30・商人バードラット
前回のあらすじ
ラトリアの過去話を聞いた。
今日もミストリアを伴って冒険者の仕事を熟す。彼女の様子だけど出会った頃と比べれば大分良くなった。
薄かった感情も淡く色付いて、それはちょっとした体の動きにも表れていた。
まだ自在に魔法を操れないみたいだけど、1度きりとは言え魔法の片鱗を見せたのだ。また使える可能性は十分ある。
切っ掛けはちょっとアレだったけど前向きになれたのだからそれで良しとしよう。
それで今回の仕事内容だけど、町の外が不穏な状況なのでポリアンナさんには近場の雑木林でできる仕事を見繕ってもらっている。
それはモンスター退治ではなく食料確保の為の動物狩り。狩りと言う事なので先日冒険者登録をした狩人でもあるカルメンに協力を仰いでみた。
「はいはいはい! いくいくーーーーー!!」
突然のお願いに二つ返事で了承してくれたが、ミストリアを見た途端「その子だれ・・・」と警戒感をあらわにしてしまった。
人見知りするタイプには見えなかったんだけど、何故かミストリアを見ながら「むむむむむ~」と唸っている。
「じゃー2人とも~ ここは私の庭みたいなものだから ちゃんと後をついてきてねー 狩人さんは索敵お願いねー」
『あいさー』
“狩人さん”を上に飛ばしたカルメンは、雑木林の藪を掻き分けながら付き進んでいく。
流石は生粋の狩人か、その音は以前狩りに同行した時よりも明らかに静かになっていた。カルメンもちゃんと成長しているようで何だか嬉しい。
ところが・・・
『アネット~ その先悪い予感がする~』
と”盲目さん“はまるで何かを暗示するのように囁いてきた。“盲目さん”のこの発現はこれで2回目だ。
1度目はそれを無視して突き進んだ結果ディゼルと鉢合わせた。しかしこんな雑木林にディゼルはいない。
その意味するところは・・・・
「カルメン 上空の狩人さんは前方に何があるか見える?」
「んー 狩人さんと契約して日が浅いからねー まだスキルを使いこなせてる訳じゃないんだけど~ 前方は・・・・・なんかいつもと違う感じ?」
「場所的に多分モンスターの群れか 対処が難しいモンスターだと思う・・・」
「うへ~ このメンバーじゃ 相手にするのは不味いよねー じゃ 違う方に行こー」
「うん そうしよう・・・・と言うよりカルメンなら平気で突貫しそうなイメージがあったけど 以外に冷静で驚いた」
「アネットは私をどう言うふうに見てるのよ~! ぶぅ! 狩人の本質は狩りであって戦いじゃないってお母さんも言ってたんだー
少しでも無理だと思ったら引き返す決断は何より大事だって 子供の頃から耳にタコができるくらい聞かされてるんだよねー」
お調子者でふわふわしてるカルメンが狩人としてやっていけるか心配だったけど、状況を見て直ぐ方針変更した判断力に頼もしさのようなものを感じた。
その後一匹の鹿を狩って本日の仕事は終了。
トラブルらしいトラブルは無かったけど、敢えて言うならミストリアの手が傷だらけになってしまったくらいか。帰りがけカルメンの家で傷薬を塗って事なきを得た。
今回の仕事はギルドの依頼なので以前のように血抜きはしない。そのままの状態で町の入り口近くにある解体場に届ける事になる。
その途上、またもや『その先危険~』と“盲目さん”からの忠告を受けた。
ここはもう町中で、しかも人通りの多い大通りなんだけど・・・ またディゼルとはちあわせてしまうのか?
分からないけど僕達は“盲目さん”の言葉を信じて裏の小道から迂回してギルドを目指す事にした。
ギルドに到着するとカウンターに報告する。手続きを終えてホールに入ると、周囲の空気がザワついている事に気が付いた。
「アネットー 何かね 私達が行ってた雑木林でモンスターの大群に襲われた人達がいたんだってー」
「え? それって大変な事じゃない? やっぱりモンスターの分布がおかしくなってるせいなのかな」
「分かんないけど 怪我して運ばれた人もいるって」
“盲目さん”は当てずっぽうを言ってた訳じゃないのか。危険を察知するスキルなのかな?
「盲目さんの言ってた事が本当になったみたいだね もしかして見えてたの?」
『違うよ~ 何と無くそう思っただけ~? でも使っていけばもっと見えるようになると思う~』
「先にある危険が正確に分かるって事か・・・」
『違うよ~ 《予見の目》って言うスキルなんだけど 危険じゃなくって先の未来? みたいな感じ?』
「それって・・・ 凄いスキルなんじゃ・・」
このスキルさえあれば安全に冒険を堪能する事ができる。しかし僕はフト思った。
安全な冒険って何だろう。
その2つは相容れない。
このスキルに頼れば危険は回避できるかもしれないけれど、冒険者としては成長を阻害する要因になる気がする。
それは僕の望む人生ではない。
「盲目さん 教えてくれるのは嬉しいんだけど そういう事は自分の肌と勘で感じたいんだ」
『わかった~ じゃ~《予見の目》は使わないね~』
“盲目さん”が予見の目を使わないと言った途端、感覚が別の方向に向かった気がした。
これがスキルが分岐すると言う事なんだろうか。
「そう言えば カルメンはスキルの分岐については知ってる?」
「うん お母さんに習ったー」
「ちなみに将来 どういうスキルを習得したいとか もう決めてるの?」
「ん~~~~ そこちょっと悩んでるんだよね~~ まー 多分お母さんと同じようにするとは思うけど~
狩人さんのスキルって 弓だけじゃなくナイフや罠とかもあるんだよねー 後は気配や音や臭いを消すスキルだったり
面白いのだと血抜きのスキルなんかもあるんだよ? 以前他の狩人仲間の人が見せてくれたんだけど 血が一気にドバドバ出て気持ち悪かった
でもお母さんは狩りに必要なスキルしか取ってないんだー それも弱点を突くスキル以外はほぼ補助系に回してる感じ?
中には罠一択って人もいるし 成果が出ないって訳じゃないから そこら辺はやっぱ好みなのかな~」
やっぱりスキルが開示されていると色々悩めて羨ましい。
僕達がスキル談議に花を咲かせていると、丁度仕事を終えたマルティナとソフィリアがカウンターまでやって来た。
「マルティナお疲れ様 ソフィリアの良い子にしてた?」
「お疲れー」
「ソフィリア良い子にしてたよー」
「あっ! カルメン!? あんたあの商人に何かされなかった!? 変な契約とか強要されてないでしょうね!!」
「へ? 別に何もされてないよー ギルドで話聞いただけだしー あ でも バードラットさんのお店で食べた料理は美味しかったよー! お父さんもお母さんも喜んでた!」
「そう・・・まぁ 無事ならそれでいいけれど・・・」
「マルティナ 人疑いすぎー」
カラカラと笑うカルメンの様子から、ひとまず無下な扱いはされていないようで安心した。
マルティナもラトリアも彼を快く思っていないようだけど、取引相手にはきちんと礼を尽くすなら話の分からない相手ではないだろう。
僕はバードラットさんに直接会う決心をした。
ギルドからの帰り際カルメンを呼び止めて、こっそりバードラットさんのお店の道案内をお願いした。
勿論僕1人で交渉に望むつもりだからだ。
ミストリアを連れていけば権力を背景にした話し合いも出来るだろうけど、それは公爵家を巻き込む事になりかねないし、彼女を道具にするようで憚られる。
翌日。
自宅を出る際に気取られないよう「ちょっと買い物してくるよ」と何気なくマルティナに告げた・・・つもりだったんだけど、どういう訳か後を付いてくる。
「えぇと・・・マルティナ? 近場で買い物するだけだから 別についてこなくても平気だよ?」
「ふぅん そうなんだ じゃぁ別についていっても問題ないよね?」
「う・・・うん まぁ・・・」
どうしよう。何だかとっても疑われてる。ミストリア以上に連れてきたくなかったマルティナがずっとついてくる。
無碍にしくはないけれど、事情を話せば絶対反対するし、バードラットさんに会おうものなら話が拗れること請け合いだ。
何とか言葉を絞って家に帰そうとしたけれど、マルティナにも意地があるのか中々帰ろうとしない。
結局ずるずるとカルメンとの待ち合わせ場所まで来てしまった。
「デ・・・デー・・ト・・・?」
「あれ~? 何でマルティナがいるの~?」
「・・・あの・・実はね バード・・」
「私達これから2人でお食事するんだよー」
「え・・何で・・」
「え~? 男の子と女の子が食事するのに~ 理由とかいるー?」
「むむむむむ・・・・」
「違うんだマルティナ 実はバード・・・」
「だったら私も行くっ!! 男の子と女の子が食事するのに理由は要らないのよね!? だったら私が行っても何の問題も無いもんね!?」
「えーー!! 何でそうなるのよーー!!」
僕の言う事など聞く耳持たずの2人は、目的地のお店に到着するまで言い争い通行人の注目を燦々と浴びていた。
「え? あの・・カルメン? ホントにここでいいの・・・? 間違ってない・・わよね?」
「うん ここだよー」
目的地に到着したらしいが外観にでも圧倒されたのか、ここに来てマルティナが狼狽している。
「ねぇここ 結構高いお店じゃない? 大丈夫なの? 払えるの?」
「さぁー? 私はアネットからこの前食事した商人の人のお店に連れていって欲しいって言われただけだもんっ!」
「この前のって・・ どういう事よアネット! あんたまさか私達に内緒で 1人であのエセ商人に会いに行くつもりだったの!?」
「えと・・・まぁ うん・・・」
「ちょっとなに考えてるのよっ!!」
案の定こうなった。
往来の真ん中でお説教が始まりカルメンまで加わって、女の子2人の金切り声が広い道に木霊した。
それが余程姦しかったのか、店の奥から従業員と思しき人間がドカドカ苛立たしげな感情を足音に乗せて僕達のところまでやって来た。
「申し訳ありませんが 他のお客様のご迷惑となりますので その様な痴話喧嘩などは他でなさってくださいますよう お願い致します」
「痴話喧嘩だってー」
「そ・・そんなんじゃありませんから!」
内容は兎も角僕達は今周囲から多くの注目を集めてしまっている。しかしその視線がどれもが軽蔑と嘲笑の感情である事から、ここが僕達にとって場違いであると思い知らされた。
マルティナが感じ取った空気はこう言う事だろう。
「あのっ バードラットさんにお会いしたいのですが 冒険者のアネットが会いたいと言伝てをお願いできませんか?」
僕の名を聞くや否や従業員の心からは一切の奢った感情が消えた。それどころか最上級のおもてなしをする真摯な気持ちに置き換わっている。
その変化は声色と言葉尻からも窺い知る事ができた。どうやら良く訓練された従業員らしい・・・何か怖い。
「アネット様ですね? どうぞこちらへ 応接室にご案内致します」
「ちょっ! アネット!? 本気で行くつもり!?」
「うん 今何かしなければ ラトリアも僕達も きっと心に悔いを残す事になると思うんだ それに現状を変えたければ 今をおいて他にないと思うし・・・ マルティナは無理そうなら帰っても良いよ?」
「わっ! 私だって! ラトリアの為だもん 当然付いていくわ!」
★
部下が「例の少年」が会いに来たと言ってきた。餌は撒いたが昨日の今日で食い付くとは・・・
はてさて盲目の少年は私に何を望むのか大変興味はあるが、大金をかけるに値する取引である事を願う。
客を待たせるのは私の流儀ではないが、今回は敢えてそうした。と言うのもあのアネットという少年、どうにも此方を見透かしている感じがして気味が悪い。
警戒は怠るなと商人の勘が告げている。何の話かは知らないが主導権は握りたいものだ。なので多少待たせて心を揺さぶる事にしよう。
しばらくの後。私は努めて優雅な足取りで応接室へと向かった。
「これはこれはアネット殿に皆様方 ようこそお出でくださいました 本来なら本店の方にいるのですが 今日は所用がありまして たまたま此方の店に来ていたのですが すれ違いにならなくて良かった」
「こんにちわバードラットさん 本日は事前に連絡もせず直接会っていただき 有り難うございます」
ふむ・・・態度に変化無し。アネットと敵意むき出しの少女に撒き餌の少女の3人か。
ミストリアがいないところを見ると貴族関係の話ではなさそうだな。彼女とはお近づきになりたかったが残念。
「それで私に会いたいと言う話ですが 一体どのようなご用件でしょう」
「・・・・・それが 僕の友人の話なのですが・・・・・」
それからアネットはその友人、ラトリアと言う少女とその家族について語りだした。
つまりは情報が欲しいと言う事か。
彼等家族を貶めた商人の事情は知っている。しかし・・・奴の事となるとどこまで話して良いものやら・・・
「・・・・と言う事なんです」
「成る程 掻い摘むと 剣の所在 或いは消えた盗賊に関しての情報が欲しい・・ と言う事で宜しいですかな?」
「はい・・・」
「ふむ・・・ちなみにですが その情報においくらほど出せますか?」
「その事なのですが 値段の見えない情報と言うものの相場がいまいち分かりません ただ・・・情報1つで状況は一変するものと考えると 決して安くはないと思うのですが」
「そうですね 概ね正解です」
「ちょっと! 何も知らないと思って値をつり上げる気でしょ!?」
やれやれ・・・この少女はこの場に相応しくないな・・・ とは言えアネットに近しい人間なら無体にできないのが辛い。
しかしここはアネットの後学の為にも説明しておいた方が良いだろう。
「そうですねぇ 今ある情報を話すのと これから調査するのとでは やはり値段は違ってきます
それにこの手の類いの人間に近付くと言うのは相応のリスクが伴い 下手をすると死人が出ます」
「死に・・・」
「つまり 情報は人の命と等価と言えます
勿論それに携わるのは諜報活動の訓練を受けた者達なのですが・・・ 彼等の連れるスキルさんは盗賊さんや狩人さん等 諜報に向いたスキルさんであってはいけないのです
何故なら相手方もそれは重々承知しているので まず警戒されます
なのでそれ以外のスキルさんを持つ人間を 盗賊さんや狩人さん並に活躍できるように仕込みます
それには途方もない時間と労力そしてお金が必要で それでもスパイと見破られれば殺されます
つまり命の値段+諸経費+希少価値で 個人でご依頼なさるには 上級冒険者の方でも厳しいものがありますね」
「そう・・ですか・・・ 僕ではとても手が出そうにないですね・・・」
「で・す・が それはあくまで調査を依頼された場合であって 現在保有している情報の値段ではありません」
「それは僕でも買える値段ですか?」
「金銭で・・・と言うのは少々面白味に欠けますので・・・・ どうでしょう 我がカストラ商会と契約をしてみませんか?」
「契約・・・ですか?」
「契約と言っても小難しいものではありません 単純にアネット殿とカストラ商会が懇意にしていると言う既成事実を作るのです」
「そんな事で良いのですか?」
「ちょっとアネット! そんな契約結んじゃダメよ! ラトリアの事忘れたの!? こんなの絶対裏があるに決まってるんだからっ!」
「はっはっは 当然裏はありますとも まぁ 有り体に申し上げれば アネット殿には今後とも冒険者として活躍して頂きたいのです 我々はそのバックアップをする
あなた方はあまり自覚が無いご様子ですが 『盲目の冒険者アネット』の名は今や各方面に広く知られているのですよ?
マイナス等級のスキルさんに魅入られ人生の崖を転がり落ちる筈の人間が ハンデを乗り越えて危険な冒険者の世界に足を踏み入れた
良くも悪くも世間はそんな貴方に注目している しかし・・・
同じ境遇の者達にとって 貴方は一筋の光でもあるのです」
「・・・・・・慈善事業でもするつもり? その流行りに乗っかって自分を売り込もうって魂胆なの? 他人の不幸に漬け込んで 自分が恥ずかしいとは思わないの!?」
「いいえ 全く? 何せ私 商人ですから 寧ろこれは大きなチャンスですともっ!」
「最悪!! したり顔してっ! そもそもアネットを持ち上げるなら どうしてあの時ディゼルに味方したのよ! あんたのせいでアネットは1週間の謹慎くらったんだからね!」
「あ~・・・マルティナ 多分あの結果に落ち着かなかったら ディゼルの性格上絶対に引き下がらなかったと思うよ?
一番良い対処法は相手を満足させて興味をそらす事 バードラットさんは無理やりそこに持っていったんだ ですよね?」
「え・・・何で・・・・逆に助けた・・って言うの? そんなニヤけた顔して・・・人を虚仮にした物言いをしておいて・・・」
「・・・・バードラットさん それ演技ですよね? もう必要無いと思います」
「そうですか? まぁ対外的にこの方が受けが良いし 色々と便利なのですが・・・」
「え・・・・・え!?」
「わー! 渋いおっさんになったー!」
「しかし よく此方の意図する事に気付かれましたな 大抵の者なら敵愾心を燃やせど 味方している等と 中々思わないものですが」
「ディゼルとは昨日今日の付き合いではありませんから・・・ 後見人を努める貴方も ディゼルの性格は商人と言う性質上把握しているかと・・・
それに 彼は他人の目を気にしないで自分の望む道を歩んだ方が自然に生きられる気がするんです でも僕の言葉では 結局彼を動かす事はできませんでした」
「確かに・・・ まぁ元の性格によるところも大きいですが 物心つく頃から利権が生み出す人間関係に固められていましたからね
彼も彼なりの葛藤があったからこそ 貴方と言う存在を羨んだのでしょう」
「僕は・・そんな人に羨ましがられる人間じゃありませんよ」
「いぇいぇ 自己評価と他人の評価は 得てして違うものです
さて 話がそれましたが・・・ どうです? 試しに私が提供する依頼を1つ受けてみられては 今のあなたに見合ったお仕事を見繕わせていただきますよ?」
「ちょっと待ったっ!! ギルドは冒険者の利益を均等に扱う為に 他者から直接依頼を受ける事を禁じてるわ! これは明確な規定違反よっ! 言質は取った!!」
「・・・う~ん マルティナ 多分それギルドは黙認してると思うんだ・・・ ですよね? バードラットさん」
「はい その通りです」
「はあぁあー!? 何でよっ!!」
「その理由を端的に申しますと ギルドとしては仕事の失敗を恐れているからなのです
当然仕事が滞る事も問題なのですが 1番嫌なのが 冒険者が死亡する事 次いで再起不能の怪我を負う事です
何故なら冒険者が死亡された場合 残された家族に対する保証をしなければなりません そのお金を出すのがギルドであり その保証があるから冒険者になると言う方も多いですからね
しかし皆が皆 冒険者として大成できる訳ではない 依頼する側としても契約不履行は避けたいですし ギルドとしても死傷者を出したくないと言うのが本音です
そうなると 腕の良い冒険者に依頼が殺到するのは自然の事で それを不満に思った他の冒険者からの声で 依頼は平等に扱う と言う取り決めができました」
「つまり表向き平等の依頼と言う名目で掲示板には貼り出すけど 細かい報酬金額が特定の冒険者へのメッセージ と言う事らしいんだ ・・・僕も最近知ったけど」
「な・・・何よ・・それ・・」
「世の中綺麗事だけで出来てる訳ではありません ギルドだって営利団体ですから」
「何だか・・・思ってたのと違う・・ ギルドの事も・・・・ 子供達の面倒も見るし もっと良い所だって・・・」
「マルティナ・・・・良いものは良い 悪い事は悪いで良いと思う
でも現実は物事の良し悪しに関わらず 僕達の身近に存在してるんだ 聞きたくない見たくないと塞いでしまったら 知らず知らずに巻き込まれている可能性だってある
だから僕達は好く嫌うを別にして 知るべき事は知らなきゃいけないと思うんだ
それができなければ改善どころか 失敗の理由すら見付けられないまま燻る事になるからね
僕達はもう そう言う世界にいるんだよ」
「アネット・・・」
フフフ・・・良いぞ。
普通この年頃の子供は納得いかない事に駄々をこねるものだが中々どうして達観しているではないか。
目の前の現実を素直に受け入れる感性。柔軟な思考。やはりハンデをはね除けるだけの事はある。
できる事なら私の手足に加えたいところだが・・・今は信頼関係を構築するのが最優先。
事を急いて逃げられてはミストリアどころではないからな。
「如何ですかな? 私と契約して下されば その様な煩わしさから 多少なりとお守りする事もできます それに・・・
今後もし 剣の所在 ないし 盗賊の情報が私の商売上 偶然にも入手できた場合
カストラ商会はその全てを偽る事なく アネット殿に開示することをお約束しましょう」
「何故・・・・そこまで譲歩して下さるのですか? 僕が貴方と契約したとして あなたの望む成果を出せない可能性だってあるのですよ?」
「確かに 目を張る活躍があるに越した事はありませんが 先程も申した通り 今注目を浴びているアネット殿と懇意にしていると言う事実が欲しいのです
世の中 値札が付けられている物にだけ 商品としての価値があるのではございません 此方としても色々と得られる物もあるのです」
「・・・・・・・・・分かりました 取り立てて何をすれば良いのか分かりませんが 取りあえずバードラットさんの依頼を受ければ良いのですか?」
「はい 依頼書に提示されている金額は 各商会の番号でもあるので その依頼書を手にすると言う事は 『商会と個人的に繋がりのある冒険者』 と言う事を周りに宣伝する効果があります
こう言ってはなんですが おかげさまでこのハルメリーの町において カストラ商会は中々に繁盛しておりますので 悪い虫も寄り付かないかと・・・」
「うぅ・・・アネットがそれで良いならこれ以上言わないけど・・・
でもアネットに付きまとう悪い虫は あんたのところのディゼルなんだからねっ! まずそっちを何とかしなさいよっ!!」
「はい それはもう・・・・ 実はあの後 彼の心境にも変化があったようで やはり人は何かしらのきっかけで変わるもの 今は如何に良き町長になれるのか 日々思いを巡らせているようです」
「・・・・信じられない」
あれでも集団の優位性と言うものはガキ大将を通して熟知している筈だ。だが対比する人間がアネットでは不味い。
彼は利用してこそ栄える。
これからは人間関係の優劣、取捨選択を徹底して教えていかなければならないな。
しかしプライドと言う部分を適度に刺激してやれば可愛く鳴いてくれる素直さは重要だ。上手くつつけば傀儡のように動いてくれるからな。
これでひとまず町長の息子ディゼルと盲目の冒険者アネット。今後ハルメリーに置いて注視される人物2人を手に入れた事になる。
この2人を使いこなせれば領主に取り入ることも無理ではない筈だ。私は冒険者ではないが栄誉が人々の羨望を集める世界に生まれたのだ。
ならば見てみたいものではないか。自らの手で勝ち取った名声の先にある光景を・・・




