肥えた貴族様方もこれには舌鼓を打っておられる様子だ。


風靡轟(ふうびとどろ)吟遊館(ぎんゆうかん)』とは高級嗜好にこだわる彼等のツボを的確に押さえたお宿らしい。


 正直俺の感性には響かなかったが・・・


 明けて翌朝。


 軽めの朝食を腹に入れ俺達は再度馬車に乗り込むと、今回の課外授業の目玉でもある伝説の探窟家コドリンが発見したと言われるコドリン洞穴に向かった。






 さて・・・冒険者の町と名高いハルメリーであるが、何もダンジョンだけが突出して有名な訳ではない。ダンジョン在るところに冒険者が集まり、冒険者の集まるところに職人が集まる。


 実を言うとハルメリーには以前から来てみたいと思っていた町の1つだ。それは俺がある人物に師事したいと願っている事にも起因する。


 もし時間が許すのであればその人のいる工房の見学を先生に打診してみようとさえ思っていた。


 職人は昔気質(むかしかたぎ)な人格が多いと聞く。それこそ子供の頃からみっちりとしごかれる為、俺のような学校出の職人志望がどう思われるかは心配ではあるが。


 しかし一芸が折れたとき潰しが効かないのもまた事実。先に学園の門を叩いたのは間違っていないと信じたい。


 雑木林の中を小気味良く進む事数分。到着したそこは木々が開け、真正面に隆起した横に長い崖これは断層か? が聳え、入り口と思しき場所はちょっとした要塞を彷彿とさせる建物が侵入する者を拒むように重々しく佇んでいた。


 馬車から降りると要塞の前に数人の男女が俺達を出迎えるように立っている。誰だろう。



「何だコイツ等は 冒険者か?」

「あぁ 確かダンジョンで冒険者の引率がつくとか言ってたっけ」

「まさか・・・コイツ等か? 俺達と変わらないじゃないか 大丈夫なのか?」



 ダンジョンは危険と聞かされていたので、年頃も俺等と変わらない彼等に一抹の不安を抱えても文句は言われないだろう。


 しかしその中に1人だけ大人の女性が混じっている。彼女の出で立ちは王都で何度か見掛けた事がある騎士団のそれだ。


 やはり素人の学生。しかも貴族の家柄の方々がダンジョンに足を踏み入れるのだから「(まか)り間違って」の問題が起きない為の配慮だろう。お貴族様様だ。


 そんな騎士の甲冑を見て将来騎士団志望の生徒達は「やってやるぞ」と息巻いているが、採用試験じゃないんだから少しは押さえもらいたい。無理難題を吹っ掛けられてもそれに答えられる体力は無いのだ。


 そんな事を憂いていると自己紹介とダンジョン探索における注意事項が始まった。



「俺はルミウス こっちがリッタにあっちがエデルだ よろしくな! これからダンジョンに入る訳だけど──────」



 年の頃は俺等と変わらないが、直に実戦に触れてるせいか俺等には無い覇気のような雰囲気を感じた。


 浮わついた貴族の面々もその印象は等しく受けたようで、軽口を叩いていた連中も今では黙って説明を聴いている。


 しかしもう1人。


 その人物が一歩前に出た瞬間。彼の異様性は誰もが気が付いた事だろう。場は静寂を崩してザワつき始めた。


 冒険者には見慣れぬスキルさんを連れ本人に至っては目さえ(つむ)っている。そればかりかこの中にいる誰よりも線が細く小柄だった。とても冒険者には見えない。



「皆さん初めまして 僕は盲目ですがこのハルメリーで冒険者をやってる アネット と言います 僕の隣にいる子が共にパーティーを組んでるマルティナです」


「おいおい マジかよ (めしい)で冒険者なんか勤まるのか?」

「これなら俺だって冒険者になれるわ」


「え でも可愛くない?」

「男の子・・・よね?」

「うん ありだわ」



 これは流石に突っ込みが入った。正直言って自分も「は? 冗談だろ?」と思ったし。どうやらお兄ちゃんに付いてきた甘えん坊の弟と言う訳ではなかったようだ。


 しかし冒険者を目指している生徒達は「本当に居たんだ」とか「情報は正しかった」等々。神妙な面持ちで少年を見ていた。



「えぇとですね ルミウスから諸注意があったと思いますが ダンジョンに入る前にもうひと方紹介したい人物がいます さ 前へ」



 可愛らしい少年の可愛らしい声に黄色い声を挙げていた女子一同だったが、そのもうひと方が騎士の背から姿を現した途端。今までキャッキャ言ってた女子を含め学園生全員の声は示したかのようにパタリとやんだ。


 それもその筈。


 一部女子の標的にされて居なくなってしまった生徒。同調圧力から嫌がらせをされていた生徒。関り合いになりたくないと見て見ぬふりをされた生徒。


 クラスの総意で追い出されたも同然のミストリアさんが居たのだから。


 周りの生徒達の顔を見渡してみると、特に女子など見る見る血の気が引いていっている。



「えぇと 彼女の事は皆さん顔見知り・・・ いえ クラスメートの仲間だったと思います


 彼女は今とある事情で喋る事が出来ません しかし本人の強い意向もあって 今回の洞穴探索に同行する運びとなりました


 折角久し振りの再会なのですから 探索の際にでも旧交を温め合って下されば幸いです」



 そりゃ無理だ。


 公爵家御令嬢の人生を歪めたんだ。目の前の騎士に護衛と称した兵士達。実はこの課外授業自体が仕組まれた処刑の場と勘繰ってしまっても何ら不思議はない。


 皆戦々恐々として和むどころの話ではない。



「まったく いきなり居なくなったかと思えば こんな田舎に引き込もっていたなんて 正直見損ないましたわ!」



 しかしこの沈んだ雰囲気の中。1人だけ声高に挑発と取れる文言を言い放った女子生徒がいた。


 ここコルティネリ公爵領の隣。セルマレイ公爵家の令嬢 ナディラス・セルマレイ その人だ。



 ★



「声が出なくなった程度で 舞台から退場するなんて まったくの無様 そんなことでこれから先 貴族の務めを果たせるのかしらね!」



 一見ミストリアを罵倒する様な文句だけど、感情は旧知の友に再会できた事をとても喜んでいるのかピョンピョンしている。


 それ以外の生徒はと言うと残念ながら恐怖に支配されていた。処刑場に引っ立てられた罪人のように過呼吸気味の生徒までいる。1人を除き皆何かしら心当たりがあるんだろう。罪深い。


 でも一番気になったのがミストリアに恐怖しつつも憎悪の念を彼女に向けている生徒だろうか。


 過去に何があったか分からないけど、今回要注意人物の1人と見て差し支えないだろう。探索中何事もなければ良いんだけど・・・


 今回の洞穴探索にあたり事前に決めていた事がある。それは男子と女子の2班に別れて探索を行う事。


 洞穴内は広い場所と狭い場所、そして上層部とは言え自然道と資源採掘の必要性で掘られた人工の横穴とがある。


 故に不馴れな者が道を違えると方向感覚を失い、また音も反響するため皆と合流する事が困難になる。


 僕達としても流石に冒険者でもない30人以上と言う人数で挑んだ経験が無い為、全体を把握しきれないとの判断によるものだ。


 なので男子グループは僕と騎士団長のエルヴィラさんそしてルミウスと教師のファムエルさん。


 女子グループはエデルとリッタ、マルティナとミストリアの布陣。


 それからハルメリーまで生徒達の護衛についてきた兵士達を半々に分け、各20名くらいに抑おさえたパーティー編成で挑む事にした。


 何故男女で分けたのかと言うと単純に分けやすいと言うのと、ミストリアの意向によるところが大きい。


 件の生徒と洞穴で一緒に行動すれば話す機会にも恵まれるし、これが授業の一環であるなら彼女達も逃げられない。


 この試みがどう転ぶのかは分からないが、解決はできなくてもミストリアの心の整理がつけばそれで良いと思ってる。気持ちにケジメがつけられれば、新たな一歩を踏み出す足掛かりになるからだ。



「・・・・・と言う訳で コドリン洞穴の特徴は鉱石類の産出が主な資源で 中には人体に有毒な物質を含む鉱石も普通に転がっています ですので珍しいからと やたらと素手で触れないよう注意して下さい


 それから分かっていると思いますが 今回はあくまで探索が目的なので 勝手に鉱石を持ち出す事は厳禁です


 これに違反しますとギルドやら国やら 厳罰或いは違約金の請求が発生する場合があります


 以上 今話した諸注意は是非とも守っていただき 今日の出来事を今後に活かせるダンジョン探索を満喫しましょう」


「ではアネット君から言われた通り 男女に別れてダンジョン探索に出掛けよう まずは男子グループが先行だ ここからは冒険者の君達に委ねるとしよう


 生徒諸君は彼等の言う事をきちんと聞いて くれぐれも自分本意な行動は控えるように」



 ダンジョンでは当然モンスターが出現するので、男女とも支給した護身用の剣を携帯してもらった。


 彼等は普段から本物の武器を扱っていないのか、話そっちのけで好き勝手に剣を振り回している。きっと抜き身の刃に気が大きくなったのだろう。


 僕もナイフではなく冒険者が腰に下げている剣を手にしたときは彼等同様とても興奮したものだ。


 しかしこれだけ人数が集まれば、粋がる生徒もいれば緊張にガチガチな生徒もいてまさに三者三様と言った有り様だ。両極端なこの集団を上手く纏める事ができるのか今更ながら心配になってきた。


 そんな彼等を何とか誘導してコドリン洞穴へと入ったが、洞穴内の検疫所付近で順番待ちをしている冒険者達から悪意のこもった視線を浴びせられた。


 聞いた話だと冒険者と貴族は何故だか反目してるらしい。普段洞穴で見掛けない兵士達を連れて呑気に歩いていれば悪感情を持たれても仕方がない。此方も遊びじゃないんだけど・・・


 ここに長居していても仕事で疲れてる冒険者の方々を刺激するだけなので、早々にこの場を離れ探索に乗り出す事にした。


 まぁ探索とは言っても目的地がある訳でもないので、淡々とダンジョンを練り歩く事になるのだが。これじゃ散歩と侮られても仕方ないかもしれない。


 しかも今日に限って洞穴内のお天気は非常に良い様で、空からモンスターが降ってくる事は今のところ無い。このままではファムエルさんのオーダーを叶えるのは難しそうだ。



「なぁ これいつまで歩いてればいいんだ?」

「モンスター出てこねぇじゃん」

「デュートリッヒ ちょっとモンスター釣ってこいよ」

「む 無茶だよ・・・」



 何の変化も無いせいかダンジョン探索にも飽きてしまったようだ。最初こそ気を引き締めていた彼等だったけど、今では注意も散漫になって私語も出ている。


 ついには興味の矛先が僕にも向けられるようになってきた。



「なぁ 盲目の・・・ アネット・・ だっけ? 本当に冒険者なの?」


「え うん そうだよ? まだまだ駆け出しだけどね」


「へぇー まっ さっきからモンスターも現れないし 目が見えなくても冒険者って案外簡単にやれる仕事なのかな」

「これなら俺らも空い時間に ちょっとした小遣い稼ぎで冒険者出来るんじゃね?」

「そう言えば ウチのクラスにも将来冒険者目指してる奴もいるし 良ければちょっと手合わせしてくないかな 現役の冒険者の強さってのが分かれば 彼等の参考にもなるじゃないか?」


「え そう言うのはちょっと・・ それにここはダンジョンの中なんだし いつモンスターが襲ってきてもおかしくないんだよ?」


「え 何? 怖いの?」



 う~ん。ファムエルさんからはこうなるんじゃないかと事前に言い(ふく)められていた。なのでこれに関しては止めなくても良いと打合せをしてある。


 冒険者の基準を僕で計られても困るのだが、ファムエルさんからは「学園では体験できない事」の注文を受けているので、そのオーダーに答えるには丁度良い機会かもしれない。


 こう言う絡まれ方をするは昔のディゼル達を彷彿とさせるので気乗りはしないが、この様な諸々もきっちりと熟してこそ「冒険者として良い仕事をした」と言えるのではないだろうか。


 それに学園生の実力と言うものにも興味がある。さて・・・その実力や如何に。



 ★



 今回のダンジョン探索の仕事をミストリア様から依頼された時、正直渡りに船だと思った。


 と言うのも()()()()()()()の妹。シルヴィーから少年と懇意にすると良いと言われていたのだが、接点も無い歳の離れた少年とどう接触して良いのか分からなかったからだ。


 初めて少年と出会ったのは例のモンスター襲撃事件の事。怪我を負ったのか彼は包帯をグルグル巻きにされていた。


 事前の打ち合わせの場で、その時の事を思いだし「今は全快してるようだな 仕事に支障が無いようで何よりだ」と言う事を伝えてみたが、それ移行会話が続かなくなってしまった。


 職業柄どうしても言葉が固くなってしまうが、そもそも私自身会話が不得手なのだ。


 いわゆる報告・連絡・相談であるなら何ら問題はない。仕事と割り切れば口も達者になるのだが、何気ない会話を意識して話そうとすると途端に言葉が出なくなる。


 それでも今回2班に別れると決まった時には、何とか少年と同じグループになれるよう戦力分析の概念を餌に熱弁して見せた。


 本来であるならミストリア様の御身(おんみ)をお守りするのが騎士団長としての責務なのだが、この機会を逃しては或いは一生少年に近付く事が敵わないであろうと直感した私は、今回不本意ではあるが強引な手段を選ばせてもらった。


 当日。


 やはり学園の生徒に質を求めるのは間違いだったか。信念を欠いた者達の行進など蟻の隊列にも劣る。


 戦地に足を踏み入れたにもかかわらず、直ぐに気が抜けると警戒も怠って会話を始める始末。挙げ句はアネットを挑発しての戦闘だ。


 事前の打ち合わせ通り「流れに任せる」事になっているので、ここでは口も手も出さないよう自制するが・・・


 気にはなる! ならない方がおかしい!


 どうして盲目で冒険者なんかやっている! ギルドは止めないのか? そもそも剣を扱えるのか? ここまで遅れる事なく歩いてるみたいだが。


 ん? 盲目で我々と同じように歩けるものなのか? 疑問は尽きない。


 冒険者志望の生徒とアネットの一戦が始まった。



「よっしゃ いけいけー!」

「学園で培った技術を見せてやれっ!」



 しかしこの少年はそんな細腕で剣が振れるのか? しかも盲目なのだぞ? それとも妹の様に『予見の目』で数瞬先でも読んでいるのか。


 背も小さく戦闘の才能がまるで見られない。私と1合打ち合っただけで吹っ飛んでしまいそうだ。もし少年が手傷を負ったら・・・いや、そうなる前に割って入るべきか。


 そうすれば接点もできて今後良好な関係を築いていける足掛かりにもなる。



「おい アイツ剣を止めたぞ」

「本当に盲目なのか?」



 しかし・・・


 それを差し置いても私は気を付けなければならない事がある。


 何故なら・・・


 今まで何人もの年下の部下から告白を受けた事があるからだ! どうやら私は年下の男の子に慕われるお姉さんであるらしい。


 時に叩きつけ。時に罵り。訓練の為とは言ええげつなく体をいじめ抜いた事もあった。嫌われて当然のところ何故か彼等から交際を申し込まれ続けたのだ。



「マジかよ押されてるぞ!」

「どうなってんだ? あんなちっちゃい体にどんな力があるんだよ!」



 冗談か新手の意趣返しかとも思い激しく糾弾し執拗になじった事もあったが、彼等の顔は一様に紅潮し息遣いも荒くなっていた。


 もしかしたらアネット少年もこんな私に劣情を催してしまうのではないだろうか。


 でも今回ばかりはダメなんだ。



「いや・・・ 力じゃなくて剣術が達者なんじゃないか?」

「確かに 立ち回りも相手を翻弄している感じだ」



 その感情は我が妹に向けてもらわなけれならない。そもそも少年との関係を望んでいるのは妹なのだからな。


 もし少年が私に劣情を催した場合、キツく突き放すかそれとなく断るか。今後の関係を考えるならやはり後者か。



「この盲目侮れないぜ」

「もしかして俺達より強かったりして?」

「まさかだろ いくら強くてもこっちにはロダリオさんがいる」

「だな」



 しかし少年が私を諦めきれなかったら? それでは妹との関係に不和を招いてしまうかもしれない。


 もしかしたらこの問題。私史上1番の難関かもしれないな!



「ロダリオさんが出ればいくらアイツでも─」

「あぁ 彼の剣術に敵う奴なんか────」

「もう勝負がつきそうだな 次は───」

「あぁ 今度は────────」

「・・─────────」





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― 新着の感想 ―
[良い点] 妹さんは盲目さんのスキルでアネットが選ばなかった方に舵を切った役割を担っている感じですが、その姉の方が性癖的に危ないのが面白い。高級娼婦に続いての歳上のヒロイン役で悪くないです。
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