序章 本日も、異常なし(ただし心拍数は除く)
「あのっ、山崎さん! ずっと前から好きでした! 俺と、付き合ってください!」
「……は?」
「あ、あの……山崎さん?」
「……何。用事、あるから」
「えっ……あ、ご、ごめん! 急に呼び出したりして……! じゃあ、俺、行くね……!」
「……ん」
「……」
「……行った?」
「……うん、完全に角を曲がって見えなくなったわね」
「……。……。……うわああああああああああああああああん!!! なんで!! なんで私はあそこで『……は?』とか言っちゃったのよおおおおお!!! バカ! 私のバカ! 口から勝手にマイナス百度の冷気が射出されたわよ!?」
「あはは、今日も安定の秒殺だねぇ、あいり」
「一ノ瀬ぇ……! 見てたなら止めてよ! っていうか、今の隣のクラスの野球部キャプテン、東雲くんでしょ!? 今週五人目だよ!? 見た!? あのユニフォーム姿から覗く逞しい腕! 普段はあんなに硬派で女子に目もくれないタイプの彼が、耳まで真っ赤にして、一生懸命に言葉を絞り出してくれたんだよ!? あのギャップだけで白飯三杯はいけるわよ! しかも何あの低音ボイス!? 鼓膜が喜んでたわよ今!!」.
「……で、嬉しさのあまりテンパって、スマホ握りしめて東雲くんの前で必死にふるふる(連絡先交換)しようとしちゃったのよ!」
「ふるふるっていつの時代の規格だよ。っていうか、付き合いたかったなら『宜しくお願いします』って言えばよかったじゃん」
「無理に決まってるでしょ! あんな少女漫画みたいなシチュエーション、対面でまともに食らったら心臓が爆発して死んじゃうわよ! 嬉しすぎてキャパオーバーして、脳みそがバグって、顔が一番怖くなっちゃうの! 東雲くん、最後完全に怯えてたじゃん! 私のこの鉄壁の黒髪インナーカラーとチョーカーにビビってたじゃん!」
「ハイハイ。指輪ジャラジャラさせて腕組んで睨みつけてたら、そりゃ誰だって怯えるよ。ビジュアルと中身の乙女度のギャップが激しすぎるんだって」
「違うの! これはただの防衛本能! あーあ……世界一かっこよかったな、今日の告白……。フラれた東雲くんの後ろ姿、心なしか小さくなってて本当に申し訳ない……。家帰って猫の動画見ながら泣きながら反省会する……」
「まあ、明日もどうせ誰かに告白されるんだから、次こそ頑張りなよ。ほら、あんたのその
『なぜか毎日必ず誰かに告白される呪い体質』、まだ続いてるんだからさ」
「もう嫌、毎日これやるの精神が持たない……。チャラ男先輩も、インテリ眼鏡の生徒会長も、全員もれなく秒殺バックドロップして全員トラウマ植え付けさせて終了よ!? 誰でもいいから、私のこのNOの裏にある大賛成のYESを見抜いて、無理矢理にでも『宜しくお願いします』って言わせてよ……!」




